これはフジテレビによる安倍政権批判ではないか?犯罪者の子どもが強いられた理不尽な人生とは?

 安倍政権の広報係に過ぎないフジテレビも、たまにはマトモな番組を流すものだと感心した。2017年12月15日に放映された「ザ・ノンフィクションSP 人殺しの息子と呼ばれて・・・」のことである。

 北九州市で2002年に発覚した一家監禁殺害事件をご記憶の方も多いだろう。主犯である松永太(2011年に死刑が確定)が、内縁の妻である緒方純子(無期懲役)の親族らを、家族間で殺害させたという凄惨な事件だ。事件の人物相関図を以下に示す。

写真(北九州市監禁殺人事件の人物相関図)

 当然のことながら、犯人と被害者家族に焦点当てた報道やドラマは多数流された。今回、フジテレビが放映した「ザ・ノンフィクションSP 人殺しの息子と呼ばれて・・・」は、犯人夫婦の子どもの視点で構成されている。事件が発覚し、警察に保護された時点で9歳に過ぎなかった子供は小学校にも通っていなかった。さらに、出生届が出されていなかったため戸籍も存在しなかった。彼は殺人現場を目撃し、両親から育児放棄され、虐待を受けるなどトラウマを抱えている。知識・知恵・経験に乏しい社会的弱者が、頼れる親族もなく社会に放り出されたらどうなるか?絶対的に不利な状況から人生をスタートせざるを得なかった犯人夫婦の子ども。彼の勇気ある告白に耳を傾けることで、日本社会の本質が見えてくる。

 以下に、放送された番組のリンクを貼る。


 当然ことだが、当時9歳だった子供に事件の責任はない。被害者である。日本国憲法の理念に照らし合わせれば、彼は生まれてきただけで価値ある存在だ。

日本国憲法第25条:
「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」

 戦後70年以上経つが、政治家にはこの憲法の理念に沿って、法律や制度、社会の仕組みを整える義務がある。政治家としての役割をきちんと果たしてきたかどうかは、社会的弱者の視点に立って判断する必要があるのだ。総理のお友達の意見を聞いても現実を把握することはできない。

 政治がその役割を果たしてこなかったばかりか、庶民にとって暮らしにくい社会の実現に邁進してきたことは、上記ビデオを見ると良くわかる。高負担だが低福祉である社会のゆがみは、社会的弱者にそのしわ寄せが来るからだ。

 当人がビデオ内で告白した内容の要点を以下に示す。

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・両親の逮捕後、児童養護施設に送られた。
・はじめて通った小学校では、殺人事件のことを口にした同級生に暴力を振るうこともあった。
・里親が見つかり、定時制高校に通いながらも、週6日ガソリンスタンドのアルバイトに精を出した。学費や携帯代を自分で捻出できると思ったから。
・しかし、バイトに時間を取られて学業が疎かになり、里親の家を飛び出し、高校も中退せざるを得なくなった。高校側は厄介者を一刻も早く排除したがっていたようだ。
・その後、住み込みで出来る仕事を転々とした。パチンコや飲食店、農家の手伝いなど・・。当てがわれた住まいがヒドイこともあった。ゴミ屋敷で、電気・水道・ガスが通っていない。「こんなしんどい思いをせないけんのかな、と。ホームレスと変わらんな。そうしたら涙が出てきて・・・。」(ビデオ中の発言)
・唯一、安定した仕事と人間関係を得られた場所は暴力団の事務所だった。社会からはじき出された者同士という安心感があった。
・しかし、刑事が訪れ、未成年保護法により保護された結果、住む場所と仕事を失った。
・5年前に正社員になり、今は24歳。自分と似たような境遇の女性と結婚した。以下、ビデオ中の発言。
「(薬物で母親が逮捕されてしまい)結局生活できないじゃないですか、そいつ(彼女)1人で」
「結婚しようと思ってはなかったんですが、嫁の社会保険やったり、年金とかもそうですけど、社会保障っていうですかね、まったく何もない状態だったので。親が何もしていなかったんで、病院にも行けないし。結婚したいからするっていう感覚じゃなくて、とりあえず結婚して自分の扶養に入れようって。嫁に対して社会的な保障がつくよね、っていうので籍を入れたんです」
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 詳しい内容についてはビデオを見て欲しい。生活保護という制度すら知らず、国の援助も受けられず、弱い者同士で支えあいながら何とか生き延びてきたことがわかる。本来ならば、衣食住に不自由せず、学費や医療費は無料にして余計な心配はさせず、かつ、幼少期に受けた心の傷を癒すためのサポートを継続的に受けるべき立場のはずだ。彼の告白を聞くと、日本という国が低福祉の後進国であることを再確認できる。

 生活保護制度の周知徹底をわざと怠り、申請者に対する嫌がらせで辞退させ、さらには不十分な支給額をさらに減額することをたくらんでいる安倍政権。生活保護基準以下の所得で暮らす人々は約3000万人にもなる。長年続いた自民党政権による弱者いじめの政策は他にも枚挙にいとまがなく、日本はますます暮らしにくい社会となりつつある。ビデオ中の彼の告白がそのことを雄弁に物語っている。政治家が口先でどんな言い訳をしても何の説得力もない。

「この国を守り抜く」「責任を果たす」「一億総活躍」「百年安心」・・・、空虚なキャッチフレーズに踊らされて、問題意識もなく惰性で自公政権を支持してきた有権者に猛省を促したい。刹那的な態度で、安易に棄権してきた愚か者にも反省を求めたい。権力への健全な批判なくして政治は良くならないし、生活も改善されないのだ。

 今のままでは、ビデオで告白した彼だけでなく、あなた自身にもいずれ災厄が降りかかってくることだろう。

以上

コメント

  1. まつみ よーこ より:

    いつもありがとうございます。あなたの記事を読んで 色々考えされています。 考えるって大事なことです。
    書き起こしてくださることも、大変ありがたいです。
    モニターをじーっと見ているのも辛いですから。

    読むこと、知ることで何か目的が芽生えるような気がしています。

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