【組体操】事故被害者の声に耳を傾けるべき理由。

写真(組体操) 出典:不明

写真(組体操) 出典:不明

 小学校や中学校では、上写真のような組体操を生徒にやらせています。崩壊事故で生徒が大けがをして、ニュースになることが多くなりました。事故件数は、記録に残っているだけでも毎年約8000件に上ります。

 実際にどのようなものなのか、次のYouTubeビデオをご覧ください。崩壊事故の様子も確認できます。

 誰が見ても危険な行為だと分かります。実際どれだけ危険で恐ろしいものかは、やらされている生徒でなければ分からないでしょう。一番下の生徒には、一人当たり100~200㎏程度の力が加わるそうです。上のビデオでは、事故が発生しても観衆は呑気に拍手をしており、見ていて寒気を感じます。エンターテイメントとして楽しんでいるのでしょうか?きっと、人間としての基本的想像力・共感力が欠如しているのでしょう。

 組体操のような恐ろしい行事が「伝統」として長年続いている原因を考えてみました。

・体育祭や運動会を見に来る保護者に対して受けが良い。ショー化が定着している。
・教師にとって、生徒を統率する手段として都合が良い。
・長年続いているものを中止にするよう提案するのは、保護者にとっても教師にとっても大きな勇気が必要。非難を浴びて学校組織内で冷遇される危険があり、なかなか言い出せない。惰性に流されるのが一番楽である。
・学校組織も基本的には上意下達であり、問題意識を持つ末端の教師が上に対してモノを言いにくい雰囲気がある。
・生徒の声に耳を傾けた上で、問題点の抽出・原因の特定・対策の決定をするという、話し合いの場がない。
・事故が起きても、保身に走る管理職(校長など)は事故の隠ぺいに走りやすい。現場の教師も上司の御機嫌取りを最優先に考え、事実と異なる嘘の報告をすることが多い。
・その他・・・?

 事故のニュース、教師や教育行政に関わる人たちの意見を聞いても、組体操の実態をつかみにくいと思います。

 そこで、組体操の崩壊事故で重傷を負った生徒が、馳文部科学大臣に宛てた手紙を紹介いたします。

引用元リンク:
「先生が、絆なんだよ!伝統なんだよ!と言っていた」組体操事故の被害生徒が馳文科相に怒りの手紙

引用始め
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はじめまして。突然のお手紙ですみません。
私は2014年5月12日(月) 小学校6年生の体育の授業で運動会で行う組み体操の4段タワーの練習をしていました。
先生が 絆だから!絆なんだよ! これは●小学校の伝統なんだよ! と言っていました。
しかし練習中に事故が起きました。
私は4段タワーの最下段で四つん這いになっていました。上から2段目と最上階が一緒に立ち上がろうとした時、3段目も一緒にバランスを崩しタワーが崩壊して私の体に上からドワーっと落ちてきました。
急に体にものすごい重圧がかかってきてその時死ぬかと思いました。すっごく怖かったです。
体を動かす事が出来なくて力が入らなくて、今までに感じた事のない痛みが全身にきて息をするのも辛かったです。私は悲鳴をあげてしまいました。あの時の恐怖は今も覚えています。
私は左手首靱帯損傷、左肘の脱臼、骨折をしました。
手術室に入る前の不安や恐怖から大泣きしました。手術が終わって説明出来ないくらいの痛みがきました。そんな痛みをもう誰にもさせたくないです。あの苦しみや痛みをこれ以上誰かがしなくてすむようにして下さい。
生まれて初めての手術と入院、痛みや不安や恐怖。事故の場所から私や家族の人生も変わってしまいました。受験を予定していましたが、それも出来る状態ではなくなりました。
小学校生活、最後の楽しい思い出つくりは何もありませんでした。
音楽鑑賞会、ミュージカル、遠足、修学旅行、プール、バレーボール…。全て失いました。
たくさんの普通に出来ていた事が出来なくなる苦しみがわかりますか?!
食事や着替え、トイレやお風呂、鉛筆を持ってノートに書く、消しゴムで消す事が出来ない。
普通に毎日やっていた事が授業が生活が出来なくなる苦しみがわかりますか?!
卒業までに3回の手術をしました。母が卒業証書は右手だけで受け取れるようにと一緒に練習してくれました。本当に辛い毎日でした。
でも、あの時、事故にあったのが私だけでよかった。と思いました。
今も、いつくるかわからない痛みにたえる日々を過ごしています。傷も一生残ります。母に五体満足に生んでもらったのにひどいです。
事故の時、体育館で担任の先生や校長先生につかれた嘘。信じられません。
体育館の床に倒れたまま聞きたくなかったです。
そこまで事故を隠し守ってでもやる組み体操の意味は何ですか?
やる意味は伝統という言い訳だけだと思います。
学校で守るのは私達子供の命だと思います。
事故の数だけ子供達被害者がいます。これ以上被害者を増やさないで下さい。
学校は同じ過ちを繰り返さないでほしい。
無責任な対応をしてきたから、たくさんの被害者が出ました。その被害者の数だけ未来を将来の夢やたくさんの可能性を学校の先生が私たちからうばってきたわけです。
一人でも事故がおきたら国が直ぐ危険な事です。と、対応をしてくれていたらと残念におもいます。
組み体操を続けるならこれからは責任を国がとってくれるのですか?
無責任な検討はしないで下さい。組み体操は学校でやらなくていいことなので種目を変えて下さい。
行進なら日本体育大学の人たちもやっていてすごいです。
中学入学前、中学の校長先生から「体育の授業で実技はやらないと点数は0点です。」と言われました。酷いです。
私だってやりたくても出来ないのに…。
時間を元に戻してほしい!
私の心の傷と体の傷は一生もって生きていきます。
この国は私達子供に対してこれからも酷い国でありつづけるのでしょうか?
今の日本は思いやりのない国だと思います。
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引用終わり

 上で紹介した手紙を書いた生徒にとっては、組体操は恐怖の「伝統」であり、教師や学校への不信感により、「絆」は完全に崩壊していることが分かります。

 戦前の暗黒時代への回帰願望が強い安倍政権で文部科学大臣を務める馳氏はどのような返事を生徒にするのでしょうか?「現場情報の提供に感謝します。早急に対策を行います」という回答は期待できません。

 現状を変えたかったら、自分の身を守りたかったら、この生徒のように、関係者一人一人が声を上げ、行動するしかありません。黙って我慢するだけでは何も変わりません。上の人が考えて、そのうち良い方向に導いてくれることは有り得ないのです。

 失敗から学習する能力や自浄能力が無いのは、学校組織に限ったことではありません。思考停止は日本社会全体に蔓延している病気です。暗黒の戦前から、実質何も進歩していないのです。

 日本人はお任せ民主主義という無責任状態から卒業すべきだと思います。

以上

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