哲学を喪失した日本企業の病的体質を考える。

写真(謝罪会見で頭を下げる旭化成グループの首脳陣) 出典:NEWSポストセブン

写真(謝罪会見で頭を下げる旭化成グループの首脳陣) 出典:NEWSポストセブン

 企業不祥事が絶えません。報道されているのは氷山の一角に過ぎないと思いますが、最近の代表例を再確認しましょう。

1)
 自動車メーカーのスズキは、軽自動車全16車種の燃費データ測定を、国の規定とは異なる不正なやり方で実施していた。

2)
 ベネッセホールディングスは、「進研ゼミ」の大量の顧客情報流出により会員数が減り続け、大赤字を計上する事態に至った。原田泳幸会長兼社長は退任することになった。

3)
 三菱自動車の燃費不正問題では、法令と異なる方法で測定されているのが、27車種の200万台を超えることが判明した。会社は経営が悪化し日産の傘下に入ることになった。社長は引責辞任する。

4)
 タカタが製造販売したエアバッグの不具合により、多数の死傷事故が発生した。米運輸省高速道路交通安全局は、「タカタ製エアバッ グの不具合問題は大規模な安全上の危機」と表現した。

5)
 金融庁は東芝の会計不祥事を巡り、会計監査を担当した新日本監査法人に21億1100万円の課徴金納付命令を出すことを決定した。東芝の歴代3社長は、パソコン事業の不正取引を認識しながら虚偽の利益を計上させた疑いがある。

6)
 身寄りのいない高齢者の支援をうたう、公益財団法人「日本ライフ協会」は、葬儀代などとして集めた預託金およそ1600人分(約2億7000万円)を流用していた。日本ライフ協会は、理事長を含む理事8人全員が引責辞任した。

7)
 壱番屋は、異物混入の恐れがあった冷凍カツ約4万枚を廃棄したが、その処分をダイコーに依頼した。しかしダイコーは、みのりフーズなどに転売し、愛知県のスーパーで販売されているのが発見された。

8)
 日本年金機構はサイバー攻撃を受けて、年金受給者ら約96万人分の個人情報が流出した。情報流出に対応する過程で、該当者の基礎年金番号変更手続きを誤り、受給者約400人に年金を少なく支給したり、過剰に支払っていた。

9)
 三井不動産グループが2006年に販売を始めた横浜市都筑区の大型マンションで、施工会社が地盤調査を一部で実施せず、虚偽データに基づいて基礎工事をしていた。複数の杭が強固な地盤に届いておらず、建物が傾く事態になった。

10)
 羽田空港、福岡空港、および松山空港の工事で、東亜建設工業が施工データ改ざんや施工不良の隠ぺいを行い、発注者の国土交通省に対して虚偽報告をしていた。社長は引責辞任に追い込まれた。

 企業・団体の不祥事が起きたときは対症療法だけではダメで、不祥事の温床となるものを明確に認識したうえで、根本的な体質を直す必要があります。

 私が勤めている民間企業は、幸い、ニュースをにぎわすような不祥事を起こしたことがありません。しかし、上記1)~10)の事例は、対岸の火事とは思えません。

 自分の経験も踏まえて、寒々しい企業内の実情を思いつくまま挙げてみます。

・業績が悪化した時、上層部の権益を守るため、一般社員のリストラを躊躇なく行う。
・法律ではなく、トップのご機嫌で物事の良し悪し判断を行う奴隷サラリーマン管理職たちが跋扈している。
・自分より優秀な人間ではなく、従順な奴隷根性の持ち主を優遇する器の小さい経営者・管理職たち。
・経営側の保身によって、形式的で無意味な規則をドンドン増やし、社員をがんじがらめにして仕事をやり難くしている。
・利益を上げるための手段として人件費の削減しか思い浮かばない無能経営者たち。サービス残業の強制や非正規社員の割合増加で、忠誠心の低下を招いている。その結果、内部告発の増加、末端従業員のスキル低下、商品・サービスの劣化、クレームの増加、売り上げ減少につながる。
・権限もない部下に結果責任を押し付けて、それを恥とも思わない経営者たち。結果、社内のモラル低下を引き起こしている。一見真面目だが、本質的に無責任で親身さに欠ける従業員が蔓延する。
・事実と異なる虚偽広告を恥とも思わない。他社から金で買った技術に過ぎないのに、自社開発とウソを言う。地に足を付けた取り組みが出来ず、目先の損得ばかりに振り回されている。

 たかだかサラリーマン、所詮は企業だ、などと言う人もいますが、人間としての誇りや哲学は死語になってしまったのでしょうか?ホームページなどで立派な企業理念を掲げているのであれば、それに相応しい考えを持ち、実際に行動する義務があります。

 他人任せではなく、一人一人が立ち止まって考える必要があると思います。

以上

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