【ゴマカシと偽善が充満】オバマ米大統領の広島演説を解説します。

写真(広島で演説するオバマ米大統領)

写真(広島で演説するオバマ米大統領)

 2016年5月27日、アメリカのオバマさんは現職大統領として初めて広島の平和記念公園を訪問しました。そこで、安倍晋三首相とともに原爆慰霊碑に献花し、黙とうを行い、17分余りの演説をしました。

 下記のビデオをご覧ください(日本語字幕付)。

 人々の情感に訴える演説は相変わらず退屈で中身が無く、ほとんど印象に残りませんでした。歴史に残る名演説などと手放しで称賛する人がたくさんいるようですが、私には理解不能です。

 オバマ米大統領の広島演説に関する私の感想を、以下に記します。

1)原爆を投下した国の大統領として当事者意識が無い。
 広島への原爆投下は、当時のアメリカ政府の明確な意思により実行されました。一般住民の無差別大量虐殺、そして、人体実験だということを十分に認識しており、明らかな戦争犯罪です。アメリカという国の代表として犠牲者に献花するのであれば、言われなくても謝罪をしなければならないはずですが、全くありませんでした。
 演説の冒頭、アメリカ軍による広島への原爆投下を、「71年前、晴天の朝、空から死が降ってきて世界が変わりました。」と表現していましたが、まるで、不可抗力の自然災害が発生したかのような口ぶりです。他人事、傍観者と呼ぶにふさわしいですね。

2)一般論ばかりで具体性に欠ける。
 演説の中でオバマさんは、人間が起こす戦争の原因や結果について一般論をたくさん述べています。科学の進歩を人殺しに応用してしまう人類の愚かさを一般論として説いています。戦争を正当化し過ちを繰り返す指導者層の見苦しい言い訳を非難しています。あくまで一般論としてです。せっかく被爆地・広島を訪問しているのですから、広島に焦点を当てた具体論が欲しいですね。
 原子爆弾を生み出した経緯は?、それを日本人に対して使うことを決定した政治的経緯は?、原爆投下という悪魔の所業がもたらした健康被害の実態は?、アメリカに持ち帰った実験データがどのように役立ったか?、「原爆投下で戦争終結を早め、多くの人命を救った。原爆投下は正しい行いだった」と言い訳をし続けるアメリカの弱さはどこから来るのか?・・・などなど、日本人としては知りたいことがたくさんあります。知的好奇心を喚起する具体論を述べて頂きたかったです。

「外交を通じて紛争を防ぎ、始まってしまった紛争を終わらせる努力をする。」
「国家を、破壊する能力ではなく、何を築けるかで定義する。」
「すべての人類は平等に創造され、創造主によって奪うことのできない権利を与えられている。それは生命、自由、幸福追求の権利である」
「全ての人のかけがえのない価値です。全ての人命は貴重であるということです。私たちは一つの家族の一部であるという根源的で不可欠な考え方です。それが私たちが伝えていかなくてはならない物語です。」
「広島の子供たちは平和に日々を送っていくでしょう。なんと価値のあることでしょうか。それこそが守り、そして全ての子供たちに広げていく価値があることなのです。」
「これこそが、私たちが選択できる未来です。広島と長崎は、核戦争の夜明けではなく、私たちの道義的な目覚めの始まりであるべきです。」

 オバマさんの演説には、このように美しい一般論が多数散りばめられており、聞く人をウットリさせる効果を醸し出しています。しかし、政治家が使う一般論は事実のゴマカシや隠ぺいを伴うことが多いので、注意が必要です。

3)アメリカ現職大統領としての意思が感じられない。
 オバマさんは、「We(私たちは)」という表現が大好きです。この17分余りの演説の中でも、「私たち」を多用しています。そのせいか、アメリカ大統領として、こう思う、こうしたい、こうします、という目標達成意思がほとんど感じられません。「私たち」を多用することで、責任感が希釈されているのです。皆で一緒にやろうと呼びかけたいのでしょうが、頼りなさを感じます。世界的権力層の操り人形に過ぎないからでしょうか?

 演説中の次のセリフをどう思いますか?

「我が国のように核兵器を持っている国は恐怖の論理から脱し、核兵器のない世界を目指す勇気を持たなくてはいけません。私が生きているうちに、この目標を達成することはできないかもしれませんが、たゆまない努力で破滅の可能性を少なくすることはできます。」
「私たちはこれらの核兵器をなくす道のりを描くことができます。私たちは新たな(核兵器の)拡散を止め、狂信者から核物質を守ることができます。」

 良いことを言うんだけれども、オバマさん個人の意思や主体性が感じられないのです。

4)事実に反することが述べられている。
「あの運命の日以来、私たちは希望をもたらす選択を行ってきました。米国と日本は同盟を築いただけでなく、友情をはぐくんできました。それは戦争よりもはるかに人々にとって有益でした。」

 日米同盟を「友情」と表現し、実質的な植民地支配という事実を覆い隠しています。権力層や軍需産業に利益をもたらすことが目的なのに、「人々にとって有益」と誤魔化しています。
 駐留米軍による犯罪・事故・騒音被害が、沖縄をはじめ日本全国で起きており、日本国民を長年苦しめてきました。このような基本的事実を踏まえ深刻に受け止めているのであれば、日米同盟の「友情」という綺麗な言葉で済ますことはないはずです。オバマ大統領は、強姦・殺害・遺棄された女性被害者の視点を共有していない冷酷な権力者だと受け止めねばなりません。

 原爆被害者との抱擁場面にダマされてはならないのです。

写真(広島の被爆者を抱擁するオバマ米大統領)

写真(広島の被爆者を抱擁するオバマ米大統領)

まとめ:
 一般人の演説であれば内容的に十分だと思いますが、権力を付託され、社会の現実を変えていかねばならない政治家の演説としては失格だと思います。オバマさんは、本当に自分で演説原稿を考えたのでしょうか?スピーチライターが書いた原稿通り、うまくしゃべっただけなのでしょうか?世界的支配層の意を受けた中間管理職に過ぎないのでしょうか?
 抑揚や間をうまく使い、人々の情感に訴えるテクニックに優れていますが、美しい一般論に頼り過ぎるがゆえに力強さを欠き、結果として印象には残らないというのが正直な感想です。

 オバマさんは約8年間、大統領職を務め、もうすぐ退きますが、有権者のために何かを成し遂げたということがありませんでした。実際アメリカ社会は、貧富の格差をはじめとして悪化の一途を辿っています。オバマ大統領は2009年にプラハで演説し、核廃絶の目標を示しました。しかしその後は、核兵器関連予算を増額し、CTBT(核実験全面禁止条約)の批准もせず、結局、言葉だけで終わってしまったのです。

 しゃべるのはうまいが行動が伴わないオバマさん。それを象徴する広島での「歴史的名演説」でした。

以上

コメント

  1. 只野仁 より:

    まあ、あながち心情的には間違いではない記事。

    ただ原稿はオバマではなく大統領補佐官が書くもの。
    謝罪拒否は日本政府からの強い要望であること。

    が全く書かれてません…
    キチンとしらべましょう♪

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