はじめに:
あなたは「出世」したいですか?
もちろん、「出世なんかしたくない」という人もいるでしょう。
しかし、どんなタイプの人間が「出世」しやすいか確認することは、その組織や社会の本質を知る上でのヒントとなります。
この記事では、日本社会で「出世」しやすい人間の特徴を考えてみたいと思います。
どんな人間が出世するか?
私は大企業のメーカーに勤めています。
先輩のAさんという人がいて、そのAさんが最近、社長に就任しました。
私が新人の頃からAさんのことは個人的に知っており、それゆえ、彼の行動特性も長年に渡り観察する機会を得ました。
以下、Aさんの特徴を述べます。
上意下達の徹底
上役の言うことに素直に従い、反論したり持論を展開することはありません。
部下に対しても絶対服従を求め、反論は認めません。
部下でも同僚でも、相手を従わせようとするときは、権力を持ち出します。
「上が言ってるんだから・・」
昭和の戦前体質を色濃く反映していると言えましょう。
部下に裁量権を一切与えず、頻繁に報告することを求め、監視したがります。
いわゆるマイクロマネジメントですね。
効率重視
上役の意向に素早く反応するための決断や行動は早いです。
試行錯誤しながら新しいものを作り上げていく行為とは無縁。
すでに存在するものの中から最適なものを選んで、現実に当てはめるのが基本です。
立ち止まって考えることはせず、とにかく「動け、動け」と周囲を急き立てる。
時間を無駄にせず、一刻も早く結果を出して上長に報告しようという意識の現れでしょう。
都合の悪いことは見て見ぬふり
現実をすべて把握しているわけでもないのに、一方的に上役の意向を押し付けたら、弊害や歪みが生まれるのは当然です。
十分な検討や検証時間を確保せずに商品化を強引に進めるため、欠陥品質のまま量産されることもあります。
状況が悪化しても部下に責任を押し付けるだけで、「何やってるんだ!早くしろ!」しか言わない。
スケジュールの短縮を命令すれば残業時間が増えるのは当然ですが、会社が定めた上限値を超えないようにするため、記録時間を改竄したりもします。
労働基準監督署から指導を受けても反省はせず、「内部告発をしたのは誰だ!?」と犯人探しに走る。
とにかく自己保身が最優先なので、現場で起こっている都合の悪い事実から目を背け、上役の御機嫌取りばかりに熱心なのです。
板挟みになり精神を病み、休職や辞職に追い込まれる管理職が続出しています。
どんな人が冷遇されるか?
上述のような行動特性を持ったAさんは長年の「努力」の甲斐もあり、めでたく社長になれました。
しかし、途中で挫折し、「出世レース」に敗れたばかりか、退職に追い込まれた人もたくさんいるのです。
トップという名の独裁者に嫌われて冷遇されるのは、以下のような人です。
- 上役との意見の衝突を恐れず、持論を述べて提案できる人
- 部下や現場の意見に耳を傾け、都合の悪い現実を直視しようとする人
- 新しいことに挑戦する人
- 思い遣りがあり、罪悪感に悩まされる人
- 確固たる自己を確立している人(奴隷になれない人)
- 努力や経験の蓄積に裏付けられた自信を持っている人
予想される悲劇:
一般的に、どのような基準で従業員を評価するかは、各企業の自由です。
誰を優遇し、誰を冷遇するか?
長年に渡る判断の蓄積が、各企業の体質を決めるのです。
社長になったAさんのような行動特性を重視するあまり、組織内には様々な弊害が生まれています。
- 社員は言われたことは素早く実行するが、提案をしなくなった。
- 少しでも失敗のリスクがあることは避けるようになった。
- マニュアルや前例通りの仕事しかしないので、自分で仕事を作ることができない。
- 異なる意見をぶつけ合って新しい価値を生み出す力が無くなった。
- 何の裁量権もないので、タダの小間使いになり果て、仕事がつまらなくなる。
- いちいち上役にお伺いを立てながら進めないといけないので、現場で即断即決が出来ず、全体としては効率が悪い。
- 社員が諦めて何も考えなくなり、無気力で無責任な態度を取るようになる。
つまり、薄っぺらでつまらない組織になってしまったのですね。
投資家向けに「○○年までに○○億円の売り上げ達成」とか中長期計画をぶち上げるのは自由ですが、肝心の組織が疲弊しているので、絵に描いた餅となっています。
結論:
「目先のことだけしか考えない」
「自分の保身だけが重要」
「お金の損得ばかりで、全く哲学がない」
政治家の腐敗は国民の腐敗を反映しているに過ぎません。
その国民の腐敗が最も現れやすいのが、企業組織です。
企業組織を活性化したいのなら、社畜ばかりを優遇するのではなく、別の評価軸を導入することも必要です。
さもなくば、結果的に仕事の効率が下がり、日本における一人当たりのGDP順位が下落し続けることになるでしょう。
この記事が、あなたの属する組織の現状を見直すきっかけになれば幸いです。
以上