核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)のベアトリス・フィン事務局長が2018年1月16日、東京都内で講演を行った。その要旨は下に記す。
講演要旨始め
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人類の歴史の中で、核兵器使用の危険が一番高まっているのが今だ。核保有国で、かつ、それを使おうとしている国を孤立させてはならない。人と人との話し合いが大切だ。
待っていても仕方がない。行動することが重要だ。2017年、122カ国が国連で核兵器禁止条約を採択した。そして50カ国が署名をし、実際に批准されることによって、発効することになる。国際的な条約によって非合法化された兵器は、政治的な地位を失っていく。
日本政府は他のどの国よりも核兵器の悲惨さを理解しているはずだ。広島・長崎での惨劇が、他の都市で繰り返されても構わないと日本政府は思っているのか?
日本は核兵器禁止条約に参加し、核軍縮のリーダーになってもらいたい。
日本国民が核兵器廃絶へ向けた意思表示を行い、その意思を忠実に実行できる政治家を選んで欲しい。何百万人もの無辜の市民を無差別に殺すための兵器だということを政治家に理解させ、力の象徴ではなく、恥の象徴だと認識させなければならない。
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講演要旨終わり
「広島・長崎での惨劇が、他の都市で繰り返されても構わないと日本政府は思っているのか?」と、フィン事務局長は問いかけている。答えは次の通りだ。
「日本政府に意思はない。宗主国のアメリカ様が核兵器禁止条約を拒否しているので、その意向に従っているまでだ。」
悲しいがこれが現実だ。ICANとの面会から逃げ回っている安倍総理の情けない姿を見て、日本国民の民度の低さが国際社会に晒されてしまったようだ。口先で言い訳しても、行動は嘘をつけない。
その宗主国たるアメリカ様は、世界最大規模の核兵器保有国だ。
繰り返してきた核実験の数も半端ではない。よくこれで、北朝鮮に文句を言えるものだ。
大量の核兵器を製造し使用してきたアメリカ自身が、その過程で発生した膨大な放射性廃棄物に苦しんでいるのをご存じだろうか?IPPNW(=International Physicians for the Prevention of Nuclear War:核戦争防止国際医師会議)が関連記事を書いているので、以下にリンクを貼る。
http://www.ippnw-students.org/Japan/Hanford.pdf
上記リンク先記事の一部を私の方で翻訳し、以下に引用する。
引用始め
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アメリカの核兵器開発に必要なプルトニウムを生産するため、ハンフォードサイトは1940年代に建設された。ワシントン州のリッチランド市近くにあるその複合施設は、15万ヘクタール以上の敷地を擁する。9つの原子力発電所を含め、500以上の建物から成る。
1945年の7月に行われた世界初の原爆実験はトリニティと呼ばれているが、そのための原料はハンフォードが供給した。実験の一か月後に長崎市を破壊した原爆:ファットマン用のプルトニウムもハンフォード製だ。その後40年に渡り、ハンフォード核施設は67トン以上のプルトニウムを核兵器のために製造した。
1986年、情報公開法に基づく国民からの要請に応え、以前は秘密指定されていた19000ページの資料を米国エネルギー省は公表した。その結果明らかになった事実の一つは、ハンフォード施設が原因で大気・地下水・土壌・コロンビア川が放射能汚染されたということだ。200種類以上の放射性同位体が微粒子としてまき散らされたが、その範囲はオレゴン州・アイダホ州・カリフォルニア州・モンタナ州、そしてカナダにまで及ぶ。
1949年12月、259〜444テラベクレルの放射性ヨウ素131をハンフォードの科学者たちは故意に放出した。放射線監視機器をテストするのが目的だった。これらの実験で放出されたヨウ素131は、スリーマイル島原発事故で放出された総量の350〜600倍にも及ぶ。
ハンフォードからの放射性物質放出により、かなり多くの子供が甲状腺癌になった可能性がある。しかし、影響を受けた住民に対する疫学的な調査・研究は何も行われていない。
放射能汚染により特に大きな被害を受けたのは、ハンフォードの風下・川下に住む原住民たちだ。
ハンフォードに保管されている高レベル放射性廃棄物は740万テラベクレルだが、それは全米総量の約6割に当たる。
米国エネルギー省によると、ハンフォード核施設の地下に貯蔵されている放射性廃棄物と化学廃棄物は2億リットル以上である。しかし、保管用のタンクから漏出している状態だ。漏出や不適切な廃棄が原因で、推定350万リットルの液状放射性廃棄物が地下水を汚染してしまった。その範囲は、12万3000エーカー以上になる。
1971年まで放射性汚染水を川へ放流してきたため、高レベルの亜鉛-65、ヒ素-76、リン-32、ナトリウム-24とネプツニウム-239がハンフォード施設の下流で検出されている。
ハンフォードでのプルトニウム生産が1988年に終了して以降、人類史上最大の浄化プロジェクトが推進されている。そのために毎年20億ドル以上の税金が投入されており、2052年まで続く予定だ。さらには、ハンフォードの老朽化原発により新たな危険が発生している。
驚いたことに、放射能汚染に晒された住民に対する疫学的調査がほとんど行われておらず、健康への影響を全て知ることはできないと思われる。無力さを感じている原住民をはじめハンフォード周辺の人達は、みんな被爆者である。もっと大きくて、もっと威力がある核兵器が欲しいという貪欲さのために、彼らの健康が害されてきたのだから。
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引用終わり
自業自得とも言えるが、この悲惨な状況は決して他人ごとではない。50基以上の原発を保有する日本は、その事故処理や廃炉作業で、今後、死ぬほど苦しむことになるだろう。
以上