戦後最悪と言われる安倍政権は、主要マスコミの多く統制下に置いており、マスコミの方でも勝手に自己検閲をしている状態です。マスコミ各社の上層部が安倍総理と堂々と会食しているのですから、権力の監視役が務まるはずがありません。国会質疑のテレビ中継も政権側の意向を忖度して、肝心の追及場面がたくさんカットされています。
そのためか、野党側の質問に対しても、「記憶にない」「文書を廃棄した」「答弁を控える」「印象操作だ!」など、幼稚で不誠実な答弁のオンパレードです。野党が国会開催を請求しても無視ずるなど、憲法違反行為を平気で行っています。
国民に対する安倍政権の情報隠しは、悪質極まりないものです。このままでは国民の問題意識は高まらず、選挙で正しい行動・判断をすることができません。日本の民主主義は危機状態であり、取り返しのつかないことが起こりつつあります。もちろん、安倍総理にとっては都合が良いといえます。
こんな状態ですから、今のところ、2014年(平成26年)12月10日に施行された特定秘密保護法を振りかざす必要はありません。しかし今後、安倍政権にとって都合の悪い報道が目立つようになってきたら、容赦なく特定秘密保護法を活用し始めると思います。
ここで、特定秘密保護法の問題点・危険性を列挙します。
1)国民の知る権利を制限し、権力者が国を支配し易くするための道具である。
2)国民は情報不足に陥り、正しく考え判断することができなくなる。
3)今まで通り情報公開請求することができなくなる。
4)国会議員が、政府の施策に関する情報を収集し監視することができなくなる。
5)特定秘密だと知らずにアクセスし、突然逮捕される。
6)原発関連情報には一切アクセスできなくなる。
7)デモや集会での反対意見表明ができなくなる。
8)権力によるプライバシー侵害がさらにエスカレートする。
以下に、各項目について簡単に説明いたします。
1)国民の知る権利を制限し、権力者が国を支配し易くするための道具である。
もしも情報を国民へ提供せずに済むのであれば、権力者にとってこれ以上嬉しいことはありません。原発関連の情報を隠しておけば安全対策や安全審査をしなくても再稼働させられます。事故や故障が起こってもニュースで報道されないので国民から批判は起こりません。住民避難・賠償対応なども不要です。知らないうちに被ばくして殺されるのは情報を持っていない国民です。
このように国民の知る権利を制限し、権力者が国を支配し易くするための手段が特定秘密保護法なのです。この法案は、秘密の指定方法や運用方法で色々と問題が多いです。
・秘密指定する情報の範囲が曖昧であり、権力者の都合で何でも指定できる。
・秘密指定されたこと自体も秘密にできる。
・秘密指定されていると知らずにその情報へアクセスしたら罰せられる。
・秘密指定されたら、30年以上指定解除しないことが可能である。
・秘密にしたい情報を廃棄した事実も秘密にできる。
・国権の最高機関である国会の調査権限さえも制限している。
なかなかの徹底ぶりですね。安倍さんの執念を感じます。
2)国民は情報不足に陥り、正しく考えて判断することができなくなる。
侵略戦争とは、他国の物を力づくで奪うことです。「自衛のための戦争だ」と弁解する人がいますが、本質は強盗と同じなのです。第二次世界大戦中に日本はアジア諸国に対して侵略を行いました。他国を武力で制圧した理由は、三井・三菱・住友・安田という財閥系企業に儲けさせる為です。財閥が儲かれば政治家は一緒になっておいしい生活ができるのです。
侵略戦争のために多くの人が犠牲になりました。侵略された側の国民は略奪・強姦・放火などの被害にあいました。侵略した側の日本国民は徴兵という名で命を差し出すことを強要されたのです。
このようなひどい状況にもかかわらず、戦前は大した反対運動も起きずほとんどの人が従っていたのはナゼだと思いますか?権力者が情報を隠して、国民は知る手段を持っていなかったからです。情報を持っていなければ考えることもできないし正しく判断することもできません。情報へのアクセスが制限されていたので、大本営発表を事実と思っていたのです。
特定秘密保護法を使えば、国民に知られたら都合が悪い情報を権力者がすべて隠すことが可能になります。国民は情報不足のために正しく考えて判断することができなくなります。戦時中の理不尽な状況を再現することも可能になります。
3)今まで通り情報公開請求することができなくなる。
税金を使って作成・収集された情報は公開するのが原則です。しかし、現実はそうなっていません。
昔テレビを見ていた時、情報開示請求に対して役所の人間が対応している場面がありました。提出資料のほとんど全てが黒塗りされている状態だったのです。「請求された情報は教えたくありません。国民に知られたら都合が悪いのです。我々公務員は後ろ暗いことをやっています」、と白状しているのと同じです。黒塗り資料を受け取った側は、当然、職員に対して文句を言いました。しかし職員側は何も答えられず、うなだれるのみ・・・。
特定秘密保護法が運用されてなくても、このような税金ドロボー行為が珍しくないのです。この悪法が本当に運用され始めたら、一体どうなってしまうのでしょうか?
国民の知る権利を侵害するのが特定秘密保護法です。権力側が隠しておきたい情報は権力側の判断で秘密指定できるのです。秘密指定されていることを知らずに情報にアクセスしようとした国民は罰せられます。今まで情報開示請求をしていた人も委縮してしまうでしょう。
4)国会議員が、政府の施策に関する情報を収集し監視することができなくなる。
国会で野党が果たす役割は極めて重要です。野党議員が国会質問の場で大臣など政府関係者を厳しく追及している場面はお馴染ですね。国民の委託を受けて政府の施策に関する情報を収集し行動を監視しているのです。
国会の場で質問するだけで具体的に効果があるのか?という疑問はあると思います。実はあるんです。野党議員が質問を一つしただけで、官僚が計画していた無駄な事業が消えて無くなるということもあります。税金の無駄遣いを減らすためにも権力を監視することが重要なのです。
しかし特定秘密保護法が運用され始めると、野党議員はもちろん与党議員ですら必要な情報を得にくくなります。特に、政府にとって都合が悪い情報は入手不可能になります。情報を持たない議員は考えられず判断ができず、国会の場で質問をすることもできなくなります。悪徳政府にとってはやりたい放題の天国です。
5)特定秘密だと知らずにアクセスし、突然逮捕される。
特定秘密保護法を適用すれば、政府の都合で秘密指定できます。しかも、何の情報が秘密指定されたのか国民は知ることができないので、知らず知らずのうちに情報にアクセス・入手してしまい逮捕される可能性があります。その場合、「秘密指定されているとは知りませんでした」という言い訳は通じず、懲役刑(最高で10年)を言い渡される可能性があります。怖いですね。国民を委縮させるのに十分な効果があります。
安倍政権はなぜ、特定秘密保護法を使って国民を委縮させたいのでしょうか?政府にとって都合が悪い情報を入手するために嗅ぎまわっている連中が邪魔だ、というのが理由です。例えば、大手メディアであれば安倍さんがコントロールしていますが、比較的規模が小さいメディアまでは取り締まれていません。例えば、政府のスキャンダルを週刊誌が特集することがありますが、そういった報道が支持率低下につながることを恐れているのです。しかし、国民の側からすれば、権力の犬ではない人が入手し公表した情報は判断材料として重要です。
今後、特定秘密保護法が運用され始めたら、権力の監視役としてのジャーナリストは逮捕される可能性が高くなり、その結果、国民は政府発表ばかりに頼るようになるでしょう。
6)原発関連情報には一切アクセスできなくなる。
2011年3月に東日本大震災が発生して16時間以内に福島第一原発ではメルトダウンが起こっていましたが、東京電力は2か月経ってようやくその事実を認めました。随分と遅いですね。
福島事故直後に放出された放射性物質の情報を、日本政府は駐留米軍のみに提供していました。日本国民が知ったのはずっと後であり、そのため余計に被ばくしてしまった避難者が大勢いました。日本政府にとって日本国民の命は二の次のようです。
とにかく、日本政府が原発に関する情報をできるだけ出さないようにしていることは理解できます。
今後、特定秘密保護法が本格的に運用され出したら原発に関する情報は特定秘密に指定される可能性があることを内閣情報調査室が認めています。秘密指定されれば嫌々情報を出す必要が無くなり、堂々と拒否できます。そればかりか、原子力発電所の写真を撮った人を逮捕することもできるのです。場所も含めた原発関連情報には一切アクセス不可能になると考えた方が良いでしょう。
7)デモや集会での反対意見表明ができなくなる。
最近は日本でもデモ活動(街頭での民主的抗議活動)が普通のことになりつつありますね。デモへの参加は憲法で保障された権利です。国民が意思表明する権利を軽視している人は、特に自民党の中に多いですね。
自民党は経団連など財界の代弁者ですから、国民の反対意見などには興味が無いのです。国会周辺のデモは目障りだしうるさいし、できれば排除したいというのが本音です。
今後、特定秘密保護法が運用され始めたらデモの類は日本から無くなるかもしれません。例えば、国会周辺の原発反対デモで「原発の情報を出せ!」という発言をすると、秘密情報を出すように公務員をそそのかした罪で逮捕される可能性があります。集会で講演すれば扇動した罪に問われるかもしれません。政府方針に反対する意見表明は何も出来なくなりそうです。
8)権力によるプライバシー侵害がさらにエスカレートする。
アメリカは日本の同盟国であり、たくさんの軍事情報を共有しています。そのアメリカから軍事機密情報を漏らさないシステムを構築するように要請されたことが、特定秘密保護法導入のきっかけです。特定秘密保護法が成立する以前から、自衛隊の情報保全隊は軍事機密を扱う職員の身辺調査をしてきました。具体的には、職員の思想・心情の他に、友人関係や友人の職種・職場情報も集めています。
特定秘密保護法が運用され出したら、身辺調査がさらにエスカレートすることは確実です。防衛省職員や軍需産業の社員だけでなく、その家族・親戚も調査対象になります。具体的には、住所・生年月日・犯罪歴・海外渡航歴・精神状態・飲酒習慣・借金・収入などが調べられるのですが、これは明らかにプライバシーの侵害です。
特定秘密に指定される対象が軍事情報以外にも広がれば、それに伴い身辺調査や監視活動の範囲も広がります。プライバシーを侵害される国民の数は際限なく増えそうですね。公安警察など監視している人たちは楽しいのかもしれませんが、監視される方は気味が悪いだけです。憲法違反なので断固反対しましょう。
最後に、特定秘密保護法をわかりやすく説明した絵を以下に示します。参考にしてください。
参考にした記事のリンク:
Japan Press Weeklyの2013年10月27日付記事「What the secrets protection bill is all about」
以上