「経済的自由が侵されても、選挙を通じてそれを正すことができる。しかし、表現の自由が侵されて必要な情報が手に入らないと正しい判断ができなくなり、選挙を通じた改善をすることが不可能になってしまう。表現の自由が侵されると取り返しのつかない事態を招くことがあり、それゆえ、経済的自由よりも優先されるのだ。」
民進党(旧民主党)の山尾議員が、このような内容を国会論戦の場で提示してくれました。この原則は、憲法を習う時の基本中の基本だそうです。しかし、安倍総理は大学で法学を専攻していたにもかかわらず、この原則を認識していないことがバレてしまいました。
日本国民の表現不自由化に熱心な安倍さんが総理になって以降、世界における報道の自由度のランキングは急降下しました。
テレビで政権批判を口にする司会者たちは、安倍政権の支持率低下を招く原因になるため、政治的圧力を受けて辞めざるを得ない状況に追い込まれています。最近話題になったのが、次の3人です。残念ながら、2016年3月に揃って降板させられました。
日本では昔から、権力の監視役としてのジャーナリストは絶滅危惧種でしたが、最近は状況が特にひどいですね。日本の大手新聞社は自己検閲に熱心であり、ダンマリを決め込んでいますが、海外メディアは奇異の目を向けています。
今回は、イギリスのガーディアン紙の記事を紹介いたします。2016年2月17日付の記事リンクを以下に貼ります。( )内は私の邦訳です。
「Japanese TV anchors lose their jobs amid claims of political pressure」(日本のテレビ番組司会者たちが政治的圧力により降板)
上記リンク先記事の要旨を以下に記します。
要旨始め
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古舘伊知郎氏、国谷裕子氏、そして岸井成格氏という3人の優秀なテレビ番組司会者が一斉に降板する。政権批判を許さない安倍総理の意向を受けて、政治的圧力が掛けられたためである。
総務大臣の高市早苗氏は、政治的に「公平」でない放送局は停波処分にする可能性があると答弁した。日本民間放送労働組合連合会は、「メディアに対する恫喝だ。発言を撤回せよ。」と批判した。
テレビ朝日の報道ステーションで政権批判を繰り返していた評論家の古賀茂明氏が、「官邸からの政治的圧力により降板に追い込まれた」と述べた。
TBSのニュース23で司会を務める岸井成格氏は安保法制を批判して、安倍政権サイドの怒りを買った。
もっとも驚いたのが、NHKクローズアップ現代で司会を務める国谷裕子氏の降板だ。安保法制に関する議論で、台本に無い質問を菅官房長官に投げかけたのが原因だという。
降板させられる司会者たちは皆一様に口をつぐんでいる。しかし情報筋によると、大手メディア経営者と安倍総理が秘密の会食をする中で、気に入らない司会者の名前が挙げられたという。
日本のメディアは、権力の監視という役割を忘れ、自己検閲に励んでいる。自民党が放送事業者を呼びつけるなど、事実上、恫喝しているに等しい。
安倍総理は、戦時の性奴隷に関する放送内容を差し替えるよう、2005年にもNHKへ圧力をかけている。
2014年の国政選挙前に自民党は、各テレビ局に対して「公平で中立な」報道をするように文書で通達している。
安倍総理は自分が選んだ籾井勝人を会長としてNHKに送り込み、意のままに報道を操っている。
報道機関への圧力や特定秘密保護法の成立により、日本の報道の自由度ランキングは大きく低下した。2010年は12位だったのに、現在は61位だ。
表現の自由が守られているか精査する国連の特別報告者が2015年12月に来日する予定だったが、日本政府は突然キャンセルしている。国際的な査察を恐れているのが原因ではないか?
上智大学:中野教授の意見紹介:「表現の自由の侵害は、民主主義の基盤を破壊するものだ。報道機関は御用メディアになってしまっている。」
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要旨終わり
以上が、ガーディアン紙の記事要旨です。いかがでしたか?日本でも、弱小メディアならばこのような論調を展開していると思います。しかし、影響力の大きいメディアは口をつぐんでいるのが現状ではないでしょうか?口をつぐむどころか、積極的に安倍政権の御機嫌取りをしているのですから嘆かわしい限りです。
テレビや新聞など大手メディアは、少しでもプライドがあるならば、きちんと権力批判を行い、その存在価値を証明してほしいと思います。
以上