今回は、ジャパンタイムズの社説を紹介いたします。色々な話題を提供してくれる安倍総理ですが、彼の言動には注意を払い続けねばならない、という話です。
2015年4月3日付の記事リンクを以下に貼ります。
「Keep a close eye on Abe’s words」(安倍総理の言動に注意を払い続けよう)
上記リンク英文記事を私の方で日本語に訳し、さらに解り易くするために、一部を要約しました。
以下に紹介します。
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人の発言というのは、たとえそれが断片的なものであっても、重要問題に対する秘めた思いや基本的態度を明らかにしてくれることがある。安倍総理の最近の一連発言についても、それは当てはまる。
3月後半の参議院予算委員会において、自衛隊が他国の軍隊と合同演習を行うことに関して安倍さんは維新の党から質問を受けた。「そういった訓練は“我が軍”の透明性を高めるのに大いに役立つ」と安倍さんは答えた。“自衛隊”という言葉は使わなかった。その時は直ぐに軍隊という言葉を取り下げて、「自衛隊は規律がとれていると多くの国が理解しているようだ」と述べた。彼の使った我が軍隊という言葉は、歴代政府の立場と相容れない。自衛隊は軍隊ではないというのが一貫した認識なのだ。安倍さんも、総理として最初の任期中には同じことを述べている。
自衛隊は軍隊ではないという認識は憲法九条に基づいている。九条には「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」と書かれているからだ。この原則に則り、日本は専守防衛という立場をとってきた。攻撃された時だけ必要最低限の武力で対応する、ということだ。「日本は戦力を持てないのだから、空母・爆撃機・長距離ミサイルなどの攻撃兵器を自衛隊は保持できない」というのが、歴代政府の考えだ。自衛隊を軍隊と呼ぶことを避けてきた理由は以上だ。
しかしながら、菅義偉官房長官の見解はこうだ。「安倍総理の発言は何も間違っていない。自衛隊は国際法上の軍隊なのだ。」
憲法の原則は自衛隊を抑制する働きをしているのだが、安倍さんの発言を聞いていると、憲法をあまり気にしていないのが良くわかる。憲法を改正することで自衛隊を「普通の」軍隊に仕立て上げ、日本の軍事行動に対する制限を無くしたいという安倍さんの願望が白日の下にさらされたようだ。
海外では自衛隊が軍隊とみなされているとはいっても、日本の政治家には憲法を遵守する義務があるし、自衛隊関連の案件も憲法の精神に則って対応しなければならない。集団的自衛権の考えに従い自衛隊の海外での役割を広げ、国際紛争で他国の軍隊を支援するという決断を安倍さんは行ったが、このことが憲法に反していないかどうか是非とも説明して欲しいものだ。
現代の立憲主義についての安倍総理の考えがいかにお粗末かを示すため、別の例を挙げよう。
2014年11月8日に衆議院を急に解散してから数時間後、安倍さんはTBSのテレビ番組に出演した。番組中に流された街頭インタビューで、5人のうち4人が安倍さんの経済政策に対して否定的な意見を述べたため、安倍さんは文句を言った。「おかしいじゃないですか。肯定的な意見が全然無いじゃないか。人をワザと選んでいる。」
その2日後に自民党は、東京に拠点を持つ6つのテレビ局に対して要求書を送り付けた。選挙に関して「公平な」報道をするように圧力を掛けるのが目的だ。要求書には、番組へのゲスト出演者やテーマの選定、時間配分、発言頻度、街頭インタビューといった細かなことが記載されていた。「公平さ」が強調されていた。
3月初めの衆議院予算委員会でのことだが、TBS番組での安倍さんの発言と自民党の要求文書に対して民主党議員が批判を行った。それに対する安倍さんの答弁は、「番組での発言は、言論の自由という権利を行使したまでだ」。
憲法が言論の自由を保障しているのは、権力者から市民を守るのが目的だということを安倍さんは理解していないようだ。権力者がテレビ番組に文句を言うのは言論の自由として保障されている、なんて考えはチャンチャラおかしいね。
2014年2月の国会の委員会で安倍さんが行った別の発言も思い出した。「憲法は国家権力を縛る為にあるんだという考えは、君主が絶対権力を持っていた頃の話だ。」この発言も含めて、言論の自由に関する彼の考えを聞いていると、次のように思えてしまう。
「何よりも国家権力を制限するために憲法は作られたという基本的なことを安倍さんは解ってない。」
民主主義における憲法の役割を解ってない安倍さんのような人間ならば、当然、日本国憲法を変えたいと思うだろう。主権は国民に属するという民主主義の理念を憲法は内包しているからね。
総理大臣という公人の発言は、その内容が何であっても注目されるものだ。しかし、安倍さんはそういう認識を持ってないんじゃないかと思われる場面に遭遇した。
2月後半の国会委員会において、西川農林大臣の自民党支部に対する政治献金問題を民主党議員が質問した。その時突然、安倍総理は質問者の議員に対して大声で野次を飛ばしたのだ。「日教組!日教組はどうした?」
委員長である自民党の大島氏ですら、総理の野次に対して注意をしなければならない状態だった。
翌日、安倍さんは野次った理由を説明した。「日教組は政府の補助金を受け取っており、民主党議員は日本教育会館から政治献金を受けている」
しかし、日教組は政府の補助金を受けてないし、民主党議員も教育会館から政治献金を受けてないことが判明したのだ。安倍さんの日教組嫌いは有名だが、彼の発言は非常に無責任だ。後日、発言の不適切さを認めて遺憾の意を表明したものの、政治家としてのダメージは免れなかった。
総理大臣が国会で野次を飛ばしていいのか、という問題が追及されるべきだ。
安倍さんの論理破綻は、自説を強弁する時に見られる。防衛大の卒業式で祝辞を述べた時のことだが、集団的自衛権の行使決定により日本が戦禍に巻き込まれる危険が増すという批判に反論したのだ。「私を批判する者たちは、国民の不安を煽る為に無責任な主張をしている。過去70年の歴史をみれば、こうした批判が間違いであることが判る。」
戦後の全期間を通して戦争反対意見があったからこそ憲法が機能し、日本の軍事行動が厳しく抑制されてきたのだが、安倍さんはこの事実をワザと無視しているね。彼の率いる現政権は逆に、軍事行動拡大を目論んでいる。
総理大臣の発言に注意を払い、その真意を見抜くことが全ての市民にとって一層重要になっている。
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日本語のメディア、特に大手マスコミは安倍さんの意向ばかりを忖度しないで、このくらいの批判記事をどんどん書いて欲しいですね。絶大な影響力を持つテレビ局は、特に、頑張って頂きたい。ジャーナリストの仕事は権力の監視です。それ以外のものは、ただの公報に過ぎません。
以上