今回は、JapanTodayという海外メディアの記事(2016年2月28日付)を紹介いたします。福島原発で溜まり続ける汚染水、海洋への放射性物質流出、漁業への影響などが書かれています。
参照リンク:( )内は私の邦訳です。
「Tainted water: Fukushima still faces contamination crisis」(汚染水:依然として危機的な汚染状況にある福島)
上記リンク先記事の要旨を以下に記します。
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最悪事故が発生してから5年経つが、事故の全貌はいまだに不明確であり、食べ物の安全性に関する消費者の疑念も深まるばかりだ。
事故後に太平洋へ流出した大量の放射性物質は、何十年という長期間にわたって悪影響を引き起こすだろうと、環境の専門家は警告している。
グリーンピースの核問題専門家であるShaun Burnie氏は、福島原発周辺海域を3週間に渡って調査しており、「人類史上、これだけ大量の放射性物質が海洋へ放出されたことはない」と述べた。
Shaun Burnie氏は、「福島の汚染水問題は深刻であり、事故は過去のものという認識は間違いだ」と述べた。
福島原発から20km以内での漁業は禁止されている。消費者の多くは、福島県産の魚介類を口にすることに抵抗を感じている。
海底に身を潜めてあまり動かいない魚からは、高レベルの放射線が検出されている。
グリーンピースは、海水や海底の土砂を採取し放射性物質の検査をしている。汚染のひどい場所・少ない場所を特定するためだ。福島原発へは一番近くて1.6kmまで近づいて調査を行い、土砂の分析はフランスと日本の独立機関で行われる。
最新の方法で検査すればかなり危険と判断される魚介類が、日本人の食卓に並んでいる。
事故を起こした東京電力福島第一原発周辺には、汚染水を保管するために約1000個の巨大タンクが立ち並んでいる。しかし、メルトダウンした原発に地下水が流れ込み、一日当たり400トンの汚染水が新たに発生しているため、タンクの増設が必要だ。
高木復興大臣は、「状況はコントロールされている。福島原発の港湾内で汚染物質は閉じ込めている。」と述べている。東京電力は、地下水流入防止のための凍土壁建設をしている。
グリーンピース:Shaun Burnie氏の見解。「福島原発や海域の汚染問題は50年後も続いているだろう。」
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以上が記事の要旨です。
記事を読むと、福島県とその近くの海域だけが汚染されているような印象を受けるかもしれません。実際には、放射性物質は太平洋全域に広がっています。
拡散状況を視覚的に確認できるシミュレーション動画を次に紹介いたします。数値流体力学などを用いてドイツのキール海洋研究所が作成したものです。太平洋への流出・拡散のイメージをつかむことがきます。YouTubeの画面左上に福島原発事故発生からの経過日数が示されています。最大10年間の変化が計算されています。↓
実際、太平洋を隔てた反対側のカナダ沿岸では、福島原発事故で発生した放射性物質が検出されています。
実際、住む場所によって、次のような誤解をしているケースが多いのではないでしょうか。
・福島県の人たち→「汚染は福島原発内にとどまっている」と考えている。
・他県の人たち→「汚染は福島県内にとどまっている」と考えている。
・外国の人たち→「汚染は日本国内にとどまっている」と考えている。
実際には、放射性物質による汚染は世界規模で広がっているのです。目を背けずに、世界中の誰もが関心を持たねばならない問題なのです。心配する人を「放射脳」などと言って揶揄する態度は慎むべきでしょう。
TOKIOを使ったCMを作成・公開して、お気楽ムードを演出することに熱心な日本政府の態度は、厳しく非難されねばなりません。
以上