見事な勝利である。2017年10月22日に投開票が行われた衆議院選挙で、自民・公明の与党は三分の二以上の議席を確保した。最大の功労者として歴史に名を残しそうなのが小池百合子氏と前原誠司氏だろう。彼らが希望の党を作り、反アベの受け皿だと有権者に誤解させたおかげで野党票が分散し、自民・公明を大いに助けた。
政治意識が低く有権者の約半分が棄権する状況下では、既存の組織票が強さを発揮する。野党は共闘しない限り勝てないのだ。生命線であるその共闘を邪魔したのだから、小池氏と前原氏は安倍総理から表彰されてもいいのではないか?
野党共闘の不十分さ、投票率の低さ、さらには、マスコミを利用した情報隠ぺいにも助けられ、5年間に及ぶ安倍政権はめでたく信任された。これで、森友・加計疑惑の追及も堂々と拒否できる。マスコミも忖度し、報道自体をしなくなるだろう。第四次安倍内閣の顔ぶれ発表が楽しみだ。
しかし、劣悪な与党議員たちを再度国会に送り込んでしまうことの代償は、今後、国民が払わねばならない。どれだけ劣悪なのか忘れてしまった国民も多いかもしれないが、下記リンク先にあるリテラ様の記事に具体的な事例が書かれている。参考にして欲しい。
総選挙・自民党の極右候補者リスト「ウヨミシュラン」発表! 日本を戦前に引き戻そうとしているのはこいつらだ!
リンク先の記事を読んでみると、こんな劣悪政治家たちをよくも選んだものだと、改めてめまいがする。議員としてはおろか、社会人としても人間としても失格な者ばかりではないか。いくらマスコミのせいで情報弱者になっているとはいえ、有権者の見識・良識も疑わざるを得ない。自分たちの年金資金を株式市場に投入され、作られた株高で景気が良いと勘違いしているなら誠にお目出たい。思考停止もいい加減にしないと取り返しのつかないことになる。
これで、参議院だけでなく衆議院でも改憲勢力が三分の二以上を確保した。公明党は歯止めとして全く期待できない。権力という蜜の味を覚えた堕落政党は、安保法制(=戦争法)や共謀罪法(=治安維持法)の強行採決に協力するなど、安倍政権の暴走にさんざん手を貸してきた。「平和の党」は完全にとっくの昔に終わっているのだ。
万が一、公明党が憲法改悪に抵抗したとしても、衆議院には希望の党という心強い自民党補完勢力がいる。野党の仮面をかぶったこの集団は、安倍さんが頼まなくても積極的に憲法改悪への協力を申し出るだろう。思想が同じなのだから反対する理由は無い。
安倍晋三氏にとっての優先事項は経済でも、福祉でも、教育でもない。憲法改悪こそが彼にとっての最優先事項だ。では、何をどう変えたいのか、詳しくは自民党の憲法改正草案に書かれているが、分かり易く示すと下図のとおりである。
一言でいえば、戦前回帰である。戦前を最良の時と言ってはばからない日本会議と同じなのだ。
今回の衆議院選挙前、安倍総理は公約の一つとして改憲があることを隠そうとしなかった。選挙で大勝した以上、なりふり構わぬ憲法改悪に邁進するはずだ。彼が一番力を入れようとしているのは憲法九条ではない。すでに、アメリカの指示通り安保法制は成立しており、戦争放棄の条項は無力化している。アメリカの家来として自衛隊員を差し出す準備は完了したのだ。
安倍さんが最も欲しているのは緊急事態条項の創設である。2017年衆議院選挙の自民党公約の後ろの方で少しだけ言及している。引用しよう。
「憲法改正については、国民の幅広い理解を得つつ、自衛隊の明記、教育の無償化・充実強化、緊急事態対応、参議院の合区解消など4項目を中心に党内外の十分な議論を踏まえ、憲法改正原案を国会で提案・発議し、国民投票を行い、初めての憲法改正を目指します。」
本当に一言だけなので、目立たないが、この緊急事態条項こそ、安倍総理が喉から手が出るほど欲しい武器である。例えば北朝鮮情勢などの危機を煽ることで緊急事態を宣言すると、悪徳権力者にとって何のメリットがあるのか?赤旗が2016年6月25日付の記事で分かりやすく解説しているので引用する。
引用始め
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「緊急事態」宣言のもとでは、法律に基づいて「内閣は法律と同一の効力を有する政令(緊急政令)を制定する」ことができます。これにより、国会審議を抜きに、内閣が人権制約をはじめ「立法権」を行使できます。政令の管轄事項に制限はなく「何でもできる」ことになります。三権分立や国会中心主義などの原則が停止し、首相と内閣に権限が集中します。
さらに国民保護のための国等の指示に国民は「従わなければならない」と、服従義務が規定されます。緊急政令では、罰則制定も排除されません。国会では政府を批判する議論がされていても、「緊急事態」を首相が宣言すれば、政府が独断で強権措置を発動できるのです。
戦前の大日本帝国憲法下では、天皇の緊急勅令はじめ「緊急事態条項」が猛威をふるい、天皇制政府が議会を飛び越え、国民の運動を弾圧して戦争政策を押しすすめました。その反省に立って日本国憲法は緊急事態条項を設けていません。
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引用終わり
特定秘密保護法(=情報隠ぺい法)、安保法制(=戦争法)、共謀罪法(=治安維持法)などの強引な成立過程をみると、安倍政権がいかに緊急事態条項を欲しているかが分かる。小池百合子氏と同じく、邪魔者は容赦なく排除するのが安倍さんのやり方だ。三権分立や立憲主義を無視している安倍政権に緊急事態条項という武器を与えたら、暴走の末、国民がどんな被害をこうむるか、想像力を働かせてみる必要があるだろう。
それにしても、進歩と反対の反動的な流れがどうして増しているのか?それは、日本国民のレベルが低すぎるため、政治の側がそれに引きずられているからに他ならない。次の名言を有権者である我々は胸に留めておくべきだ。
「一国の政治というものは、国民を映し出す鏡にすぎません。政治が国民のレベルより進みすぎている場合には、必ずや国民のレベルまでひきずり下ろされます。反対に、政治のほうが国民より遅れているなら、政治のレベルは徐々に上がっていくでしょう。国がどんな法律や政治をもっているか、そこに国民の質が如実に反映されているさまは、見ていて面白いほどです。これは水が低きにつくような、ごく自然のなりゆきなのです。りっぱな国民にはりっぱな政治、無知で腐敗した国民には腐りはてた政治しかありえないのです。」
(出典:「スマイルズの『自助論』エッセンス版」P17)
憲法改悪という戦前回帰の動きは、奴隷根性丸出しの国民自身の反映と言える。権力を縛るという近代憲法とは異質の戦前憲法の方が、日本人にはお似合いである。現在の日本国憲法は世界的に見ても先進的である。
明らかに、日本国民にとって日本国憲法は高級過ぎた。猫に小判ということわざがピッタリだ。理念が立派過ぎて、その理想を実現するための努力が出来ないのである。
たかだか2~3割程度の得票率で、圧倒的多数の議席を与党に与えた日本人は、今後、取り返しのつかない事態を招いた後、心から後悔することになるのだろうか?世界中に放射性物質をバラ撒いた福島原発事故は、目に見えない事象のため、多くの国民はすでに忘れてしまっている。目に見えるような悲惨な事実に自分が直面しないと気付かないのだろうか?21世紀のうちに、日本人は民主主義を自分のものにすることが出来るだろうか?ようやく気付いたときに、日本人は何人生き残っているだろうか?
2017年の衆議院選挙で自民・公明・希望・維新に投票した者、そして棄権した者は、時代を逆行させた加害者として歴史に刻まれることになるだろう。
以上