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過去の失敗に学べない民族は衰退するのみ。歴史を学ぶ意義とは?

写真(南京大虐殺を世界記憶遺産に登録したユネスコを批判する菅官房長官)

 歴代内閣が踏襲している村山談話は、外務省ホームページの下記リンクに掲載されています。

「戦後50周年の終戦記念日にあたって」(いわゆる村山談話)

 上記の村山談話から日本の侵略戦争に関する部分を抜き出します。

「植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。私は、未来に誤ち無からしめんとするが故に、疑うべくもないこの歴史の事実を謙虚に受け止め、ここにあらためて痛切な反省の意を表し、心からのお詫びの気持ちを表明いたします。」

 上記の抽象的な表現から、具体的な事実をイメージすることができる日本人は少数派だと思います。この程度の談話ですら受け入れることが出来ない人間が、安倍政権や自民党を牛耳っています。安倍政権をコントロールする日本会議は反動的・独善的な団体ですが、次のような偏狭な歴史観しか持つことができません。

「天皇の軍隊が行ったのは自衛のための戦争であり、侵略戦争では断じてない。日本軍の行動を邪魔する者は皆テロリストだ。我々は何も悪いことはしていないので謝罪する必要はない。」

 この主張は多くの日本人にとって受け入れられ易いものです。自己批判・反省・思考といった労力が不要だからです。精神的に楽な方向に流されていたい多くの人にとって耳触りが良い主張を、現在の政権与党政治家は発信しているのです。意識が低い国民はダマすのが簡単なので、権力者にとって誠にありがたい存在です。

 いつまでも現在の堕落した状況を続けて良い訳がありません。そこで今回は、近隣諸国で侵略被害に遭った人たちの視点を提供してくれる不朽の名著を以下に紹介します。

中国の旅 (朝日文庫)

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 この本は1971年、元朝日新聞記者の本多勝一氏が約40日かけて中国を取材した内容が記されています。朝日新聞、朝日ジャーナル、週刊朝日で連載され大反響を起こしました。中国を取材した目的を本多氏は同書で次のように述べています。

「戦争中の中国における日本軍の行動を、中国側の視点から明らかにすることだった。それは、侵略された側としての中国人の「軍国主義日本」像を、具体的に知ることでもある。とくに日本軍による残虐行為に重点をおき、虐殺事件のあった現場を直接たずね歩いて、生き残った被害者たちの声を直接ききたいと考えた。」

 戦後26年経ったときに、このような中国取材をした理由を、本多氏は同書の中で5個挙げています。以下私の要約です。


 中国への侵略行為に関して日本側が誠意ある言動・行動をとらなければ、日中国交を進展させることはできない。日本政府はもちろんだが、マスコミも侵略戦争の調査報道をしておらず、日本国民に知らせる努力を怠ってきた。


 日本の侵略戦争によって中国人が千何百万人も殺された事実を一般の日本人は知らない。知っていたとしても、噂レベルの曖昧なイメージだ。この無知が、反動右翼勢力の跋扈を許す結果につながっていく。


 ベトナム戦争での米軍の虐殺行為をアメリカ人ジャーナリストが報道していることに対して、日本人は立派だとほめている。他国のジャーナリストの行動に感嘆してばかりではなく、日本人も実践した方がよい。


 広島・長崎への原爆投下、東京大空襲などの告発・記録運動が盛んだが、これは被害者視点のものであり、加害者視点の記録が欠落している。ナチス・ドイツによる加害記録は日本国内にたくさん出回っているにも関わらず、旧日本軍の加害記録が存在しないのはおかしい。


 自分の家族が殺されたり家が焼かれた事実を中国人たちは記憶している。その生々しい具体的風景を日本人が知れば、日本の軍国主義復活を警戒する中国側の気持ちを理解し易くなるだろう。虐殺した側の国民がその事実を知らないのは犯罪の上塗りだ。

 本書「中国の旅」の目次を、以下に引用します。

・中国人の「軍国日本」像
・旧「住友」の工場にて
・矯正院
・人間の細菌実験と生体解剖
・撫順
・平頂山
・防疫惨殺事件
・鞍山と旧「久保田鋳造」
・万人坑
・蘆溝橋の周辺
・強制連行による日本への旅
・上海
・港
・「討伐」と「爆撃」の実態
・南京
・三光政策の村(注)

注)殺し尽くす、焼き尽くす、奪い尽くすことを「三光」という。

 最後の「三光政策の村」での記述を一部引用します。

「石段を登っていたとき、ただならぬ気配にふりむいた。老人が三人、息をきらせて石段を登ってくる。私のところまでくると、その一人がいきなり両手を出して広げた。なにかを訴えようとするまなざしに、涙があふれている。広げた両手の指は、親指以外がみんな短く切れていた。『あの現場から脱出した一人です。猛火の中を逃げるとき、火傷をして指先を失いました』と、潘広林さんがいった。単用有さんは、そう通訳してから老人たちに事情をきいていたが、何もいわずに、私に背を向けて歩き出した。歩きながらハンカチを出して顔にあてた。単さんは泣いているのであった。」

「涙のおさまった単さんが、さっきの事情を説明した。あの老人たちは、日本から新聞記者が取材にきたことを知って、ここまでかけつけたのだった。31年前の、あのときのすべてを、どうかくわしく知ってほしい。自分たちも、なにか訴えたい。日本の人民に知らせてほしい。そんな、やむにやまれない思いで彼らはかけつけたのだと、単さんはいった。話す人が泣きながら語るときも、単さんは感情をけんめいに押さえて正確な通訳に努めるのが常だったが、この老人たちの心情には強く打たれて、どうしても涙をこらえきれなかったという。」

 本書の最後に、高史明氏が解説文を書いています。一部を引用します。

「銃殺された死者、刺殺された死者、焼き殺され、あるいは生き埋めにされた死者、強姦されたうえ腹を切り裂かれた死者、銃剣で串刺され空中へ放り捨てられた赤ん坊の死者、そのほとんどが平和な村人であり、おとなしい労工であった。これらおびただしい数の死者こそが、生者をして、ありし日の出来事を語らしめているのである。(中略)その死者の前では、他のいかなる言葉も重みを失う。本書においては、その死者の眼ざしこそが、他のすべての言葉を超えて重く存在するのである。私たちもまた、この死者からのメッセージを、いかに受け止めようとしているかを、死者の側からまっすぐ見つめられていると言ってよい。」

「死者は怨みを言わない。ただ、無限の深みから、私たちを見つめる。見つめられている私たちが、生者として何を願い、何をなすべきかは、すでに明らかである。死者の無言の願いに応えていく方向にこそ、私たちの未来へ通じる道がある。」

 歴史的なルポルタージュを残してくださった本多勝一氏に対しては感謝するばかりですが、ネット上では事実に基づかない非論理的な誹謗中傷が溢れています。ネトウヨと呼ばれている人達は精神的に余裕が無く、自分のことだけに手一杯で他者への想像力・共感力が欠落しているようです。

参考リンク:アマゾンに記載されているカスタマーレビュー

最後に:
 今回紹介している「中国の旅」は、空き時間に気楽に読める本ではありませんが、私自身の人生に多大な影響を与えてくれました。

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 南京大虐自体が存在しないと主張する愚かな人たちには、是非とも読んで欲しいと思います。視野が広がりますよ。

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以上

JUN: こんにちは。JUNといいます。 中年の男性です(既婚者)。 大学卒業後に民間企業(メーカー)に勤め、いつの間にかベテランと言われる年齢になりました。 皆さんに役立つ情報を提供したいと思い、ブログを始めました。 政治社会問題を扱うことが多いです。 れいわ新選組の山本太郎さんを支持。 難しい問題を分かり易く丁寧に解説するのが基本方針。 気軽に読んで頂けると嬉しいです。 その他プロフィール: ・大学は理系の学科を卒業 ・働きながら通信教育で心理学と人間行動学の修士号を取得 ・独学でTOEIC940点を達成(2020年1月) なお、ブログ記事の無断転載は法律で禁止されています。 どうぞよろしくお願いいたします。