原子力規制委員会は環境省の外局であり、法律により、次のような任務を負っています。
「国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資するため、原子力利用における安全の確保を図ること」
このような重要な組織のトップである田中俊一委員長は、長年、原子力関係の研究に携わってきました。いわゆる、学者さんですね。原子力村の住民だと言っていいでしょう。
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田中委員長は、2016年3月23日、日本外国特派員協会で記者会見を行いました。ビデオのリンクを以下に貼ります。
この会見内容は、以下のリンク先にも掲示されています。
原子力規制委員会ホームページに掲載されている田中委員長会見内容の速記録全文
田中俊一さんは山本太郎さんと違い、ダラダラと要領を得ないしゃべりをする人ですので、ビデオや速記録を確認するのは疲れると思います。そこで私が、要旨を以下に抜き出しました。
田中委員長会見要旨始め
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福島原発事故により、原子力の安全規制に対する信頼は地に落ちた。99%の国民は不信感を持っただろう。
情報公開・科学的中立性・政治的独立性を重視して、この3年間取り組んできた。
大きなミッションとしては次の3つだ。
・事故を起こした福島原発の廃炉措置
・新しい規制基準での審査
・原発事故発生時の住民安全確保に関する指針の作成
福島県民が受けた被害をできるだけ元に戻したい。
福島原発の汚染水に関しては、大きな事故が起こる可能性は低くなっている。
これから段階的に廃炉を進めていく。
汚染水は浄化装置で基準濃度以下になったものを海洋放出することを勧めている。
ただし、トリチウムは技術的に除去が不可能だ。3400兆ベクレルといっても大した量ではないから、そのまま海に放出して良いと思う。どの国もそうしているし、それ以外に方法はない。
宇宙から地球に降り注いでいるトリチウムの方が、量的にはずっと多い。
汚染水を海洋放出すると風評被害につながるが、それは政治家が何とかしてほしい。
高浜原発の運転差し止め仮処分に関しては、ノーコメントだ。
福島原発事故の原因、IAEAの知見、そして日本における自然災害状況を踏まえて、新しい規制基準をしっかり作ったつもりだ。
バカバカしい初歩的ミスが続いている状況では日本国民の信頼が得られない、というのはご指摘の通りだ。
原子力発電所は巨大なシステムなので、大なり小なりトラブルは起こる。それが大きな事故にならないように気を付けることが重要だ。
福島原発が冷却能力を失った後、すぐにメルトダウンして水素爆発も起こることは、私自身は分かっていた。原発関係者なら、そんなの常識だ。
東京電力自身が作ったメルトダウンの判定基準書が今頃になって見つかった、というのは信じ難いことだ。東電のそういう体質を直さなくちゃダメだ。原子力全体に対する信頼回復は先が見えない状態だ。
汚染水の排出基準については、これ以下のレベルなら危険はないということを証明するのは無理だ。とりあえず現状では、国際的に決められた基準で海洋放出する以外に方法はない。
ドイツのような脱原発の選択をするかどうかは、国民が決めてください。私はノーコメントだ。
原発は安全ではなく、非常に大きなリスクを持った技術だ。そのリスクを顕在化させないように規制することが私の仕事だ。
原子力規制委員会の人事については、国会で全会一致の同意を得られていないが、それは仕方ないことだと思う。
原発の運転期間延長申請については、新しい規制基準に合致したものでなければ認めない。
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田中委員長会見要旨終わり
世界に向けて発信された田中委員長のメッセージは、世界中の人々を安心させられるでしょうか?
福島原発事故の原因究明と再発防止を期待していいでしょうか?
国内の原発再稼働や輸出をしても安心なのでしょうか?
田中委員長は過去に、次のような発言をしています。
「基準に合致するか審査はするけど、安全かどうかは知らない」というのは随分と無責任な発言ですね。眠そうな顔でこんな大胆なことを言われると腹が立ちます。「原子力利用における安全の確保を図る」という使命を忘れてしまったのでしょうか?
2017年5月24日、原子力規制委員会は、大飯原発3、4号機について安全審査に合格したことを示す「審査書」を正式に決定し、再稼働にお墨付きを与えました。それに先立つ5月17日の記者会見で、原発に対する北朝鮮のミサイル攻撃・テロ攻撃に対してどのように対処するのか?、という質問が記者から投げかけられました。
田中委員長は「原発へのミサイル攻撃対策はやってない」と答えました。記者は、「国民の生命・財産を守る責任を放棄するのか?」と追及しましたが、田中さんは「責任放棄ではない」「そこまで切迫しているとは思えない」「緊急事態にならないようにして頂きたい」などと答えるばかりでした。最終的には、しつこく食い下がる記者のマイクは取り上げられてしまったのです。今村前復興大臣を彷彿とさせる暴挙です。
似たようなやり取りは、国会での質疑でも行われました。山本太郎参議院議員が田中委員長を吊るし上げにしている場面が、下記リンク先の記事で確認できます。
「人の命を守る気があるのか!?」山本太郎が原子力規制委員長を吊るし上げ!
繰り返しになりますが、原子力規制委員会は次のような任務を負っています。
「国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資するため、原子力利用における安全の確保を図ること」
内閣の最高責任者である安倍総理が北朝鮮のミサイル攻撃を警戒している状況なのに、原子力規制委員会が真面目に対応方法を考えようとしないのはナゼでしょうか?被害想定リスクの試算とか、再稼働しないとか、色々考えられますが、何もやらない。ナゼでしょうか?それは、安倍総理自身が「ミサイルなんて飛んでくる訳がない」と思っているからです。森友・加計問題などへの批判から国民の関心をそらすなど、様々な政治的思惑に「敵国」北朝鮮を利用しているだけなのです。
一番重視しなければならない外交努力を放棄して北朝鮮のミサイル脅威を煽っている最中に、総理本人が花見やゴルフを楽しんでいるんですから、部下たちがミサイル攻撃の可能性を信じる訳がありません。
田中規制委員長としては、「ミサイル攻撃なんてあり得ないんだから、対策は必要ない!」と言いたいところですが、安倍さんの顔に泥を塗る訳にはいかないので、前出のような非生産的答弁を繰り返すしかないのです。質問する方も徒労感に襲われているでしょうね。
田中委員長に関しては、発言内容以上に問題なのが表情・顔つき・喋り方です。自信をもって他人を説得するには程遠く、頼りない・覇気がないという印象を受けます。50年以上に渡って原子力に携わってきた専門家だというのは認めますが、自分の持っている知識を社会のために役立てようという気持ちがあるのでしょうか?あまりにも巨大な負の遺産を前にして途方に暮れ、無力感に襲われているのかも知れませんね。このまま原子力村の住民として「大過なく」一生を終えたいのでしょうか?文部科学省の前事務次官の前川さんみたいに、人間として模範的な行動も少しは行って頂きたいと思います。
以上