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【失敗から学べない原子力村】人間は集団になると巨大犯罪に走るのはナゼか?

1)はじめに
 九州地方で強い地震が頻発しているにも関わらず、脆弱な川内原発を停止するという決断ができないのはナゼだろうか?原子力村という巨大な利権組織が、チェルノブイリ原発事故のみならず福島原発事故からも学ぶことができないのはナゼだろうか?

出典:原子力村の住民一覧


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 悪名高き原子力村だが、構成員の一人ひとりを見ると、どこにでも居そうな個人である。家に帰れば温厚で善良な家庭人だったりする個人が、集団を形成した途端、結果として、日本のみならず世界中に放射性物質をまき散らすという犯罪を犯す。健康被害が起きても無関心で何の痛痒も感じずにいられるのはナゼだろうか?

 今回は原子力村を例として、人間が集団になると巨大な悪行に走る原因を考えてみたい。

2)怠惰の問題

 原子力村は上図を見ればわかる通り、役割が細分化されている。村を構成する個人は、割り当てられた役割を日々、「一生懸命」にこなしているだけである。

「規制委員会としては、基準を満たしているか審査はするけれども、安全かどうかは知らない。再稼働の判断は政治家が行え。」
「政治家は再稼働の判断はしない。原子力規制委員会の審査に合格すれば自動的に再稼動できる仕組みをつくる。」
「再稼動の最終判断は電力会社と立地自治体で行ってほしい」
「地方公共団体に再稼働の判断を押し付けないでほしい。最終的な判断は国の責任で行うべきだ」
「電力会社としては、原子力規制委員会が原発の安全性を、政府は原発の必要性を説明するべきだと思っている」
「原子力規制委員会がOKと言っているから、原発を停止しない」
「報道機関としては、政府の発表を流しただけだ」
「被曝の許容値については、IAEA(国際原子力機関)の見解に従う」
「私は総理大臣として、アメリカの意向に沿っているだけだ」

 組織内で責任者としての権限と肩書を持っている人ですら、逃げ腰で無責任な対応・発言に終始しているのだ。保険会社からも見放されている原子力発電所の再稼働に責任を持てる者など居るはずがない。組織で下位に属する人は、このような実態に目をつむりながら、日々業務を推進している。もちろん、自分が悪の一端を担っているという意識は無い。何か事が起これば、「自分は上の判断に従っただけです」という言い訳をする準備が出来ている。

 人間は組織に属すると、多かれ少なかれ未熟な退行現象を起こす。良心を投げ捨て、自分の頭でまともに思考・判断することを放棄した「責任者」たちの表情は醜悪である。

写真(山下俊一教授) 出典:不明


写真(川内原発再稼働に同意する鹿児島県の伊藤知事) 出典:ANNニュース



写真(強制起訴される東京電力元幹部3人)


鹿児島県の川内原発を停止させる必要が無いと発言する丸川原子力防災担当大臣

 組織の中で未熟な退行現象を起こしている者たちは、知的に怠惰であり、従来の考え・態度に固執している。対立する証拠を目の前にして、内省し自己批判することは苦痛と混乱を伴うため、出来るだけ避けようとする。涙ぐましい「努力」である。本来ならば、従来の価値観を否定されるような混乱と困惑は、新しいものの見方を獲得するチャンスであり、成長と学習の機会なのである。

3)ナルシシズム(自己愛・自惚れ)の問題
 
 組織に属する人間は、大なり小なりナルシシズム(自己愛・自惚れ)を持っている。そのナルシシズムは、持っている権力が強くなるにつれて増大する。原発に頼っていれば明るい未来が拓けると、本気で思っている国民はいないと思う。しかし、原子力村には、自分の考えや態度が間違っているかもしれないと想像すらできない人間がたくさんいるのだ。

 事実に反し根拠に乏しくても、彼らのナルシシズムは強力であり、通常の限界を超えている。歪んだプライドは高く、外部からの一切の異論を受け付けない。対立する大量の証拠が出てきても、無視し隠滅するのが常だ。具体的な事例を以下に列挙しよう。

・この程度の放射能は大丈夫だと言ってくれる学者を探し出し、太鼓判を押してもらう。

写真(嘘八百で日本国民を被ばくさせている人々) 出典:みんなでスピリチュアル

・IAEAの報告書などから「健康被害の明確な証拠は無い」という記述を抜き出して利用した。

写真:IAEAの福島原発事故報告書(一部)

・中学・高校生用の副教材を作って、放射線は身近で役に立つものだと教育する。

写真(中高生のための放射線副読本) 出典:文部科学省

・一方的で解りにくい説明を行い、住民からの意見には耳を傾けない。説明会を行ったという事実を作りたいだけ・・・。

写真(官僚による住民説明会) 出典:kanryomei.wordpress.com

・放射性物質に汚染された危険地域でありながら避難指示を解除し、福島の住民に対して帰還を促している。安全宣言して避難指示を解除すれば、補償金打ち切りの口実にできる。

写真(福島復興・避難指示解除のニュース) 出典:FNN

・原発事故による癌発生情報を隠蔽するための法律を作った。
がん登録推進法で登録された癌の情報は、政府や医療関係者しか閲覧することが出来ない。従って、何も公表されなければ、癌の発生状況などを国民が知ることは不可能だ。

図(がん登録法案のシステム) 出典:厚生労働省

・TOKIOが出演する「食べて応援」コマーシャルを作った。
人々の善意に訴える手法だ。食べ物が安全だと思い込ませ、放射性物質による内部被ばくへの批判を抑え込むことができる。

・報道機関は権力により懐柔され、原発事故報道を自粛している。しつこい報道関係者は降板の憂き目に・・・

写真(原発事故ニュースを流せないニュースステーション) 出典:テレビ朝日

写真(福島原発事故により大量の放射性物質が放出されたが、健康問題は発生しないと安倍総理は断言した。)

 3)で述べた怠惰の問題は、ナルシシズムと相互作用を起こし、人間を限界まで堕落させていく。

4)有権者側の問題
 政治家も含めた原子力村の暴走はナゼ止まらないのか?無数の失敗に直面しながらも学ぶことが出来ずにいる理由は何か?原因として、原子力村に存在する怠惰とナルシシズムの問題を述べてきたが、権力の暴走を許す無気力な国民たちのことも指摘せざるを得ない。

 選挙を通じて政治家を選び、原発政策の行く末を決めることが出来る有権者たちの堕落も既に限界を超えていると思う。福島原発直後には大量の情報が出回り、事実を知り内省する機会はいくらでもあったはずだ。にもかかわらず原子力村側の情報隠ぺいやブラックプロパガンダを易々と許してきた責任は、大多数の無気力な国民にある。

図(2014年の衆院選における自民党獲得票数と棄権者数の比較) 出典:数値は総務省集計データ通りだが、図自体の出典は不明

 自民党の獲得投票数を遥かに超える棄権者たちは、原子力村の犯罪を立派に支えていることを自覚すべきだ。民主主義という制度は存在しても、実質的に有効に機能していない国で立派な政治家や政策を期待することはできない。

5)有効な方策は何か?
 原子力村に限らず、日常生活の至る所に、怠惰とナルシシズムに冒された「善良」な個人が存在する。会社経営者からの指示という理由で、サービス残業という違法行為を部下に強要する奴隷管理職はその典型だろう。部下も大人しく従うだけで、抗議はおろか、労働基準監督署に相談することもしない。長年に渡り金銭的な搾取を許し、結果として全国にブラック企業を蔓延させる手伝いをしてきた。悪徳企業の商品やサービスが消費者へ害悪を及ぼしても、基本的に無関心であり、会社の上から下まで保身が最優先だ。組織人としての身分や力が確保され、面倒事から逃げられれば、それで満足なのだろうか?あまりに傲慢だし無知である。

 未熟な集団がもたらす悪の再生産・継承を防がねばならない。有効な方策は何だろうか?私は、集団を構成する個人へのアプローチしかないと考えている。集団に埋没し、自分の倫理的判断力・思考力を指導者・権力者に奪われていないか、常に内省する必要がある。有無を言わせぬ国旗掲揚・君が代斉唱、殺人的な組体操強要、皇室礼賛報道など、日常生活の中にヒントはいくらでもある。

写真(組体操) 出典:不明

写真(2015年の新年一般参賀) 出典:The Huffington Post

 一人ひとりの個人が勇気をもって自分の中の怠惰とナルシシズムに向き合うことが出来れば、集団になった時の悪行に歯止めをかけることができる。困難であっても、人類にはそれを実行する能力があるはずだ。

参考文献

平気でうそをつく人たち―虚偽と邪悪の心理学

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以上

JUN: こんにちは。JUNといいます。 中年の男性です(既婚者)。 大学卒業後に民間企業(メーカー)に勤め、いつの間にかベテランと言われる年齢になりました。 皆さんに役立つ情報を提供したいと思い、ブログを始めました。 政治社会問題を扱うことが多いです。 れいわ新選組の山本太郎さんを支持。 難しい問題を分かり易く丁寧に解説するのが基本方針。 気軽に読んで頂けると嬉しいです。 その他プロフィール: ・大学は理系の学科を卒業 ・働きながら通信教育で心理学と人間行動学の修士号を取得 ・独学でTOEIC940点を達成(2020年1月) なお、ブログ記事の無断転載は法律で禁止されています。 どうぞよろしくお願いいたします。