2016年6月26日、日本共産党の藤野保史政策委員長はNHKの討論番組で、防衛費が初めて5兆円を超えた平成28年度予算を念頭に「人を殺すための予算でなく、人を支えて育てる予算を優先させていくべきだ」と述べました。
「人を殺すための予算」という表現が注目を浴びて物議を醸しているようですが、この発言が出てきた背景を確認したいと思います。
1)正しい前提
・日本では、第二次世界大戦での敗戦以来、実質、アメリカの植民地状態が続いている。
・自衛隊はアメリカの命令により作られた組織であり、指揮権はアメリカ側にある。
・アメリカ側の決定は日本国憲法よりも上位にあり、その意向には日本政府も逆らうことができない。
・日本の宗主国であるアメリカ様は、その建国以来、9割以上を戦争に費やしてきた。
・アメリカが世界中で戦争をしてきたのは、石油などの資源利権確保が主な目的である。故意に紛争を起こし軍需産業を潤わせる仕組みも作って来た。世界的な支配層・富裕層の意向を踏まえている。
・自衛隊は、戦争大国であるアメリカの後方支援役を担ってきており、そのために何十兆円という日本国民の税金が費やされてきた。アメリカ軍の侵略・大量殺戮行為に、間接的に加担してきたのである。
・安保法制(=戦争法)成立後は集団的自衛権の名のもとで、戦地の最前線で実際に血を流す役割がアメリカから期待されている。その反動で、日本がテロリストの標的になる確率が高まる。
・安保法制を強引に推進するため、安倍政権は、北朝鮮や中国などの「脅威」を故意に煽ってきた。
・最近クローズアップされている災害救助任務は、自衛隊にとっての本務ではない。
上記1)で箇条書きにした前提・背景を踏まえている人は、まだまだ少数派だと思います。参考文献を以下に記します。
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上記1)のような背景知識を持っているならば、「人を殺すための予算でなく、人を支えて育てる予算を優先させていくべきだ」という発言(日本共産党:藤野議員)は、さほど違和感はないと思います。言葉足らずなのは事実ですが、問題発言ではありません。本質を突いています。
しかし、多くの日本国民には、次のような間違った思い込みを持っています。
2)間違った思い込み
・日本は独立国であり、アメリカとは対等な日米安全保障条約を結んでいる。
・自衛隊の指揮権は、日本の総理大臣が持っている。
・日本の友達であるアメリカは世界の警察官としてテロリストと戦っており、世界平和に貢献している。
・安保法制により集団的自衛権行使が可能になれば自衛隊の役割が拡がり、より確実に日本国民の生命・財産を守ることができるようになる。
・5兆円を超える防衛予算は、北朝鮮や中国などの「脅威」から日本国民を守るための必要経費だ。
・震災発生時の自衛隊による救助活動報道を見ても分かる通り、日本国民を守るのが自衛隊の本務である。
2)のような間違った思い込みをもっていれば、「人を殺すための予算でなく、人を支えて育てる予算を優先させていくべきだ」という発言(日本共産党:藤野議員)は、暴言になります。実際に安倍総理は、「とんでもない侮辱」と言っています。ネット上での典型的な非難例を挙げましょう。
ツイッター上で、「人を殺すための予算」で検索すると、半分以上は、上記のような感情的な非難ですね。しかし、「防衛費の増額よりも、社会保障や暮らしの充実を優先すべき」、という意見の人も多く、藤野議員の発言を冷静に受け止めている人も目立ちます。安保法制の強引な推進・採決が、多くの有権者を啓発するのに役立ったのでしょうか。
最後に:
安倍政権の御機嫌取りを最優先する御用マスコミが跋扈しており、国民は正しい情報を得ることが難しい状況にあります。日本共産党の藤野議員は若干言葉足らずだったとはいえ、本質を突く発言をしてくれたと思います。NHKの安倍政権応援番組で、悪者になることを恐れず、「人を殺すための予算でなく、人を支えて育てる予算を優先させていくべきだ」と主張したことは問題ではありません。大いなる貢献です。問題は、発言を受け止める側の知識不足にあると思います。
以上