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「隷属なき道」書評:あなたにとって快適な社会を考えてみませんか?

「科学技術が発展したのに、なぜ、人間の暮らしが楽にならないのか?」
「貧富の差が広がっているが、皆に恩恵が行き渡るようにできないか?」
「ブラック企業の長時間労働、過労死を防止するにはどうすればいいか?」
「安心して暮らせる社会保障制度を確立してほしい」

 このような疑問・要望は当然のことだと思います。

 コンピュータやロボットによるオートメーションは人間を助けるためのものなのに、逆に、非人間的な奴隷労働を広げました。タックスヘイブンを悪用した税金逃れは、何千兆円という規模に達し、社会資本へのただ乗りを許しています。「富は海の水に似ている。 飲めば飲むほどのどが渇く」という言葉通り、人間の欲望には際限がありません。

写真(悪いヤツラ) 出典:不明

 今だけ、自分だけ、お金儲けだけ、という姿勢は本能に忠実とも言えますが、無教養むき出しで醜いものです。周囲の者だけでなく自分も不幸に陥れます。一体、何が楽しくて生きているのでしょうか?皆が自分らしさを発揮し、安心して暮らせる社会を実現するために知恵を絞らねばなりません。

 今回紹介する書籍は、このような問題への処方箋として有効です。

隷属なき道 AIとの競争に勝つベーシックインカムと一日三時間労働

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¥1,620から
(2017/12/24 12:42時点)

 目次から一部を引用します。

引用始め
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■第1章 過去最大の繁栄の中、最大の不幸に苦しむのはなぜか?
産業革命以降の2世紀で、長く停滞していた世界経済は250倍、1人当たりの実質所得は10倍に増えた。これは中世の人々が夢見た「ユートピア」なのか?ではなぜ、うつ病が歴史上かつてないほどの健康問題になっているのか?

■第2章 福祉はいらない、直接お金を与えればいい
生活保護や母子家庭手当て、就学援助、幾多ある福祉プログラムを全てやめる。そのかわりに全ての国民に、例えば一律年間150万円の金を与える。それがベーシックインカム。ニクソン大統領はその実施をもくろんでいた

■第3章 貧困は個人のIQを13ポイントも低下させる
ベーシックインカムがなぜ有効なのかは、貧困がもたらす欠乏の害を調査するとわかる。貧困はIQを13ポイントも下げる。奨学金や有効な教育プログラムにいくら投資しても、そもそも貧困層にいる人は申し込まないのだ

■第6章 ケインズが予測した週15時間労働の時代
ケインズは1930年の講演で、「2030年には人々の労働時間は週15時間になる」と予測した。ところが、産業革命以来続いていた労働時間の短縮は70年代に突然ストップした。借金によって消費を拡大させる資本主義の登場

■第7章 優秀な人間が、銀行家ではなく研究者を選べば
「空飛ぶ車が欲しかったのに、得たのは140文字」とピーター・ティールは揶揄する。過去30年の革新は富の移動に投資されてきた。優秀な頭脳が銀行員や会計士よりも研究者や技術者を選べば、才能はより社会に還元されるのだ

■第8章 AIとの競争には勝てない
産業革命時代、織物工は蒸気機関に仕事を奪われた。そして今、AIとロボットが「中流」と呼ばれる人々の仕事を奪う。その結果、富の不均衡は極大化する。今こそ、時間と富の再分配、労働時間短縮とベーシックインカムが必要だ

■第9章 国境を開くことで富は増大する
西側世界は途上国支援のために50年で5兆ドルを投じてきた。だが国境を開けば世界総生産は67~147%成長し、65兆ドルの富が生み出される。わずか62人が35億人の総資産より多い富を所有する偏在の要因は国境にある

■終章 「負け犬の社会主義者」が忘れていること
この本で提案したのは、大きな路線変更だ。奴隷制度の廃止、女性の解放も、唱えられた当初は、正気の沙汰とは考えられていなかった。そうした「大きな政治」を左派は思い出し、右派も同調する変革へと進むべきだ
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引用終わり

 現在の社会システムで既得権益の恩恵を受けている人から見れば、これらの主張は狂気でしかないでしょう。しかし、出生率や人口の減少を見てもわかる通り、今の日本のシステムは持続可能なものではありません。滅亡への道です。そして、滅亡への速度はドンドン大きくなっています。みんな、口をつぐんでいますが事実です。茹でガエルのまま死んでもいいのでしょうか?

 この書籍での提案は大きく分ければ次の三つです。

・週15時間労働
・ベーシックインカム
・国境のない世界

 「夢物語でしかない」という批判が聞こえてきそうです。しかし、今では当たり前の「奴隷制度廃止」や「女性の参政権」も当時主張した人々は狂人とみられていました。ベーシックインカムについても、当たり前と言われる日が来るかもしれません。

 もちろん、いきなり新しい制度を導入し徹底させることはできません。世間に考えを広め、皆で議論し、法律を通し、小さな社会実験を行い、不具合点の抽出と原因分析・対策取り込み、再実験、といった地道な取り組みが欠かせません。

写真(ベーシックインカムの国民投票を行う予定のスイス。推進派の市民がスイス国会前に大量の硬貨を撒いた。) 出典:www.bloomberg.com

 まずは、新しい考えに耳を傾ける姿勢が必要です。斜に構えて冷笑する態度からは何も生まれません。本書が皆様にとって何らかのきっかけになれば幸いです。

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以上

JUN: こんにちは。JUNといいます。 中年の男性です(既婚者)。 大学卒業後に民間企業(メーカー)に勤め、いつの間にかベテランと言われる年齢になりました。 皆さんに役立つ情報を提供したいと思い、ブログを始めました。 政治社会問題を扱うことが多いです。 れいわ新選組の山本太郎さんを支持。 難しい問題を分かり易く丁寧に解説するのが基本方針。 気軽に読んで頂けると嬉しいです。 その他プロフィール: ・大学は理系の学科を卒業 ・働きながら通信教育で心理学と人間行動学の修士号を取得 ・独学でTOEIC940点を達成(2020年1月) なお、ブログ記事の無断転載は法律で禁止されています。 どうぞよろしくお願いいたします。