小池百合子氏率いる希望の党は、以下に掲げる12のゼロを目指したいと述べた。
実際のところ、目指したいと「考えている」だけで、本気で実現する気はゼロである。これは有権者に対する公約ではなく、単なる願望であり、思い付きだ。
有権者の興味を引きそうなキーワードを12個選んで、手軽に共感を得るための手法である。テレビ業界出身の小池百合子氏は、視聴者の喰いつきそうな言葉の選び方やその使用方法を熟知している。中身は無くても、イメージで扇動するプロにかかれば、情報弱者などひとたまりもないだろう。
小池百合子氏がすくい上げようとしているのは、政治的関心の薄い浮動票層である。モノを主体的に論理的に考える習慣がなく、空気を読むことに熱心で、上からの指示に従順な「常識」人が日本にはとても多い。マスコミを利用して短期間で支持を集め、一人でも多くの当選者を出すための戦略としては合理的である。
問題は、小池百合子氏自身が、自分の言ったことに対して責任を取らない人間だということだ。2016年7月、東京都知事選で掲げた7つのゼロを以下に示す。
ご存知の通り、何一つ実現していない。「目指します」という掛け声だけで、やる気がないからである。今後、彼女が何年間、東京都知事を務めても、何一つ進歩は無いだろう。厳しい現実に真摯に向き合い、現場の人間の言うことに耳を傾け、原因を把握し、有効な対策を地道に実行するというのは手間・時間・お金を要する大変な作業なのだ。世の中の多くの課題に日々向き合っている庶民たちのおかげで社会は成り立っているが、小池氏は、そういった地道さとは無縁の人間だ。目先の自分の損得しか興味がない権力者は、逆に、社会の劣化要因となる。
2017年10月22日に投開票が行われた国政選挙でも、多くの有権者が小池百合子氏の戦略にダマされて、フラフラと一票を投じたようだ。
安倍晋三氏や小池百合子氏と同類の独裁者:アドルフ・ヒトラーは、宣伝手法について次のように述べている。
「宣伝効果のほとんどは人々の感情に訴えかけるべきであり、いわゆる知性に対して訴えかける部分は最小にしなければならない」
「宣伝を効果的にするには、要点を絞り、大衆の最後の一人がスローガンの意味するところを理解できるまで、そのスローガンを繰り返し続けることが必要である。」
また、ヨーゼフ・ゲッベルスは、「十分に大きな嘘を頻繁に繰り返せば、人々は最後にはその嘘を信じるだろう」(=嘘も百回繰り返されれば真実となる)、と述べた。
歴史を振り返るとわかるが、権力者は必ず嘘をつく。テレビ・ラジオ・映画・インターネット・新聞・雑誌・街頭演説・ポスターなど、ありとあらゆる手段を用いて国民に訴えかけてくるのだ。ダマされて、間違った判断や不適切な投票行動をしないように気を付けなければならない。
映画監督・脚本家として活躍した伊丹万作氏が、『映画春秋』創刊号(昭和二十一年八月)に「戦争責任者の問題」と題して書いた文章より引用する。
引用始め
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だまされたものの罪は、ただ単にだまされたという事実そのものの中にあるのではなく、あんなにも造作なくだまされるほど批判力を失い、思考力を失い、信念を失い、家畜的な盲従に自己の一切をゆだねるようになってしまっていた国民全体の文化的無気力、無自覚、無反省、無責任などが悪の本体なのである。
(中略)
そして、このことはまた、同時にあのような専横と圧制を支配者にゆるした国民の奴隷根性とも密接につながるものである。
それは少なくとも個人の尊厳の冒涜、すなわち自我の放棄であり人間性への裏切りである。また、悪を憤る精神の欠如であり、道徳的無感覚である。ひいては国民大衆、すなわち被支配階級全体に対する不忠である。
(中略)
『だまされていた』という一語の持つ便利な効果におぼれて、一切の責任から解放された気でいる多くの人々の安易きわまる態度を見るとき、私は日本国民の将来に対して暗澹たる不安を感ぜざるを得ない。
『だまされていた』といつて平気でいられる国民なら、おそらく今後も何度でもだまされるだろう。いや、現在でもすでに別のうそによってだまされ始めているにちがいないのである。
一度だまされたら、二度とだまされまいとする真剣な自己反省と努力がなければ人間が進歩するわけはない。
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引用終わり
2017年10月22日の国政選挙では、自民党とその補完勢力をいかに減らすかがカギであったが、自民党が大勝した。小池百合子氏や前原誠司氏の策略により、野党が分裂し共闘できなかったのが原因だ。希望の党や維新という自民党補完勢力が野党のフリをしていたのを国民は見抜けなかった。悪人どもにこれ以上ダマされている余裕はないはずだが、またもやダマされてしまった。
日本の有権者は、もっともっと痛い目に遭わないと目を覚まさないようである。
以上