はじめに、アムネスティ・インターナショナルという組織について簡単に説明します。以下、ウィキペディアからの引用です。
引用始め
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アムネスティ・インターナショナル(Amnesty International)は、国際連合との協議資格をもつ、国際的影響力の大きい非政府組織(NGO)である。国際法に則って、死刑の廃止、人権擁護、難民救済など良心の囚人を救済、支援する活動を行っている。
アムネスティは多様な情報源を複合的に活用した高度な情報収集分析能力を持つことでも知られている。人権侵害の疑いのある国に対しては現地での調査を申し入れるのが常である。相手国が人権侵害の事実を否認し調査団の受け入れを拒否した場合でも、国外に逃れ出た難民に対する聞き取り調査などの代替手段を有効に活用して詳細な実態調査報告書を作成している。
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引用終り
アムネスティインターナショナルは、世界各国の人権状況に関して毎年報告書を発表しています。最新の調査報告書が、2016年2月23日にリリースされました。全文は、下記リンク先からダウンロードできます。
「Amnesty International Report 2015/16: The state of the world’s human rights」
今回は、上記報告書の中から、日本の人権状況に関する部分を引用いたします。私が邦訳したものを以下に記します。
引用始め
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戦争放棄を謳った平和憲法を持ちながら、安倍総理は2015年7月、自衛隊による集団的自演権行使を可能とする法制を衆議院で強引に可決させた。法案に反対する国民のデモは、数十年の中で最大級のものであった。
日本政府と韓国政府は、戦前戦中の性奴隷システムについて合意した。しかし内容は、生き残った犠牲者により大きな批判にさらされた。
死刑執行は、依然として続いている。
民族的少数派に対する差別:
国連人種差別撤廃委員会が2014年に勧告を出したにも関わらず、自公政権は人種差別禁止の法案に反対した。それでも国会議員団は、人種差別禁止政策を政府に義務付ける法案を提出した。法案の審議は2015年8月に始まった。在日韓国人に対するデモが増加したこともあり、大阪などいくつかの市は、外国人や少数派に対するヘイトスピーチを取り締まる条例を成立させた。
難民と亡命者:
難民申請の手続きに関しては依然として問題点が多い。2014年には5000人以上の申請者があったが、法務省が難民認定したのは11人に過ぎない。不適格申請を認定手続きから除外するため、法務省は2015年6月に事前チェック制度導入の計画を発表した。就業目的の亡命申請者が増えていると主張している。認定基準は曖昧だ。大阪地裁がスリランカ人男性の難民申請に対して主張を認める判決を下したにも関わらず、法務省が認定拒否を続けたため、その男性は別の訴訟を2015年8月に起こしている。これは、前代未聞のことだ。
移民労働者の権利:
日本政府は相変わらず移民に対して厳しい制限をしており、より多くの外国人労働者を受け入れるために、現在の技能実習制度を拡充する計画を発表した。その実習制度の下で雇用者による虐待が起きており、結果として、強制労働・効果的査察や労働者保護の欠如・その他の人権侵害を引き起こしている。2015年6月の時点で、約18万人の外国人が技能実習制度の下で働いている。
性的少数者の権利:
2015年4月に東京都渋谷区は、同性カップルを結婚と同等だと認める条例を日本で初めて成立させた。同性カップルとして登録されると、法的拘束力がない証明書が発行される。そして、病院での面会で親族扱いされ、賃貸契約で共同署名することが出来るようになる。東京都世田谷区でも同様のガイドラインを採択しており、東京以外のいくつかの市でも将来的に同性カップルを認める可能性がある。
女性に対する暴力:
戦後70周年を迎えたとき、安倍総理は哀悼の意を表明したが、謝罪については過去の総理大臣談話に言及しただけだった。戦前戦中に女性たちが日本軍により強制的に性奴隷にされたシステムについて、深い責任を負っていることを日本は認め、2015年12月に韓国政府と合意に至った。その合意内容は非難にさらされた。生き残った被害者たちの視点や要望が取り入れられていないし、交渉の過程で彼女らは蚊帳の外に置かれていたからだ。
言論の自由:
2014年12月に施行された特定秘密保護法は、政府の情報を入手する権利を侵害しかねない条項を含んでいる。この法律に対する懸念は以下の3つだ。政府は明確な基準も無しに秘密指定を行える。秘密指定を監査する国会権限があまりにも弱い。そして、秘密指定情報にアクセスし報道した記者が投獄される危険がある。
内部告発者を保護し、法律の乱用を効果的に防止する独立監査機関を、日本政府は2015年末の時点で設置していない。
司法制度:
警察・検察の取り調べ記録を完全に可視化するための法案が、2015年8月に衆議院を通過した。しかし、2015年末の時点で参議院での審議は始まっていない。この法案は、裁判員裁判の対象となる重大犯罪のみに適用され、それは全体の約2%だけである。また、この法案は代用監獄制度の廃止や改善に言及していない。代用監獄制度により、警察は起訴前に容疑者を最大23日間拘留でき、それが、取り調べでの拷問他ひどい扱いを誘発し、自白の強要につながっている。
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引用終り
最後に:
以上に述べたような内容は日本の暗部に相当しますので、政権の御機嫌取りに熱心なマスコミ(特に大手)の報道では、ほとんどお目にかからないと思います。是非この機会に、アムネスティインターナショナルという国際組織の冷静で客観的な視点を参考にして頂けたらと思います。
以上