皆さんは「愛国心」と聞いて何を連想するだろうか?素朴な郷土愛やノスタルジーをイメージすることが多いと思う。しかし、政治権力者が「愛国心」という言葉を使う場合、それは国家に対する忠誠心を意味する。「疑問なんて持たなくていいから大人しく従え」というのが隠れた本音である。いつの時代でも、独裁者が欲しがるのは忠実な下僕に他ならない。
戦前の日本では愛国心教育が盛んに行われていた。政府の垂れ流す美辞麗句やプロパガンダの裏で行われていたのは近隣諸国への侵略戦争であり、人権の蹂躙であり、真の目的は財閥(三井・三菱・住友など・・)の金儲けであった。愛国心を強要された国民は、疑問も持たずに徴兵で命を差し出し、遠い異国の果てで無駄死にするケースがほとんどであった。
犠牲となった日本人の数は300万人以上といわれるが、日本人が殺した外国人の数は桁が一つ多い(中国人だけで千数百万人)。もはや、正確な数を把握する術がない。歴史的大罪である。
あなたは、殺したり殺されたりするのが自分や自分の家族でも、喜んで政府を支持するだろうか?戦後、「お国のために」という言葉を忌み嫌い、日の丸・君が代を拒否する人たちが表れても非難できるだろうか?「愛国心」という言葉に眉をひそめるのは、歴史を踏まえた健全な態度とはいえまいか?
しかし、2006年12月22日に、第1次安倍内閣により教育基本法が改正され、教育目標の一つとして、「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。」という条文が盛り込まれ、愛国心教育が推進されるようになった。日の丸・君が代を拒否する人たちを容赦なく処罰するなど、歴史修正主義者たちの台頭は目を覆うばかりである。日本の歴史教育のお粗末さが原因である。
「愛国心」に苦しめられてきたのは、日本人だけではない。人類の長い歴史の中で、多くの国の人々が苦しんできた。「愛国心」という言葉のいかがわしさは、歴史上の偉人たちによって説明されている。以下に例を示す。
***********************
「愛国心とは、ならず者達の最後の避難所である」
(サミュエル・ジョンソン/イギリスの文学者)
「今日の大きな悪魔は愛国心、愛国心が大戦をもたらすのだ」
(チャールズ・スペンサー・チャーリー・チャップリン/イギリスの映画俳優、映画監督、コメディアン)
「ナショナリズムは小児病である。それは国家の麻疹(はしか)である」
(アルベルト・アインシュタイン/ドイツ生まれのユダヤ人理論物理学者)
「不思議なことだ、いつの時代においても悪人は自分の下劣な行為に、 宗教や道徳や愛国心のために奉仕したのだという仮面を着せようとつとめている」
(クリスティアン・ヨハン・ハインリヒ・ハイネ/ドイツの詩人、作家、ジャーナリスト)
「愛国心を持つなら地球に持て。魂を国家に管理させるな!」
(ジェームズ・マーシャル・ヘンドリックス/アメリカ合衆国のミュージシャン、ギタリスト、歌手)
「最高の愛国心とは、あなたの国が不名誉で、悪辣で、馬鹿みたいなことをしている時に、それを言ってやることだ。」
(ジュリアン・バーンズ/イギリスの作家)
「愛国心とは喜んで人を殺し、つまらぬことのために死ぬことだ」
「愛国者は常に祖国のために死ぬことを口にするが、祖国のために殺すことについては決して語らない。」
(バートランド・ラッセル /イギリスの哲学者、論理学者、数学者、貴族)
「恐怖心や愛国心によって人を殺すのは、怒りや貪欲によって人を殺すのとまったく同じく悪い」
(ヘンリー・ミラー /アメリカの小説家)
「愛国心という卵から、戦争が孵化する」
(ギ・ド・モーパッサン/フランスの自然主義の作家、劇作家、詩人)
「人類から愛国心を叩き出してしまわないかぎり、あなたがたは決して平穏な世界を持たないだろう」
「愛国心とは、自分がそこに生まれたという理由で、その国が他より優っているとする信念のことだ。」
(ジョージ・バーナード・ショウ /アイルランド出身の劇作家)
「愛国心とは、道理を超えた自国崇拝である。」
(ジョージ・ジーン・ネーサン/米国の演劇評論家、雑誌編集者)
***********************
「愛国心」は決して道徳的なものではないし、あなたを救うものでもないことがお分かり頂けたと思う。忠実な下僕は、悪徳なのである。
「日本という国は、そういう特権階級の人たちが楽しくしあわせに暮らせるように、あなた達凡人が安い給料で働き、高い税金を払うことで成り立っているんです。
そういう特権階級の人達が、あなた達に何を望んでいるか知っている?
今のままずーっと愚かでいてくれれば良いの。世の中の仕組みや、不公平なんかに気付かず、テレビや漫画でもぼーっと見て何も考えず、会社に入ったら、上司の言うことを大人しく聞いて、戦争が始まったら真っ先に危険な所に行って戦ってくれば良いの。」
以上