どんな組織であっても、トップが変わることで方針や風土がガラリと変化することは珍しくありません。ある組織を思い通りにコントロールしたかったら、トップに座る人間と仲良くし、意のままに操るのが一番確実です。
安倍官邸の人事は、前例や良識を無視した露骨なものがとても多いです。以下に例を挙げましょう。
1)内閣法制局長官の人事
内閣が国会に提出する新規法案を、閣議決定に先立って現行法の見地から問題がないかを審査するのが内閣法制局の仕事です。戦後の歴代内閣で憲法解釈の責任も担っており、総理大臣ですら介入を控え、独立性を維持してきました。
しかし、安倍総理は人事権を悪用し、集団的自衛権行使容認に積極的な外務省出身の小松一郎氏を起用しました。前代未聞のことであり、まさかこんなことをするなんて誰も予想できませんでした。
2)NHKの経営委員長人事
NHKの経営委員長はいわゆるCEOに当たりますが、この委員長職に、安倍官邸の身内ともいえるJR九州の石原進相談役が据えられました。
石原氏は、悪名高きイエスマンの籾井氏をNHK会長に推した人物であり、安倍官邸とはきわめて太いパイプを持ちます。
麻生太郎財務大臣の弟である泰氏は、福岡県で九州経済連合会の会長を務めていますが、この麻生泰氏をがっちりサポートしているのが石原氏です。従って、麻生太郎財務相とは蜜月関係にあります。また、鹿児島県の川内原発の早期再稼働を要請し、安倍総理に「川内はなんとかします」と言わせたのは石原氏です。新しいNHKの経営委員長の石原氏は、福島原発事故から何も学ぶことができない人間だということです。
NHKの石原経営委員長は、NHK会長の人事にも強い影響力を発揮できます。きっと、籾井さん以上のイエスマンを連れてくるに違いありません。
3)宮内庁の長官・次長人事
宮内庁長官の風岡典之氏が9月26日付で退任し、山本信一郎次長が長官に昇格、後任の次長には西村泰彦内閣危機管理監が就任することになりました。宮内庁の人事異動は春に行われるのが通例ですが、来年春まで待てずに9月に急遽実施した理由は何でしょうか?
安倍官邸や日本会議にとって、天皇陛下は国民を支配するための道具に過ぎません。現人神や国家元首だと国民に勘違いさせ、作られた権威により国民を思うようにコントロールしたいのです。天皇が年老いたからといって生前に退位されてしまっては普通の人間と同じになってしまい、「権威」が損なわれます。また、生前退位をするには皇室典範の改正が必要であり、国会審議にかなり時間をかけねばなりません。安倍総理の悲願である憲法改悪のスケジュールが大幅に狂ってしまうので都合が悪いのです。
「高齢で体力が低下し、公務上のミスも目立ってきた。死んでから天皇を変える今の手順だと、様々な儀式が残された皇室の負担となる。また、死去後に自粛ムードが蔓延し、国民生活や社会の長期停滞や混乱を招くことは確実だ。生前退位して、今の皇太子を天皇にした方が、国家・国民の利益にかなう。」
上記は天皇陛下のお気持ちを要約したものですが、残された家族や国民のことを第一に考えておられるのが分かります。しかし、エゴの塊と化した安倍総理にとって、このようなお気持ち表明は誠に都合が悪いものであり、記者会見での不機嫌な表情・態度が印象的でした。
天皇のお気持ち表明阻止を宮内庁に期待していたのにそれを果たせず、NHKへの情報リークも不満だったようです。宮内庁次長には、事務次官経験者が各省の顧問などを経て就任する例が多いのですが、警察庁出身の西村泰彦内閣危機管理監を官邸から直接送り込むのは極めて異例です。今後は、宮内庁新次長の西村氏によって、天皇陛下は最低限の意思表示もままならなくなる可能性があります。
最後に:
繰り返しになりますが、安倍官邸の人事は、前例や良識を無視した露骨なものがとても多いですね。結果として、民主主義や国民の生活が犠牲になります。さらには、天皇陛下のお気持ちですら平気で踏みにじっています。
時代錯誤の戦前回帰願望に取り憑かれた安倍総理。アメリカの手下としてプチ覇権主義の妄想に取り憑かれている安倍総理。このような人間が内閣の最高責任者であり続ければ、社会は確実に劣化します。賢明なる日本国民がこのことに気付くのはいつのことでしょうか?
参考リンク:
「安保法制成立までに用いられてきた反則技、劣悪政治家たちの暴言、及び、伊藤真弁護士の親切解説を紹介」
「官邸の“NHK支配”ますます加速 安倍シンパが経営委員長に」
以上