まずは次の、鹿児島県志布志市が制作したビデオを観て頂きたい(約2分)。ふるさと納税返礼品のウナギをPRしているらしい。
ビデオ中、男性のナレーターは次のセリフを吐いている。彼女とは、人間の姿をしたウナギ少女のことを指す。
「彼女と出会ったのは、一年前の夏だった。その日から、彼女との不思議な暮らしが始まった。僕は決めた。彼女のために、できる限りのことをしてやると。彼女が触れる水は、天然の地下水だけにした。いつも伸び伸び過ごせるようにし、おいしいものをお腹一杯食べさせ、ぐっすりと眠れるようにした。また、次の夏が来た。そして、彼女は去って行った。その美しい人の名は、うな子。志布志の豊かな自然で育ちました。」
ビデオ中の女性には、「養って」というセリフを言わせている。鹿児島県の人たちには、女性は男性に飼われるペットと同じ、という意識があるのだろうか?女性差別意識を隠そうともしない、非常に大胆なビデオである。挑発的であり、炎上商法を狙ったのだろうか?当然だが、あまりにも多くの非難が寄せられたため、志布志市のホームページからはすでに削除されている。
ジャパンタイムズの取材に対して、志布志市の職員は、次のような言い訳をしている。
「地域の特産物であるウナギを、分かりやすく紹介する意図があった。」
「郷愁や芸術を感じさせる、普通とは異なるビデオにしたかった。」
このビデオを観て郷愁や芸術性を感じる人間はいないだろう。言葉の意味を理解して使っているのだろうか?
結果として、地域の特産物であるウナギをおとしめたばかりか、ウナギの養殖業者の人たちも侮辱する結果となった。あからさまに意思表示をしなくても、世の多くの女性の反発を買ったことは間違いない。ウナギを演じたのは、佐々木萌詠さんという二十歳の女優さんだそうだが、仕事とはいえ、このような低劣なビデオに出演するはめになったことに同情する。
こういうあからさまな女性差別にまみれた表現を、公的な組織が普通に使うようになっている現状は異常である。「女は性的に搾取されて当然だし、また我々が心地よく搾取できるように男への愛嬌と媚を身につけるべきである。」というメッセージが、社会を支配する男性側から毎日絶え間無く繰り返し発せられている。日本社会全体が、精神的奴隷状態を女性に強要することで成り立っている。
近年こうした表現の異常さに社会は少しづつ慣らされ、公的機関さえも建前をかなぐり捨てるようになった。こうした性差別が子供達の目に付く場所にも溢れている。多くの子供達はこうした歪んだ価値観にさらされ続け、成長する過程で自尊心をあきらめ、性差別に順応し服従する大人へ「成長」する。これは、大昔から繰り返されてきた負のサイクルだ。
この「うな子ビデオ」は特殊な事例ではなく、日本社会の男尊女卑体質を象徴するものだ。このような構造に多くの人が気付かない限り、女性の社会的地位向上など望むべくもないだろう。
参考リンク:
「Amid charges of sexism, city in Kyushu pulls video promoting local eels」
以上