はじめに
ご存じの通り、日本の人口は2011年頃から減少に転じ、その勢いは加速しています。
「〇十年後には、日本の人口は〇千万人・・」という推計がニュースを賑わせていますが、そのいずれもが楽観的なものです。
「子供を産む機械(女)が頑張らないからだ」
「女性が早く結婚しないからだ」
戦前回帰願望が強い老害政治家(主に自民党)は口汚いコメントをしますが、女性に責任を押し付けていいのでしょうか?
本当の原因は何か?
根本的な対策は何か?
多くの国民はよく分からないまま、閉塞感に悩まされていると思います。
この記事では、民族存亡の危機ともいえる人口減少問題について、その原因と対策を考察します。
人口減少の実態
下記グラフは、2011年頃から減少し始めた日本の総人口を示します。
原因は、出生数の急速な減少と高齢化による死亡者の増加です。
実際、2022年度の出生数は約77万人であり、政府の楽観的予測を大きく裏切り続けている状態が続いています(下図参照)。
一見平和に思える日本社会で何が起こっているのか?
その原因を探りました。
人口減少の原因
分析に用いるデータ
「政府統計の総合窓口」であるe-Statに掲載されてあるデータをダウンロードし、一部を加工して下表を得ました。
年 | 人口増減率(前年比) | 実質賃金指数 | 国民負担率(%) | 初婚年齢:男 | 初婚年齢:女 |
1971年 | 0.46% | 2,623 | 25.2 | 26.8 | 24.2 |
1972年 | 2.33% | 2,907 | 25.6 | 26.7 | 24.2 |
1973年 | 1.40% | 3,167 | 27.4 | 26.7 | 24.3 |
1974年 | 1.35% | 3,222 | 28.3 | 26.8 | 24.5 |
1975年 | 1.24% | 3,294 | 25.7 | 27 | 24.7 |
1976年 | 1.03% | 3,400 | 26.6 | 27.2 | 24.9 |
1977年 | 0.95% | 3,453 | 27.3 | 27.4 | 25 |
1978年 | 0.90% | 3,566 | 29.2 | 27.6 | 25.1 |
1979年 | 0.84% | 3,630 | 30.2 | 27.7 | 25.2 |
1980年 | 0.78% | 3,569 | 30.5 | 27.8 | 25.2 |
1981年 | 0.72% | 3,601 | 32.2 | 27.9 | 25.3 |
1982年 | 0.70% | 3,632 | 32.8 | 28 | 25.3 |
1983年 | 0.68% | 3,670 | 33.1 | 28 | 25.4 |
1984年 | 0.64% | 3,750 | 33.7 | 28.1 | 25.4 |
1985年 | 0.62% | 3,753 | 33.9 | 28.2 | 25.5 |
1986年 | 0.50% | 3,857 | 35.3 | 28.3 | 25.6 |
1987年 | 0.48% | 3,971 | 36.8 | 28.4 | 25.7 |
1988年 | 0.41% | 4,009 | 37.1 | 28.4 | 25.8 |
1989年 | 0.37% | 4,104 | 37.9 | 28.5 | 25.8 |
1990年 | 0.33% | 4,127 | 38.4 | 28.4 | 25.9 |
1991年 | 0.40% | 4,151 | 37.4 | 28.4 | 25.9 |
1992年 | 0.38% | 4,168 | 36.3 | 28.4 | 26 |
1993年 | 0.30% | 4,126 | 36.3 | 28.4 | 26.1 |
1994年 | 0.26% | 4,192 | 35.4 | 28.5 | 26.2 |
1995年 | 0.24% | 4,281 | 35.8 | 28.5 | 26.3 |
1996年 | 0.23% | 4,326 | 35.5 | 28.5 | 26.4 |
1997年 | 0.24% | 4,344 | 36.5 | 28.5 | 26.6 |
1998年 | 0.25% | 4,259 | 36.3 | 28.6 | 26.7 |
1999年 | 0.15% | 4,073 | 35.5 | 28.7 | 26.8 |
2000年 | 0.20% | 4,129 | 36 | 28.8 | 27 |
2001年 | 0.31% | 4,161 | 36.7 | 29 | 27.2 |
2002年 | 0.13% | 4,102 | 35.2 | 29.1 | 27.4 |
2003年 | 0.16% | 4,137 | 34.4 | 29.4 | 27.6 |
2004年 | 0.07% | 4,011 | 35 | 29.6 | 27.8 |
2005年 | -0.01% | 4,070 | 36.3 | 29.8 | 28 |
2006年 | 0.10% | 4,100 | 37.2 | 30 | 28.2 |
2007年 | 0.10% | 4,020 | 38.2 | 30.1 | 28.3 |
2008年 | 0.04% | 3,976 | 39.3 | 30.2 | 28.5 |
2009年 | -0.04% | 3,783 | 37.2 | 30.4 | 28.6 |
2010年 | 0.02% | 3,870 | 37.2 | 30.5 | 28.8 |
2011年 | -0.17% | 3,904 | 38.8 | 30.7 | 29 |
2012年 | -0.19% | 3,844 | 39.7 | 30.8 | 29.2 |
2013年 | -0.14% | 3,857 | 40 | 30.9 | 29.3 |
2014年 | -0.14% | 3,801 | 42.2 | 31.1 | 29.4 |
2015年 | -0.11% | 3,698 | 42.8 | 31.1 | 29.4 |
2016年 | -0.04% | 3,744 | 42.7 | 31.1 | 29.4 |
2017年 | -0.10% | 3,743 | 43.3 | 31.1 | 29.4 |
2018年 | -0.13% | 3,740 | 44.3 | 31.1 | 29.4 |
2019年 | -0.15% | 3,714 | 44.4 | 31.2 | 29.6 |
2020年 | -0.32% | 3,651 | 47.9 | 31 | 29.4 |
2021年 | -0.51% | 3,696 | 48 | 31 | 29.5 |
1971年~2021年の約50年の統計データとなります。
変数について:
目的変数は人口増減率(前年比)です。
人口増減数そのものではなく割合に注目したのは、人口全体から見た変化の勢いに着目したかったからです。
例えば減少数が百万人であっても、母数が一億人と一千万人では社会的影響は大きく異なりますからね。
説明変数、つまり、人口増減率に影響を与える要因としては、下記の4個を候補として挙げました。
- 実質賃金指数(現金給与総額を消費者物価指数(持ち家の帰属家賃を除く総合)で除したもの)
- 国民負担率(租税負担率と社会保障負担率を合計したもの)
- 初婚年齢(男性)
- 初婚年齢(女性)
法政大学教授である田中優子氏の「暮らしにくい社会の人口は減る」というコメントも参考にしています。
回帰分析による相関確認
エクセルの回帰分析ツールを用いて、各変数間の相関関係を調べました。
結論としては、人口増減率に大きな影響を与えるのは国民負担率と初婚年齢です。
上記グラフ中、R2という相関係数が0.5以上であれば統計上の相関関係がある(有意である)と判断できるのですが、いずれも0.7以上という高い数値を示しています。
国民負担率が初婚年齢に与える影響も調べました(下図)。
これも高い相関を示しており、国民負担が重くなれば若い世代の結婚年齢が遅くなる、ということが理解できます。
なお、実質賃金指数と人口増減率の間には相関関係が認められませんでした(下図:R2≒0.32)。
さらに、重回帰分析(複数の要因が人口増減率に与える影響分析)を試みましたが、有意な結果は得られませんでした。
回帰式による予測値と実績値の誤差
上述の通り、国民負担率と人口増減率の相関関係から回帰式を得ましたが、その回帰式(近似式)を使った人口増減率の予測値を実績値と比較しました(下図)。
上図を見ると、まあまあのシミュレーション精度ではないかと思います。
人口減少を防ぐための対策案
前章の回帰分析結果により、国民負担が重くなれば初婚年齢が上がり、結果として人口が減るという結論を得ました。
人口を増やすためには国民負担を減らすのが有効ですが、その具体策について考えてみました。
国民負担の軽減
国民負担率は、租税負担率と社会保障負担率を合計したものですが、この50年で国民負担率は約2倍となりました。
税金と言えば悪名高き消費税が思い浮かびますね。
低所得者への負担が重く、景気を冷やす大きな要因でもあります。
そもそも消費税は、経団連の要請により自民党が導入したものです。
特に輸出比率が多いグローバル企業にとっては、消費税率が高いほど輸出戻し税による恩恵が大きくなり、得をする仕組みなのです。
消費税は福祉目的という謳い文句がありましたが、実際には法人減税の財源として使われています。
体力のある大企業に応分負担をしてもらい庶民の負担を減らすためには、消費税率をゼロにすることが肝要です。
健康保険や年金保険料の支払い額は年々増すばかりですが、この負担軽減も必要です。
子育てする若い世代にとって一番の負担は教育費。
大学まで学費無料、18歳まで医療費無料、給食費無料など、他の先進国の施策を見習うのが良いと思います。
財源をどうするか?
国民負担軽減をするための代替財源ねん出をどうするか?
財源はいくらでもあります。例えば・・・
- 法人税のアップ(巨額の利益を出している企業がほとんど税金を払わずに済む仕組みを直す)
- 無駄遣いの削減(公共事業、原発、五輪など公金に群がるゾンビ企業が多すぎる)
- アメリカの言いなりで防衛費増額するのを止める(無駄な兵器購入は日本の国力を削ぐ)
- 海外へのバラマキを止める(首相の見栄やプライドのために国民の財産を棄損させてはならない。日本の大企業利権と紐づいているケースも多い)
- 特別会計の徹底的な見える化と精査(国民の公共料金がプールされ、無駄遣いの温床となっている)
- その他
特に自民党の岩盤支持層にとっては、これら既得権益は死守すべきものかもしれません。
しかし、生産性の低い無駄なことにお金を遣い続ければ、長い目で見て必ず国力が低下します。
「失われた30年」は偶然ではなく、必然的に起こった結果に過ぎません。
目先の自分たちの利益しか考えていない国賊たちに国の運営を任せていてはいけないのです。
まとめ
自民党が政権を担っているうちは、現在の政策が変わることはありません。
つまり、自滅への道を進むだけです。
自滅が嫌なら、政策を変えねばなりません。
特に、選挙権を放棄して怠惰の限りを尽くしている有権者をどうやって目覚めさせるかがカギでしょう。
実際、国政選挙では約5割の国民が棄権しており、自民党が得た票は約2割に過ぎません。
その2割だけで自民党が圧倒的議席を確保できているのは、小選挙区制と棄権者の多さが原因です。
社会制度を変える鍵は、有権者の意識の向上と投票率アップです。
本当の意味で愛国心があるかどうかが試されているのです。
この記事が、政治意識向上のキッカケになれば幸いです。
以上