随分昔ですが、私が勤め人として新人だった頃、工場で研修を受けました。その時に上司から言われたことを今でも覚えています。
「一番大切なのはケガをしないこと(安全)。二番目が物を壊さないこと。研修で学ぶのは三番目だ。」
何よりも安全が第一、という原則は工場だけの話ではありません。どの分野のどんな仕事についても徹底されねばなりません。これが原則です。危険を顧みず何らかの成果を上げたとしてもマイナスの評価をされるだけです。理由を説明する必要はないですね。安全第一なのです。
世間では当たり前のこの常識が通用しない分野が例外的に存在します。原子力村という閉鎖空間です。
2016年1月29日、福井県の高浜原発が再稼働しましたが、事故が起きた時に甲状腺被曝を防ぐため服用する安定ヨウ素剤が用意されました。原発から5km圏内の住民に対しては事前配布を行い、30km圏内では備蓄されています。
兵庫県篠山市は高浜原発から約45km離れていますが、事故時の放射性物質拡散シミュレーション結果が国際原子力機関(IAEA)の基準線量を上回っているため、31日から安定ヨウ素剤の配布が開始されました。ただし、3歳以上の希望者のみです。3歳未満の乳幼児は錠剤服用が認められていないため、「事故後に」液剤を調製して配布・服用するのです。
原発は稼働させなくても危険ですが、稼働させたらもっと危険だし、いつかは事故が起こるということを前提にして、高浜原発の周辺住人に対して地方自治体がヨウ素剤を配布しているのです。公的な正式判断という事実はとても重いです。「原発が再稼働したら事故が起こり放射性物質が放出される可能性がある。その時はヨウ素剤を飲んで甲状腺の被爆を防いでください」という公的な意思表示なのです。
ヨウ素剤は原発事故が起きたら直ぐに服用しなければなりません。被ばくした後では意味がありません。服用してから一日程度しか効果が持続しないので飲むのが早過ぎてもダメです。原発周囲の住民には事故を含めて原発の詳細情報がリアルタイムで提供されるんでしょうか?福島原発事故の時と同じく、住人への連絡が後回しにされるならば、ヨウ素剤を配布しても無意味です。
参考リンク:
【天下の悪法!】特定秘密保護法の問題点まとめ
また、原発の事故が起こった時に放出される放射性物質はヨウ素だけではありません。セシウム、ストロンチウム、プルトニウムなど、非常にたくさんの種類があります。「事故時はヨウ素剤を服用して、せめて甲状腺への被ばくだけでも防いでくださいね。」と言われて、住民の皆さんは安心なんですかね?半径5km圏内というのは誰が決めたんですか?30km圏内は備蓄だけで、事前配布をしなくていいんですか?拡散シミュレーションは予測に過ぎないので外れる可能性もありますが、大丈夫なんですか?100km圏までヨウ素剤配布範囲を広げなくても大丈夫なんですか?予算の都合で線引きしているんじゃないですか?等々・・・・疑問は、いくらでも出てきます。
最期に:
繰り返しになりますが、危険だと分かっていて作業を進めるのは一般社会ではあり得ない異常なことです。その当たり前の常識が通用せず、強引な再稼働を推進する原子力村は異常な世界です。事故発生を前提にして周辺住民へヨウ素剤を配布する行為は、原子力村の異常性を象徴していると思います。
参考リンク:
【巨大な利権集団】原子力村という名の組織を具体的に知ろう!
兵庫・篠山、異例のヨウ素剤配布 高浜原発30キロ圏外
以上