実質賃金とは、労働者が受け取った賃金が、実際の社会において、どれだけの物・サービス購入に使えるかを示す数字です。賃金から消費者物価指数を除することで求められます。貨幣で受け取った賃金そのもののことを名目賃金といいます。
例えば、労働者の給与が1割増加した場合、同時に物価も1割上昇しているならば、労働者の購入力は変わらず、実質賃金は変わりません。賃金が変化しなくとも、経済状況などにより物価が上昇したり、賃金上昇率より物価上昇率が高い場合は実質賃金は下落します。
庶民にとって、実質賃金は生活実感を表すのに適した数字です。安倍総理自身が自画自賛するアベノミクスの成果を計る有効な指標と言えましょう。実際は、自画自賛するほど実質賃金は上がっていません。
実質可処分所得というデータを見ても、生活の苦しさは一目瞭然です。
会社員の手取りはだいぶ減りました。皆さん、気付いてましたか?
年収の平均値というのは、一部のとんでもない富裕層が全体を押し上げるので、あまり当てになる数字ではありません。それよりも世帯年収の中央値に注目すべきでしょう。例えば、全世帯数が100だと仮定した場合は、年収を大きい順から小さい順に並べて、50番目の人の年収が中央値だと思ってください。この年収中央値は、貧富の格差が拡がり一部の者が富を独占する状態になるほど、小さくなります。安倍政権の広報にいそしむNHKですら、下図のような報道をしています。
随分と格差が拡がり、生活の苦しい人が増えたことが分かります。これだけ生活が苦しくなると、貯金をする余裕は無くなってきます。実際、貯蓄ゼロの世帯は多いのです。
アベノミクスで特に打撃を被ったのは20代の若者たちです。
これだけ余裕がなくなると、自分の日々の生活を成り立たせるだけで手一杯です。車も買えないし、結婚・子育ても難しくなり、少子高齢化の原因にもなりますね。
安倍さんは、選挙演説でアベノミクスの「成果」を懸命に訴えています。しかし、その言葉に心から納得している人はほとんどいません。当たり前です。しかし、疑うことを知らない多くの日本人は、次のように考えることでしょう。「そうか。安倍さんのおかげで景気が良くなっているんだな。実際、株価も上がっているみたいだし・・・。自分は実感できないけど、きっと、他の人は豊かになっているんだな。自分はまだまだ努力が足りないな・・・。」
ダマされてはいけません。公的年金基金と日銀が国内の株式を大量に買い入れ、見せかけの官製相場により好景気を演出しているだけです。各企業に投入された公的マネーはトヨタ自動車1兆5308億円、三菱UFJフィナンシャルグループ1兆75億円、ソフトバンク・グループ9968億円など、めまいがするくらい巨額です。下図もご覧ください。
その結果、国内外の投資家は巨額の利益を得て、大企業経営者は保身できましたが、それだけのことです。内閣支持率を高くするための官製相場は、社会的には害悪でしかありません。
日銀による金融の緩和で人為的に物価上昇を引き上げる手法も同様に邪道であり、黒田総裁の任期中の目標達成は断念せざるを得ない状況になりました。
今回の記事で取り上げたような数字を見ない限り、アベノミクスの本当の姿は理解できません。権力者の搾取を許し続ければ、生活はますます苦しくなります。権力者が庶民のことを思いやって、そのうち何とかしてくれることはあり得ません。庶民が明確な意思表示をして要求する以外に、暮らしやすい社会は実現する方法はないのです。
ネトウヨの皆さんも含めて、もういい加減、ダマされるのはやめにしませんか?
以上