民進党の新しい代表に選ばれた蓮舫氏がきっかけで、二重国籍問題が注目されている。二重国籍の人は22歳になるまでにどちらか一方の国籍を選び、日本国籍を選んだ場合は、もう一方を放棄するよう努めよと法律では定められている。しかし政府の推計によると現在、二重国籍者は68万人もいる。つまり、日本国籍を選びながら、他国の国籍を放棄していない人が多いことを示している。
日本政府は二重国籍を認めていないが、法律上は努力義務であり、違法とは言えない。外国籍をはく奪するように他国へ強制する手立てはないし、本人が動くのを待つしかないのだ。法律上は、二重国籍者に対して法務省から警告文書が送られることになっている。しかし、日本政府は約68万人も存在することを知っていながら、過去数十年間、一度として警告文を送ったことがない。また、国籍法では、二重国籍者の日本国籍がはく奪される可能性について書かれているが、実際には、はく奪された事例はない。
要するに、現実に68万人も存在する二重国籍者を日本政府は黙認しているのだ。自民党も蓮舫氏の件では、ほとんど追及らしいことはしていない。しかし、蓮舫氏は政治家であり法律の趣旨を尊重する姿勢を見せねばならない。よって、二重国籍の事実を確認後、台湾国籍放棄の手続きを取ったという。
蓮舫氏以外の二重国籍者に対して、今後は厳しい態度を取るべきなのだろうか?実は官僚たちは及び腰である。手続きが複雑で時間がかかるというだけではない。2012年の法務省国会答弁によると、国籍選択をした人の約10%を調べたところ、約半数が日本国籍を放棄したという。68万人に対して強制的に単一国籍を迫ったら、何十万という単位で国民が減る可能性があるのだ。二重国籍者には若くて有能な納税者も多く、官僚は自分の首を絞めるようなことはできない。
いわゆるハーフと言われる人には二重国籍が多いが、彼らは豊富な海外生活体験を有することが珍しくない。英語などの外国語を不自由なく操り、偏狭な村社会の論理に染まっていないのが魅力だ。(もちろん、全員がそうだとは言わない)日本国内で純粋培養された秀才よりは、ディスカッション能力や起業家精神が高く、日本社会に活力を与えてくれるだろう。日本政府に黙認されている二重国籍は、当の本人たちにとっても、活動の幅が広がるなどメリットがある。両親の二つの国籍に愛着を持っている場合、一方を捨てろというのは酷だろう。
日本政府にとっても二重国籍保有者にとっても、あまり騒がずに現状の黙認状態を続けるのがベストのようだ。しかし、いつまでもグレーゾーンを続けていいのだろうか?
世界的な潮流は、複数国籍の保持を法的に認める方向だ。1960年から現在(2016年)に至る間、一つの国籍しか認めない国は半減し、全世界の約3割にまで低下している。その一方で二重国籍者は激増している。過去十年で倍増したというデータもある。国際交流がますます活発になっている以上、ハーフの数が増えるのも避けられない。
二重国籍の所有は黙認ではなく、法律で明確に認める方向で検討すべきだと考える。日本人を純血化しようと妄想している反動右翼がいるが、彼らの時代錯誤な発想など気にする価値はないのだ。
参考リンク:
「Japan’s dual citizens get a tacit nod but keep their status in the shadows」
「Renho and the ‘pure blood’ mythos」
以上