日本は自殺大国である。2015年の総数は政府の公式記録で約24000人だ。しかし、この記録を鵜呑みにしてはいけない。日本では本来すべき検死を怠っているケースが多く、自殺という事実が葬り去られていることが珍しくない。24000などという数値は氷山の一角だと認識すべきである。
さて、若い世代に占める死亡原因の第一位が自殺だというのをご存じだろうか?下図・表をご覧頂きたい。
日本は、若者にとって生きにくい社会になりつつあるのだろうか?このような状況は、国際的に見ても異常である。先進国の中で、若者の死因のトップが自殺という国は日本だけだ。下図は内閣府が作成したもので、G7各国における若者(15~34歳)の死亡率を比較したものだ。
他国では、若者は事故で死亡することが多いのだが、日本では自殺で亡くなることがとても多い。グラフ中の黒い棒を見れば、日本が突出していることが解るだろう。
テレビや新聞では若い学生の痛ましい自殺が取り上げられることがあるが、無数に存在する悲劇をたまたま目にしているだけである。自殺防止策を練るには原因を把握しなければならない。
・イジメが原因?→イジメた者を罰すればいいのか?
・新学期や夏休み明けなどに自殺が多い。→環境変化による心理的ストレス?
・教師が忙しすぎて目が行き届かない。→教師が受け持つ1クラス生徒数を、欧米並みの20人程度にすれば解決するか?
・その他
表層的な事象だけを見れば千差万別だろうが、根本的なところで共通しているのは、自殺者や自殺未遂者は孤独だということである。親や教師があてにならず、だれにも相談できないならば、他の手段が必要だ。気軽に話を聞いてもらえる団体組織を拡充し、その存在を周知することが有効だと考える。
すでに実践している民間団体があるが、政府によるサポートも欠かせない。こういう分野に税金を使うことをためらってはいけない。
ただし、こうした相談機関はあくまで対症療法に過ぎない。相談機関を増やせば自殺の根本原因が消えて無くなる訳ではない。学生も含めて多くの若者がまともな人間関係が築けず、社会的に孤立し、孤独感にさいなまされているのはナゼか?
一般的に、若い世代は権力も財力も乏しく、社会の中では比較的弱い層にあたる。社会システムの矛盾や欠陥は、弱いところへしわ寄せが行き易い。強い立場の者は見て見ぬふりをするのが普通だ。総理大臣ですら、目先の自分の損得にしか興味がない国が日本なのだ。
貧富の格差を拡大させる経済政策(アベノミクス)によって生活が棄損しても、政治には無関心。戦前回帰のファシズムが横行していることに危機感のかけらもなく、投票率は低いまま。忙しさに埋没し思考停止した大人たちが多数を占める社会は、間違いなく劣化する。そんな社会で、力の弱い若者たちが安心して暮らせる訳がないし、安定した親密な人間関係を築くことは困難だ。少子化に歯止めがかかることはあるまい。
自殺という最悪の選択している若者が多いという事実から何を読み取るべきか?テレビの悲報に接するたびに悲しむことは必要だが、それだけでは死者は浮かばれない。国民一人一人が立ち止まって、根本に目を向ける必要がある。
参考リンク:
「Preventing youth suicides」
以上