福島原発事故から約5年が経過し、日本のマスコミは事故関連報道をほとんど行わなくなりました。たまに報道しても、原子力マフィアたちの利権に影響しない、当たり障りが無いものばかりです。特に大手のメディアからは、現場の声・事実を吸い上げた調査報道を耳にすることがありません。既得権益者側の立場を代表していたのでは、ジャーナリズムが死んでいるのと同じです。安倍政権の報道への介入と、報道機関側の自主規制が響いていると思います。
国政選挙を控えて内閣支持率の数字に神経を尖らせている安倍政権。その安倍政権の御機嫌ばかりを気にして、権力の監視というジャーナリストの使命を投げ捨てた御用メディアたち。彼らの流す大本営発表を鵜呑みにしていたら、本当に殺されかねません。
実際、日本のメディアがやっているのは事実の隠ぺいや歪曲ばかりです。例を挙げましょう。
さて、ワシントンポストが、福島原発事故に関連して記事を書いているので紹介いたします。リンクを以下に記します。( )内は私の邦訳です。
「How is Fukushima’s cleanup going five years after its meltdown? Not so well.」(福島原発から5年:好転せぬ状況)
日本の大手メディアよりは役立ちそうな記事を書いています。上記リンクの記事要旨を以下に記します。
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チェルノブイリ以来の最悪事故で5年前に破壊された福島原発は、いまだに無残ながれき状態のままである。
事故対応のまずさから大きな批判を浴びた東京電力は、状況は大きく改善されたと主張している。原発周辺の凍土壁が完成し、廃炉作業にも取り掛かっている、とのことだ。
近い将来、住民は、原発周辺の市町村へ帰還することが許される予定だ。この5年間、富岡町や大熊町は、人っ子一人いないゴーストタウンのままであった。
福島原発近くの線量はとても高く、長居することはできない。防護服は必須だ。
大量に存在する放射性廃棄物をどのように処理すればいいのか見当が付かない。
大量に溜まっている汚染水から放射性物質を取り除くことはできるが、完全には無理である。原発周辺のタンクからは高濃度汚染水が幾度となく漏れ出し、それが海へ流れ込んでいる。東京電力は、理論的には20年の耐久性を持つ新しいタンクを建造中だ。
現在、福島原発周辺には75万トンの汚染水が1000個のタンクに保管されている。しかし、空きが少ないので、1~2年以内に95万トンまで保管能力を増やしたいとのことだ。現在、一日当たり、300トンずつ汚染水が増えている。
福島第一原発に地下水が流れ込むのを防ぐために巨大な凍土壁を建設したが、リスクが高いために稼働の見込みは立っていない。
大量の汚染水からトリチウムを取り除く方法は複数あるが、どれを選ぶべきか日本政府も検討中だ。
汚染された土壌を詰めた無数の黒い袋が、福島県内に野ざらしで置かれたままだ。2015年の洪水で700袋以上が流されてしまった。日本政府は、汚染土の99.8%は再利用できると主張している。
最大の問題は、メルトダウンした核燃料をどのように取り出すかだ。線量が高いため人が近づけず、どのような状態なのか確認することさえできない。作業は、何十年という単位で考えねばならない。
日本には、核廃棄物の最終処分場が存在しない。反対が根強く、地上には作れそうにないため、日本政府は、海底の下に埋める方法を検討している。福島県の海岸から8マイル離れた場所だ。海底下の廃棄場所と地上をトンネルでつなぐようにすれば国際法に違反することがないという。
しかし、地震が頻発する場所に核廃棄物を保管することに変わりはなく、反対する人は多い。
「いつかは放射性物質が海洋に漏れて、その結果、汚染された魚介類を国民が口にする恐れがある。」
「陸地がダメなら海底に埋めてしまえ、という発想は安易すぎる。」
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ワシントンポスト記事の要旨は以上です。記事からは、冷静に事実を述べている印象を受けます。実際に発生している健康被害にまでは言及していません。
もうすぐ、福島原発事故が発生してから5年目を迎えます。日本政府の「努力」の甲斐もあり、人々の記憶は風化しつつあります。しかし、風化させてはなりません。特に大手メディアには、勇気をもって事実の提示と問題提起をして頂きたく思います。
以上