1%の支配層による経済侵略を防ぐにはどうしたらいいか?

 著書「(株)貧困大国アメリカ」で有名なジャーナリストの堤未果氏。この書物をベースにして、堤氏が対談しているYouTubeビデオを以下に紹介します。

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 1%の支配層によってアメリカという国が疲弊し、他国が経済侵略されていること、さらに、それを防ぐ方法が述べられています。ややこしい内容をこれだけ解りやすく簡潔に表現していることに感銘を受けました。とても知的で教養のある方だと思います。

 50分弱のビデオですが、長さを感じさせません。是非、日本人全員に観て頂きたいですね。以下に、話の内容を記します。参考にしてください。

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1)アメリカの悲惨な現状
アメリカでは上位1%が国の方向性を左右してしまっている。
上位1%とは多国籍企業とかレベルの高い投資家とか、想像を超えたスーパーリッチのこと。
昔の独裁者と異なり、顔が見えにくいので厄介である。

ロックフェラー系列企業の一部 出典:Thinker 日本人が知らないニッポン

ロックフェラー系列企業の一部 出典:Thinker 日本人が知らないニッポン

今のアメリカは、独裁資本主義、もしくは、株主至上主義が完成しつつある。
例えば、農業・食品業界に関していえば、寡占化が進んでいる。
かつては中小零細も含めて多様性があったが、吸収合併により事業体の数が減っている。
ごく少数の会社により全体が支配される傾向が、様々な業界(マスコミ・教育・医療など)で強まっている。
様々なピラミッド構造のトップにいる企業がお互い連携している。
食に関していえば、効率重視で単一作物の大量生産が進み、輸出で利益を上げる構造になっている。家族経営の小さいところは淘汰された。
農業生産に関わる人たちのほとんどは、契約の下請け労働者に過ぎなくなっている。
牛は広大な敷地で放牧するのではなく、小さな工場へギュウギュウに押し込めた方が効率が良い。価格は安くなったが、病気の蔓延を防ぐために薬漬けにし、栄養価も大幅に落ちている。
このような手法が過去30年以上に渡って広がってきた。
ピラミッドの頂点にいる大企業に対してウォール街が投資をしている。儲けが大きいので、金融商品として成り立っているのだ。食の分野で先物取引がされることで需給バランスが崩れ、人の生死にかかわる問題が頻発している。
この30年、企業の合併が進んだが、そのたびにウォール街は手数料で儲けてきた。
教育でもチャータースクールが投資商品であり、刑務所も投資商品になっている。
法改正で規制緩和が進んだため、公共性の高いものまで商品化が進んでしまった。
銀行が預金で投資をすることが許され、教育も消費者保護法から外された。
アメリカは国家自体が株式会社化している。
企業がお金の力を行使して、政治家に法律を変えさせている実態がある。企業は世論の反対を避けるためにお金でマスコミを買収する。企業の政治家に対する献金額は莫大であり、上限が無くなっている。政治をお金で買うことが出来るのだ。一般市民は太刀打ちが出来ない。
多額の政治献金をもらわないと選挙で当選できなくなっており、その献金の見返りとして政治家が法改正をしている。法律を変えられるということは、その国を動かせるということだ。
オバマ大統領は、軍需産業を儲けさせるため、イラクやアフガニスタンへの派兵を増やした。
大統領選に何千億円ものお金が動いており、選挙自体が投資商品と化している。
共和党と民主党の両方に献金し、どちらが勝っても法改正してもらえるので、その後の見返りはとてつもなく大きい。効率の良い投資商品なのだ。
アメリカのマスコミは、軍需産業やエンターテインメント業界など少数の企業に支配されている。その結果、選挙前でも政策の内容をしっかり論じたニュースは1%程度になってしまった。報道の中立性は大きく損なわれ、まともなプロの新聞記者の失業率が上昇した。99%の国民にとって、必要な情報を入手する手段が奪われている。

2)アメリカの後追いをしている日本。有権者ができることとは?
日本も、独裁資本主義、もしくは、株主至上主義の悪影響を受けている。1%の人間が、日本のうま味をターゲットにしている。
TPPが騒がれているが、すでに日本は、遺伝子組み換え食品の輸入大国である。官僚たちがアメリカの言うことを聞いて、様々な規制緩和に励んでいる。
TPPに気を取られている間に、ちょこちょこ規制緩和が進められているのだが、国民は気付いていない。
選挙で自民党が圧勝すると我々有権者は無力感に襲われるが、その無力感こそが最大の敵である。1%の権力者にとって、無力感を感じた国民は操作しやすい。法律を変えようとしても抵抗しないからだ。
株式会社は、株主の意向に沿って動くものなのでモラルを期待することはできない。企業活動は、法律の範囲内で企業の自由である。我々にできることは、法律を通して企業を規制することである。法律を変えられるのは国会議員だけだ。
企業に支配されるのを我々は嫌がっている一方で、政治に無関心なのはおかしい。選挙に行っても、選挙後に有権者は政治に無関心になるが、企業は選挙の後に情熱と信念をもって政治家に働きかけている。
政治を語るときは、万人に分かるようにかみ砕いた表現を使い、エンターテイメント性をもたせるべきだ。難しい言葉を使ってはいけない。商品を売るときと同じ手法を用いないと、多くの有権者に拡散していかない。企業的な手法を真似する必要がある。
企業と政治家の距離がとても近くなっているのならば、我々国民も政治家たちに積極的に働きかけねばならない。
法律が決定されるプロセスに関心を持つべきだ。現在は、審議もロクロクせずに、非常に独裁的な手法で決められることが多い。
危ない法律が通りそうになったら、騒いで皆に知らせて、選挙区の議員に伝えるのが有効だ。内容も知らずに、官僚からのレクチャーだけで賛成している議員は大勢いる。
1%側に比べて、99%側の情熱がまだまだ足りないのだ。

3)1%と闘うために多様性と主体性を身に付ける。
1%が支配しているテレビやネットではなくで、印刷された本を読むことが有効である。情報の咀嚼力や主体的に考える力が培われる。スマホのヘッドラインニュースを眺めていても情報に流されてしまう。日頃から本の活字を読んでいると、おかしなニュース映像を見て違和感を感じることができるようになる。
二次的なデジタルネット情報だけではなく、人と会って話をするとか、現場へ行って自分の目で確かめることが重要だ。現場にいると直感力が磨かれる。
本は検閲の手が伸びていない最後の聖域だ。ネットは便利だが、意外にも出版物の方が1%にとって都合の悪い情報が載っていることが多い。様々な本を読み比べて、自分のアンテナを磨くべき。
1%の支配層にとって一番都合がいいのは、多様性のない世界である。多様性を守るためには、働き方にしろ情報の集め方にしろ、原始的な手法を用いるようにすべきだ。
自分にとって望ましい未来を想像して、それが実現できる候補者を選挙で選ぶ。未来を自分で決める行為は究極の自由であり、人間だけに許されたものである。その自由を最大限に行使することで、各自の価値観が確立され、多様性のある社会につながる。
これは、権力者による洗脳やコントロールを防ぐための手段でもある。雰囲気に流されず、おかしいと思うことに突っ込みを入れることが出来るのだ。
日本人一人一人が突っ込み力を磨かなければ、(株)貧困大国日本が現実化してしまうだろう。
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