【マスコミがあまり報じない】安保法制5党合意における付帯決議の意外な効用

写真(安保関連法案の5党合意) 出典:産経新聞

写真(安保関連法案の5党合意) 出典:産経新聞

 与党(自民党・公明党)と野党3党(次世代の党、日本を元気にする会、新党改革)は参院平和安全法制特別委員会で安保関連法の付帯決議を採択し、政府は2015年9月19日、閣議決定を行い法的拘束力を持たせました。
与党は野党3党との修正協議を通じて野党の分断に成功しただけでなく、安保法制への世論の反発が強まる中、「強行採決」という悪印象を和らげる狙いがありました。
 
 この5党合意に参加した野党3党は、人数が少ない弱小政党であり、自民党出身者も多く含まれています。憲法違反の安保法案撤回を求めて抗議活動をしてきた者から見れば批判の対象になるのは避けられません。

 あまり注目されていませんが、最後の最後で追加された上記の付帯決議について確認したいと思います。内容は主に、以下の5点です。

(1)
 中東・ホルムズ海峡での機雷掃海など、日本への武力攻撃がなくても自衛隊を派遣する際に国会の「例外なき事前承認」を求める。

(2)
 自衛隊の活動の国会承認には「情報開示と丁寧な説明」をし、派遣後は180日ごとに国会に報告する。

(3)
 国会が自衛隊の撤退を決議したら、すぐに活動を中止する。

(4)
 他国軍の後方支援では、核兵器や生物兵器などの大量破壊兵器やクラスター弾、劣化ウラン弾の輸送はしない。

(5)
 自衛隊の出動は攻撃を受けた国の要請を前提とする。

 繰り返しますが、上記の付帯決議は最後に追加されたものです。従って、最初に安保法案が提出された時には、こんな当たり前の内容すら無かったことになります。随分と杜撰な法案だったんですね。

 何はともあれ、付帯決議がされたことで安保法制はかなり使い勝手が悪い物になり、傍若無人な暴走を抑制する効果が期待できます。アメリカ・経団連などの軍需産業は苦々しく思っているのではないでしょうか?サラリーマン化してイエスマンしか演じられなくなったけれども、内心は安保法案のことを懸念している自民党議員(少数?)は少し胸をなでおろしたと思います。

 日本会議に支配された自民党・政府幹部たちは、安保法制に足枷をはめる付帯決議を盛り込むことに、どうして同意したのでしょうか?繰り返しますが、野党3党(次世代の党、日本を元気にする会、新党改革)は弱小政党であり、圧倒的多数を誇る自民党ならば要求を拒否することも出来たはずです。

 譲歩せざるを得なかった理由は、やはり、下写真でしょう。

写真(安保法制への抗議) 出典:KYODO

写真(安保法制への抗議) 出典:KYODO

 日本の大手マスコミは政府の御用メディアなので、報道を抑制していましたが、多くの政治的無関心層を目覚めさせてしまったことに、権力者たちが恐れをなしたのです。政党支持率が下がり、今後の国政選挙で少数派に転落する危険性も考えたことでしょう。弱小3野党の要求でも飲まざるを得なかったのは、恐怖心のなせる技です。「選挙が終わった後は、国民は奴隷に過ぎない」などと諦める必要はないのです。

 違憲の安保法制は存在してはならないので撤回させるのは当然です。デモや集会などの抗議活動を行っても、撤回させるまでは至りませんでしたが、法律の使い勝手を悪くすることには成功しました。この点で、野党3党(次世代の党、日本を元気にする会、新党改革)の貢献も認めねばならないと思います。

 来年2016年の参議院選挙で今の野党が多数派となり、衆議院とのねじれ状態を実現できれば、自衛隊の派遣や武力行使を止めてしまうこともできます。安保法制に反対する勢力が衆議院でも多数を占めるようになれば、この法律を廃止し、さらに、集団的自衛権行使容認の「閣議決定」を撤回することも可能になります。

 ゆがめられた憲法解釈を以前の段階に戻すというところまでやらないと、本当の意味で立憲主義が回復したことにはなりません。

参考にしたYouTubeリンク:
[安保関連法]最後の最後にとても重要な付帯決議が付いていた(29分22秒)

以上

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