助け合いの共生社会を目指すべき理由

ヒヨコを助ける猫 出典:不明

ヒヨコを助ける猫 出典:不明

 弱肉強食の新自由主義にかぶれているせいか、過度の競争や成果主義を礼賛している人が増えているようです。この考え方は、会社組織や社会そのものを弱体化させ、人類を滅亡に追いやるものだという話を今回はします。

 多くの会社組織では競争が行われ、成績の良い者や上司へのへつらいが上手いものが抜擢されます。位が上がると給与が増え、肩書が付き、権限が与えられ、部下を管理し手足として使います。部下へ仕事を分配し、指示した方法通りに実行するよう命令し、期日に間に合うように監督するのが最も効率的だと考える人が多いですね。それが優秀な上司の在り方であり、有無を言わさぬ上意下達が理想なんだという信念を持っている人もいます。

 しかし、そのような仕事環境は様々な弊害を生み出します。

 ます、部下にとって創意工夫の余地がなくなるので仕事がつまらなくなります。意見を言っても聞いてもらえないので、無力感に襲われます。管理主義が度を過ぎると横の連帯が弱くなり、隣の席に座っている人の業務内容すら分からなくなります。問題を解決するには、グループや部署の壁を乗り越えて情報や知恵を共有し助け合わねばならないのですが、誰に何を聞いたらいいのかも分からなくなります。そういう問題解決の判断は上司がすればいいと言うかもしれませんが、たくさんの情報を集めているつもりでも、所詮一人の人間では視野が狭く、判断を誤り、結果として多額の損失を被ることも多いのです。

 さらには、余裕のないギスギスした組織では、教育係が消滅するので若い人が育たなくなります。新人が入ってきたら、複数の人間が状況に応じて臨機応変にサポートしなければなりませんが、余裕のない環境では対応不可能です。職場の善意や心の余裕が存在しなくなれば、配属前に長期間の研修をしても若者の退職率は減りません。人を育てられない組織は衰退し消滅する運命にあります。

 では、どうすればいいのでしょうか?

 上下関係による管理も大切ですが、それ以上に横同士の連帯や協力関係構築に力を入れるべきです。お互いを理解し、信頼関係を築くのは一日や二日では無理です。職務や部署の垣根を超えて、至る所で真面目な雑談を気楽に行える環境が必要です。会議では人の本音を引き出したり、親睦を深めるのは難しいのです。よく会社員を歯車に例える人がいますが、複数の歯車を回すのに必要な潤滑油に相当するのが雑談です。雑談という潤滑油があるからこそ社会的連帯が生まれ、相互に協力・助け合いが可能になるのです。社員一人一人の一挙手一投足を厳重に管理しようとすると、息が詰まってしまい相互交流どころではなくなります。孤立し精神的に消耗し、組織が機能不全を起こします。

 人間一人一人が持っている能力・知識などは、たかが知れています。あの人は優秀だと言っている場合も、実は一つの物差しと狭い見識で評価しているケースが多いのです。ある環境下で抜擢された一人の人物に依存して、残りの者はそれに従うだけの組織は脆いものです。平凡と思える人たちの集まりでも、一人一人が当事者意識や責任感を持って意見・知恵を出し合い、助け合える組織にはとても敵いません。「三人寄れば文殊の知恵」とはよく言ったものです。

 社会的連帯が強固な助け合い型組織がなぜ強いのでしょうか?常に発生し続ける様々な問題に対して、適切な判断をすることができるからです。ひとりのスーパースターがいたとしても、一人だけだとすぐにつまづきます。複数人の知恵や経験を出し合い、話し合えば、様々な困難に対して間違った判断をすることを防ぎやすくなります。

 ダーウィンという科学者は、「生き残る種は、最も強いものでもなく、又、最も知識の高いものでもない。環境の変化に最も適応できる種である。」、と言ったらしいですが、これは人間社会にも当てはまります。ある組織が、環境の変化に対して柔軟に、そして適切に対応するには、その組織に社会的連帯機能が備わっていなければなりません。これは目に見えないので、共感力が鍵となります。立派なホームページや組織図を作るだけではダメなのです。

 国の在り方も同じです。強者が悪知恵を働かせ弱者から搾取するシステムを作り、1%が99%を支配する社会は脆いものです。上意下達が徹底され、立場の弱い庶民がお互い分断されてしまっているからです。最近、アメリカの後を追うように日本でも格差が拡大していますが、弱肉強食型の社会は衰退する運命にあります。このままの路線で、日本人の人口は100年後にどのくらい減少するでしょうか?

 社会的連帯機能が強固な助け合い型の共生社会構築は簡単ではありません。強い指導者を望み、お任せ民主主義が蔓延している日本は、当事者意識が無い有権者の集まりとも言えます。政治・社会問題に関して自分の頭で考え判断し発言行動する人がもっともっと増えなければなりません。ある特定のリーダーに依存することがない、やかましい有権者たちが連帯し助け合うことが必要なのです。

参考リンク:「マーガレット・ヘファーナン: 職場の順位制をやめよう」

以上

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