【ネトウヨの研究】ネトウヨという社会病理、背景、原因、対策についての一考察

写真(在日韓国人に対して抗議する人々) 出典:ウォールストリートジャーナル

写真(在日韓国人に対して抗議する人々) 出典:ウォールストリートジャーナル

はじめに:

冒頭の写真は、「在日韓国人憎し」で集まった人たちです。

日本のマスコミは黙殺していますが、ウォールストリートジャーナルをはじめとした海外誌には取り上げられています。

彼らのように街に出て雄たけびを上げる人は、一部に過ぎません。

多数派は、インターネットのSNSで悪口雑言罵詈雑言の限りを尽くすネトウヨ(ネット右翼)です。

日本人の多くは、彼らネトウヨに共感し賛同し、そして「主張」拡散の手伝いをしています。

今回は、そのようなネトウヨさんたちについて論じたいと思います。

以下、ネトウヨの定義、具体的行動、背景・原因、対策について述べています。

参考にしてくださいね。

ネトウヨの特徴

ネトウヨの定義

ネトウヨ(=ネット右翼)とは何でしょうか?

ウィキペディアなどで調べると、「下記3条件すべてを満たす人」という定義が見られます。

  1. 韓国・中国いずれにも親しみを感じない
  2. 「政府関係者の靖国神社公式参拝」「憲法9条第1項改正」「憲法9条第2項改正」「小中学校の式典での国旗掲揚・国歌斉唱」「小中学校での愛国心教育」の5項目すべてに賛成
  3. 政治・社会問題についてネット上で書き込みや議論をした

ここまで厳密ではなく、もっと曖昧な意味合いで使われることも多いです。

一般的には下表のような定義が挙げられますが、ネトウヨという言葉の持つ意味は人により異なるというのが実態でしょう。

定義 内容
ネット右翼 インターネット上で右翼的な主張を展開する人々
日本のナショナリスト 日本の優越性や伝統的な価値観を主張する人々
日本の愛国者 日本に対する愛着や誇りを持ち、それを表明する人々
左翼・リベラルへの反発者 左翼・リベラル的な価値観や政策に反発する人々
反韓・反中・反在日外国人 韓国や中国、在日外国人に対して批判的な立場を取る人々
感情論的・排他的な主張を持つ人々 感情的な言動や排他的な主張を展開する人々
人種差別的な主張をする人々 人種差別的な主張を展開する人々
暴力的な言動をする人々 脅迫や暴力的な言動をする人々

ネトウヨの具体的言動の例:

長年に渡って首相を務めた自民党の安倍晋三氏。

彼は2022年7月、選挙での演説中に背後から銃撃され亡くなり、国葬という形でその「栄誉」を称えられることになりました。

少し前になりますが、2015年12月29日、安倍晋三総理のフェイスブックタイムラインを見てみました。

その当時、50万人以上がフォローしていました。

なかなかの人気者です。

その当時、安倍総理のフォロワー全員がネトウヨではありませんが、たくさんおられたことは事実ですので、彼らの本音を知るには便利な場所です。

発言内容の詳細を調べてみると、ネトウヨだからといって、何でもかんでも安倍総理に賛成している訳ではないことが判りました。

「従軍慰安婦」問題で韓国と合意をした直後にタイムラインへ書き込まれた人気コメントを調べました。

主張の要点を以下に箇条書きします。

  • 性奴隷説は捏造だ。韓国人は嘘つきだ。売春婦に対して税金を一円も使うな!
  • 日本には何の責任もなく、解決済みの案件だ。韓国の要求は突っぱねるべきだった。
  • 責任を認めたら、韓国は何度でも蒸し返してタカってくるぞ!日本外交の敗北だ!
  • 安倍さんには毅然とした態度を期待していたのに、失望した。もう支持しない!
  • 日本人の誇りと尊厳を日本政府は守る義務がある!
  • 靖国の英霊に泥を塗り、将来に深刻な禍根を残す行為だ!
  • 日本大使館前の売春婦像を韓国が撤去することはない。安倍総理が自分で行って引っこ抜いてください!

とてもたくさんの投稿がされているのですが、上記内容に集約されます。

村山談話を苦々しく思い、安保法制(=戦争法)に拍手喝采した熱心な安倍サポーターたちの素直な気持ちです。

老若男女関係なく様々な立場の人が自主的に参加して、熱心に自分の意見を述べているのが確認できました。

ネトウヨが蔓延する背景と原因:

「韓国は敵国だ。少しでも譲歩したら日本はおしまいだ・・・」という余裕の無さがネトウヨ発言の特徴です。

誠に残念ですが、ネトウヨの浅薄な言動は日本国民の多くから共感・支持を得ています。

共感・支持とは、積極的・意識的なものだけではありません。

消極的なものだったり、自分では気づかない無意識なものも多い。

陰湿な劣情を内包させ、ニュースを見た時に「憎たらしい韓国人め!」と思ったり、つぶやいたりする人は私の周りにもたくさんいます。

これが現実です。

このような現実はどのような背景から生まれているのでしょうか?

私が考えているのは以下の3つです。

  1. 他国に対する加害者としての歴史をまともに学校で教えられていないので、基本的な知識がない。自主的に書籍を購入し学び直す例は稀。マスコミの報道の仕方にも原因があり、加害事実・侵略事実という知識がないので、問題意識が生まれない。学校の歴史の授業で議論したことがなく、自分の頭で考える習慣が身に付かなかった。欠陥教育の被害者ともいえる。
  2. 自分が反省して謝罪するよりも、相手を悪者にして非難している方が楽なので、ついつい流されてしまう。
  3. 欧米(特にアメリカ)へのコンプレックスの代償行為として、アジア諸国を見下したいという気持ちが無意識下にある。
  4. 自民党の権力者が進んでアジア諸国を非難するので、その真似をしている。空気を読んで長いものに巻かれていると安心する。安倍晋三氏ですら、空気を壊すマネをすれば非難の的になる。

ネトウヨが引き起こす問題について

ネトウヨさん達の思考や発言の最大の欠点は「進歩性がない」ということです。

反動右翼の反動とは進歩の逆。

反動右翼の多くは戦前回帰願望を持っています。

未来に向かって進歩するため愚直な反省や努力を重ねることを拒否した人々・・

感情や本能の赴くまま安易な方向に流されていれば精神的には楽なのですが、進歩はありません。

そればかりか、思考力を失った奴隷国民は悪徳権力者の格好の餌食となります。

知識を選別する知恵がなく雰囲気に流されやすい国民をダマすは簡単だからです。

敵国感情を煽れば、権力者への批判をかわせます。

正論で権力者を批判する者を左翼呼ばわりすれば、国民同士を左右に分断できますから、権力者への批判をかわせます。

保身が最優先の悪徳権力者にとって、ネトウヨほど有難い存在はありません。

実際にはネトウヨのほとんどは権力者から搾取される立場なのに、それに気づかない。

生活が苦しくなっても、思考力がないネトウヨが出来ることは、弱者・少数派いじめか、仮想敵国への憎悪を膨らませるくらいです。

権力者に対しては批判の目を向けることがないネトウヨは、奴隷根性の塊。

悪徳政治家にとってネトウヨは、権力維持のための道具にすぎないのです。

歴史の失敗から学ばず、同じ過ちを繰り返す日本人。

都合の悪い事実から目をそらす努力を惜しまない日本人。

その結果自分を変えられず、低い生産性が温存され、世界の中で一人負けをしてきた30年。

日本の悲惨な現状の背景には、ネトウヨ的存在の蔓延という問題があります。

社会のネトウヨ化を抑制するための対策

ネトウヨという社会病理を抑制するためには、どうしたらいいか?

一朝一夕で解決できる問題ではありません。

老若男女、国民各界層にて、歴史を学ぶ姿勢を改めるのが一番の早道だと思います。

それでは、歴史問題に取り組むとき取るべき姿勢とは何でしょうか?

中国の旅 (朝日文庫)

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上の本は1971年、元朝日新聞記者の本多勝一氏が約40日かけて中国を取材した内容を記したものです。

朝日新聞、朝日ジャーナル、週刊朝日で連載され大反響を起こしました。

中国を取材した目的を本多氏は同書で次のように述べています。

「戦争中の中国における日本軍の行動を、中国側の視点から明らかにすることだった。それは、侵略された側としての中国人の「軍国主義日本」像を、具体的に知ることでもある。とくに日本軍による残虐行為に重点をおき、虐殺事件のあった現場を直接たずね歩いて、生き残った被害者たちの声を直接ききたいと考えた。」

戦後26年経った時点で、このような中国取材をした理由は何か?

本多勝一氏は同書の中で5個理由を挙げています。

以下私の要約です。

①中国への侵略行為に関して日本側が誠意ある言動・行動をとらなければ、日中国交を進展させることはできない。日本政府はもちろんだが、マスコミも侵略戦争の調査報道をしておらず、日本国民に知らせる努力を怠ってきた。

日本の侵略戦争によって中国人が千何百万人も殺された事実を一般の日本人は知らない。知っていたとしても、噂レベルの曖昧なイメージだ。この無知が、反動右翼勢力の跋扈を許す結果につながっていく。

➂ベトナム戦争での米軍の虐殺行為をアメリカ人ジャーナリストが報道していることに対して、日本人は立派だとほめている。他国のジャーナリストの行動に感嘆してばかりではなく、日本人も実践した方がよい。

④広島・長崎への原爆投下、東京大空襲などの告発・記録運動が盛んだが、これは被害者視点のものであり、加害者視点の記録が欠落している。ナチス・ドイツによる加害記録は日本国内にたくさん出回っているにも関わらず、旧日本軍の加害記録が存在しないのはおかしい

⑤自分の家族が殺されたり家が焼かれた事実を中国人たちは記憶している。その生々しい具体的風景を日本人が知れば、日本の軍国主義復活を警戒する中国側の気持ちを理解し易くなるだろう。虐殺した側の国民がその事実を知らないのは犯罪の上塗りだ。

本書「中国の旅」の目次を、以下に引用します。

・中国人の「軍国日本」像
・旧「住友」の工場にて
・矯正院
・人間の細菌実験と生体解剖
・撫順
・平頂山
・防疫惨殺事件
・鞍山と旧「久保田鋳造」
・万人坑
・蘆溝橋の周辺
・強制連行による日本への旅
・上海
・港
・「討伐」と「爆撃」の実態
・南京
・三光政策の村(注)

注)殺し尽くす、焼き尽くす、奪い尽くすことを「三光」という。

最後の「三光政策の村」での記述を一部引用します。

引用初め
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「石段を登っていたとき、ただならぬ気配にふりむいた。老人が三人、息をきらせて石段を登ってくる。私のところまでくると、その一人がいきなり両手を出して広げた。なにかを訴えようとするまなざしに、涙があふれている。広げた両手の指は、親指以外がみんな短く切れていた。『あの現場から脱出した一人です。猛火の中を逃げるとき、火傷をして指先を失いました』と、潘広林さんがいった。単用有さんは、そう通訳してから老人たちに事情をきいていたが、何もいわずに、私に背を向けて歩き出した。歩きながらハンカチを出して顔にあてた。単さんは泣いているのであった。」

「涙のおさまった単さんが、さっきの事情を説明した。あの老人たちは、日本から新聞記者が取材にきたことを知って、ここまでかけつけたのだった。31年前の、あのときのすべてを、どうかくわしく知ってほしい。自分たちも、なにか訴えたい。日本の人民に知らせてほしい。そんな、やむにやまれない思いで彼らはかけつけたのだと、単さんはいった。話す人が泣きながら語るときも、単さんは感情をけんめいに押さえて正確な通訳に努めるのが常だったが、この老人たちの心情には強く打たれて、どうしても涙をこらえきれなかったという。」
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引用終り

本書の最後に、高史明氏が解説文を書いています。一部を引用します。

引用初め
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「銃殺された死者、刺殺された死者、焼き殺され、あるいは生き埋めにされた死者、強姦されたうえ腹を切り裂かれた死者、銃剣で串刺され空中へ放り捨てられた赤ん坊の死者、そのほとんどが平和な村人であり、おとなしい労工であった。これらおびただしい数の死者こそが、生者をして、ありし日の出来事を語らしめているのである。(中略)その死者の前では、他のいかなる言葉も重みを失う。本書においては、その死者の眼ざしこそが、他のすべての言葉を超えて重く存在するのである。私たちもまた、この死者からのメッセージを、いかに受け止めようとしているかを、死者の側からまっすぐ見つめられていると言ってよい。」

死者は怨みを言わない。ただ、無限の深みから、私たちを見つめる。見つめられている私たちが、生者として何を願い、何をなすべきかは、すでに明らかである。死者の無言の願いに応えていく方向にこそ、私たちの未来へ通じる道がある。」
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引用終り

私は、本書を読むのがとても辛かったです。

ネトウヨが捏造だと断言したがる気持ちもよく分かる。

被害の具体的事実は絶筆に尽くしがたく、心を抉られます。

しかしこれは、現地で中国人を殺した旧日本軍の帰還兵たちが「よくぞ報道してくれた!」と絶賛した内容でもあるのです。

私は、歴史的事実への無知や偏狭な歴史観が、いかに社会に害毒をもたらすを認識できるようになりました。

本当の愛国心や自国への誇りは、このような丹念な学びによって初めてもたらされるのです。

SNSで浅薄なコメントを流し続け、つまらない自己満足に浸っているネトウヨ諸君。

新しい世界観を獲得したいと少しでも思っているなら、本書「中国の旅」を是非とも読んでみたまえ。

まとめ:

政治家が歴史問題に取り組むときは、面倒事から逃げ出さず、素直で真摯な態度をとることが不可欠です。

韓国との「従軍慰安婦」問題では形式上の合意をしたとはいえ、口先だけでの反省であり、終始、高圧的で傲慢な態度を取り続けました。

親分であるアメリカ様からの命令で仕方なく・・・、というのが良く伝わってきます。

日本のネトウヨだけでなく、韓国側の国民感情も逆撫でしてしまいました。

多大の時間・労力・税金をかけて交渉をしてきたみたいですが、残念ながら日韓友好にはつながりませんでした。

これを外交上の失敗と言います。

国際的に尊敬されるなど、夢のまた夢。

戦後70年経っているにもかかわらず、政治家・庶民の多くがネトウヨ的言説に踊らされている状態です。

心地よい噓に流されず、歴史から素直に学ぶという進歩的態度を身に付ける必要があります。

ネトウヨが重要視する「日本人の誇りと尊厳」を取り戻すにはそれしかありません。

以上

コメント

  1. 伊藤 より:

    これを読んでも、自分はネトウヨの側で居ようと思ってしまうあたり私はもうダメなのかも知れない。

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