福島県でオリンピック競技をやりたいなら、原子力緊急事態宣言を今すぐ解除せよ。風評被害だとマスコミが騒がないのはナゼか?

 2016年8月4日付のNHK報道によると、丸川オリンピック・パラリンピック担当大臣は、2020年の東京オリンピック開催時に、福島県内で一部競技の予選を実施したい意向だ。

写真(丸川オリンピック・パラリンピック担当大臣)

写真(丸川オリンピック・パラリンピック担当大臣)

 福島県が本当に安全ならば、オリンピック競技を実施しても良いと思うが、2011年3月の福島原発事故以来、原子力緊急事態宣言が発令中であることを忘れたのだろうか?意外に思う人が多いと思うが、実は、原子力緊急事態宣言は依然として解除されていないのである。

 大手マスコミが福島原発事故関連の報道をしなくなってから久しいため、放射性物質による健康被害の心配をする必要はないと思い込んでいる人が多いのではないだろうか?安倍政権は原子力緊急事態宣言を、うっかり解除し忘れているだけなのか?

 衆議院のホームページに、原子力緊急事態宣言に関する質問主意書が掲載されている。民進党の逢坂誠二議員が、2016年3月3日に提出したものだ。以下全文を引用する。

「原子力災害対策特別措置法第十五条第二項の規定に基づき、二千十一年三月十一日に原子力緊急事態が宣言され、現在もこの宣言は継続中であるが、同法同条第四項の規定に基づくこの宣言の解除は、どの程度の時期になるのか、その見通しに関する、政府の考えを明示願いたい。」

 この質問に対する答弁書は、安倍総理の名前で2016年3月11日に送付されている。以下に、全文引用する。

「お尋ねの原子力災害対策特別措置法(平成十一年法律第百五十六号)第十五条第四項に規定する原子力緊急事態解除宣言については、同項において、原子力災害の拡大の防止を図るための応急の対策を実施する必要がなくなったと認めるときに行うこととされており、住民の避難や原子力事業所の施設及び設備の応急の復旧等の実施状況等を踏まえ、総合的な見地からこれを行うかどうか判断するものであるため、現時点において確たる見通しを述べることは困難である。」

 ゴチャゴチャと分かりにくい表現だが、つまり、「福島原発事故から5年が経過しているけど、原子力緊急事態宣言を解除できるような状況じゃねえんだよ。危険な状況は続いてるし、収束の見通しも立っていない。」、ということだ。

 内閣総理大臣名での正式な答弁書は、非常に重い意味を持つ。しかし、「福島県でオリンピック競技をしたい」という丸川大臣の発言も重い意味を持つはずだ。どちらが正しいのだろうか?丸川大臣の発言が正しいならば、政府の原子力緊急事態宣言継続は風評被害を助長していることになる。実害があるがごとく国民を誤解させて福島県に不利益をもたらしていることになる。マスコミはナゼ騒がないのだろうか?

 実は、原子力緊急事態宣言がいまだに継続中ということを知っているのは、日本国民のごく一部に過ぎないのだ。ほとんどの国民は、福島原発事故は収束し放射性物質による健康被害を心配する必要はない、と思い込んでいる。わざわざ報道して、寝た子を起こす必要はない。国民の無関心を利用して、原子力緊急事態宣言を密かに継続させている方が政府にとって都合が良い。平常時の一般人の被ばく限度は年間1ミリシーベルト以下だが、原子力緊急事態宣言を発令中に限り、年間20ミリシーベルトという高い数字を適用できるからだ。

 年間20ミリシーベルトという暫定の被ばく限度をこのまま半永久的に継続し、危険エリアへの住民の帰還を進め、賠償金額を少なく抑えるのが狙いなのである。国民の命よりも原子力マフィアの利権を優先しているのだ。国民から徴収した年金資金を株式市場に投入して株高を演出し内閣支持率維持にいそしんでいる安倍政権ならば罪悪感を感じることもあるまい。安倍政権の意向を忖度し、必要な報道を行わず、結果として国民の健康を危険にさらしている御用マスコミも鬼畜と呼ばざるを得ない。
 
 そろそろ、結論に移ろう。

 福島原発からは大量の放射性物質が漏れ続けており、収束の目途は全く立っいない。原発内部の状況をまともに確認することすらできないのだ。従って、原子力緊急事態宣言を解除できないという政府の判断は正しい。オリンピック競技を福島県で実施したいという丸川大臣の発言は現実を無視しており、間違っている。

 2011年3月に発生した福島原発事故に関して、本来やるべき施策は下記のはずだ。

①放射能レベルの正確な測定を日本全国で行い、結果を全て公表する。
②外部被ばくだけでなく内部被ばくの危険についても、最新の知見を国民へ提供する。
➂避難地域選定については、最低限、チェルノブイリ基準を適用する。

出典(明かり新聞)

出典(明かり新聞)


④避難先で不自由がないように、住居、仕事、収入については十分援助する。
⑤避難対象者の医療費については生涯無料とし、診断結果は本人へ丁寧に説明する。
⑥原発は即廃止し、福島原発も含めて廃炉作業は安全第一で進めること。

 ある日突然、自分の住んでいる国・地域が放射性物質で汚染されてしまうという理不尽さを考えれば、上記①〜⑥は最低限必要なことだ。

以上

タイトルとURLをコピーしました