現代社会は、他人を押しのけ、絶望に陥れるような人物で溢れている。息をするようにウソをつき、人の言うことに耳を傾けず、失敗しても責任を取らずに言い訳ばかりをする。小賢しく他人を不愉快にさせる一方で、上役の御機嫌取りは一流で世渡りが上手い。無教養で哲学が無く、「今だけ良ければよい」「自分だけが得すればよい」という安易さが目立つ。実行力はあるが、他者への想像力や共感力に欠けており、それゆえ、長い目で見ると所属する組織・社会に害悪を与える人物。
以下に、いくつか紹介する。
別に、これらの人物に存在価値が無い訳ではない。人間だから何かしら良いところがあるはずだ。各自が努力し、今の地位を得て「活躍」していることは認める。しかし、私はどうしても彼らを好きになれない。今の地位に留まりたいならば、もう少し自省してもらいたいという気持ちがある。今の自分をどうしても変えられないならば、役職を辞退してもらいたい、というのが本音だ。同時に、政治家を選ぶ側の見識も疑う。
その一方で、世の中には対照的な人物も存在する。実力はあるのに他人を押しのけず、腰が低く、思いやりがある。自分の損得よりも他人の役に立つことを優先し、他人の喜びを自分の喜びとする。上役の御機嫌取りはせず、愚直で不器用であるがゆえに、組織の中で昇進は遅いが、組織にとっては居ないと困る人物。
このように、目立たないけれど、社会をうまく機能させるためには必要不可欠な人物にスポットを当てた映画を見つけた。
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上記サイトの中から、映画の紹介文を引用する。
「武芸の達人だが職につけない武士、三沢伊兵衛とその妻たよ。妻は、人を押しのけず人々に希望を与える夫をあたたかく見守っているが、職のない伊兵衛は日々妻に申し訳なく思っている。旅の途中、折からの豪雨が夫婦を河畔の宿場町に足止めさせる。やがてその雨があがる頃、城主にその腕を偶然認められた伊兵衛は、藩の剣術指南番に招かれるが…。現代に失われつつある“優しさ”を見事に表現した、心が晴れ晴れとする温かい感動作。」
主演:寺尾聰, 宮崎美子, 三船史郎
再生時間:1 時間, 31 分
印象に残ったセリフを一部紹介する。
主人公:三沢伊兵衛の妻たよの言葉
「これだけ立派な腕を持ちながら、花を咲かせることができない。なんという妙な巡り合わせでしょう。でも私、このままで良う御座います。人を押しのけず、人の席を奪わず、機会さえあれば、貧しいけれど真実な方たちに、喜びや望みをお与えなさる。このままのあなたも立派ですもの。」
この映画を観ると、人生の「勝ち組」「負け組」などという言葉を流行らせた人物の浅薄さを理解できる。この記事の冒頭で紹介した著名人たちは、尊敬すべき対象でないことも解る。
人間がどういう生き方をすべきかは、各自が考えて決めねばならない問題だ。日々の忙しさ・慌ただしさに流され、マスコミの流す「常識」の渦に巻き込まれ、いつの間にか視野が狭くなっていることもあると思う。
この映画の主人公は、決して理想的な人生を送っているとは言えないが、その生き方・考え方は、現代人が見失ってしまったものを表現していると思う。見た後に清々しい気持ちになりたい人にオススメの映画だ。
以上