福島原発事故後の安全宣言や強制帰還政策は国家の犯罪行為である理由。

2017年5月10日、東日本大震災復興特別委員会が参議院で行われました。自由党共同代表の山本太郎議員による反対討論を今回は紹介します。

書き起こし始め
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私は、自由・社民の会派、希望の会を代表いたしまして、福島復興再生特別措置法の一部を改正する法律案について反対の立場から討論を行いますが、本法律案により廃炉のための取組を更に推進するという方向性、その部分には共感いたします。スリーメルトダウンという過酷事故を起こした原子力施設など世界には存在しないのですから、国が先頭に立って廃炉作業を進めることは当然必要なことであり、当たり前な話です。

しかしながら、それと並行して行われる国が推し進める偽りの安全宣言、事実上の強制帰還政策には憤りを感じずにはいられません。

まず、本法律案や、以前に閣議決定された原子力災害の福島復興の加速のための基本方針では、特定復興再生拠点区域の整備を足掛かりとして帰還困難区域における帰還を促進しようとしております。空間線量での年間積算量が二十ミリシーベルト以下という基準は現実を全く見ていない。空間線量だけをもって安全とし、解除の要件とすることは大問題です。修正することもなく、原発事故後からずっと現在までそれを加速してきたことは犯罪行為とも言えます。

労働者の放射線被曝対策を事業者に定める規則、電離放射線障害防止規則、電離則ですら、放射線による障害を防止するために設けられる放射線管理区域について、外部放射線と空気中の放射性物質についての基準とともに、放射性物質の表面密度についての基準も設けております。電離則では、空間線量だけではなく表面汚染もセットで人体への影響を考えます。

しかし、汚染地への帰還の条件は空間線量のみ。表面汚染、つまりは土壌汚染の調査はセットにはなっていません。放射線源が管理されている前提、つまりは密封RIという環境で働く労働者は電離則で守られます。しかし、帰還住民は誰が守ってくれるんでしょうか。

ばらまかれた放射線源が全く管理されていない状況で、帰還住民は、自然環境中にばらまかれた放射線源がどのような挙動をするかという全く研究もされてこなかった非密封RIという世界で、自己責任で体を張って生活を強いられることになります。これを新しいチャレンジと呼び、それを復興と呼ぶなら、余りに無責任で強引な棄民政策と言うほかありません。まさに国家による犯罪行為、組織的犯罪集団とはまさに今のこの国であり、今の政治ではないですか。

事実、数年前に避難解除された地域だけでなく、避難地域などにさえ指定されなかった場所であっても、空間線量では低い線量だが、土壌を測れば生活圏が放射線管理区域と同等又はそれ以上といった中で暮らす人々が大勢いらっしゃいます。長期低線量被曝の影響、晩発性の障害が先々あったとしても因果関係なしとされることは、現在百八十五人の甲状腺がんの子供たちが身をもって教えてくれているではないですか。

汚染が存在する土地で生きる人々に対して国は、生涯無料の健診や、体内の放射線源を低減させるため年間二回ほどの長期の保養など、リスクと向き合い生きていくための本当の、本物のリスクコミュニケーションを住民に付与するのでしょうか。しません。国が行っていることは、気にするな、大丈夫だという科学的根拠のない洗脳、体育会系リスクコミュニケーションのみです。

実害を風評被害と言い換え、気持ちの問題として現実を覆い隠し、情緒的な話に落とし込む。そんな国こそが、そんな政治こそが最も科学的でない存在であり、いじめを生み出している主体であります。いつまで政治はこれに気付かないふりをするのでしょうか。やるべきことは帰還ではなく、放射線源の自然減衰を待った後に、住民の皆さんの判断で戻るか戻らないかを判断していただく、選択する権利を確立すること。戻る方、戻らない方にも一生涯賠償を続けること。それが現在進行形、進行中の大規模公害事故を起こした東電とそれを全力で後押ししてきた国の責務です。

しっかりと、東日本の土壌を詳細に、徹底的に調査し、事故前の基準に立ち戻り、実際のデータを基に、それでも住むか住まないかを選択する権利を与える、福島県だけでなく、本当は国が理解しているはずの県外にも存在する現存被曝状況という地域の人々にも権利を与えることが、国民の生命、財産を守る本物の政治の仕事と申しまして、私の反対討論といたします。


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書き起こし終わり

以上

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