【原発労働者たちの悲惨な実態】日本社会の差別構造が全国の原発を支えている。

 原発利権に巣食う人々の集まりは、原子力ムラとか原子力マフィアと呼ばれています。その集団は巨大であり、構造は複雑です。具体的なものを下図に示します。

出典:原子力村の住民一覧

出典:原子力村の住民一覧

 政治家・官僚・電力会社・関連メーカー・学者・マスコミ・・・。彼らは、国民から徴収した電気料金や税金を使って、有害無益な原発を推進・運営し、分不相応なオイシイ生活をしています。地域独占で、かかったコストをすべてユーザーに請求できるという異常さを、当たり前だと思っています。こんな人たちに自浄努力を期待することはできません。重大事故を何回繰り返しても、その結果、日本社会が放射性物質まみれになっても、日本人がそのせいで絶滅に向かっても、原子力ムラが自発的に現状を変えることは絶対にありません。麻薬中毒患者と同じなのです。

 さて、原子力ムラという組織を支え、おいしい汁を吸っている人たちのほとんどは、原子力発電所の現場を知りません。原発を支えているのは末端の労働者たちです。危険で汚く、給料も安いという差別的な労働環境に苦しみながら、それに依存するしかない現実があります。原子力ムラの無責任な行動やぜいたくな生活は、末端で働く非正規労働者たちに支えられているのです。放射線被ばくを伴う危険作業は、現場の使い捨て労働者たちに、ほとんど押し付けられています。下の図を見ると、一目瞭然です。危険は、正社員ではなく下請け業者に負わされています。

図(被ばく作業のほとんどは下請け業者が行っている) 出典:朝日新聞

図(被ばく作業のほとんどは下請け業者が行っている) 出典:朝日新聞

 求人に応募して全国から集められた労働者は、原発の現実を知らない若年層も大勢います。防護服・マスク・ゴーグルで全身を覆わねばならないため息苦しく、声がこもり、現場でのコミュニケーションは困難であり、湿気で全身汗ビショになります。現場では水を飲むこともできず、トイレ休憩もままなりません。放射線の恐怖に怯え、線量計のアラーム音が鳴れば生きた心地がしません。線量の管理は、いい加減で杜撰です。保守点検を考慮した設計になっていないので、作業のやり難さは天下一品です。現場で負傷者が出ても救急車を呼ばず、事故自体が隠ぺいされています。

 子供が生まれる予定の原発労働者は、自分の子供が放射線の悪影響を受けないか心配します。自分の健康が悪化しても、放射線との因果関係が認められることは稀です。これだけのリスクを負っても、支払われる給料は少ない。ヤクザ稼業の中間業者が何重にも入り込み、ピンハネしているからです。そんな実態を把握していても、電力会社は見て見ぬふりをしています。各原発労働者の被ばく歴はコンピューター管理されていますが、自分の数値を教えて欲しいと照会しても応じてくれません。原発労働により健康を害しても世話をしてもらえず、捨てられるだけです。原発労働者は、電力会社の正社員と比べて、あらゆる面で差別されており、時には地元住民からも白い目で見られます。

 以前、ある芸能人が福島第一原発を訪れて、原発管理側の案内で現実を知った気になり、浅はかなレポートをしていましたが、こんなものを簡単に信用してはいけません。

写真(福島第一原発をリポートするカンニング竹山氏) 出典:共同通信

写真(福島第一原発をリポートするカンニング竹山氏) 出典:共同通信

 原発といっても、たかだか発電設備。しかも、電力供給量は十分に足りているので、無くても困らない原発のために、何万、何十万という人たちの人権を踏みにじっているという現実を知るべきです。広島・長崎と同じく被ばくが避けられない原子力発電所。「安全神話」や「安心神話」を流布している悪魔たちを許してはなりません。人命を危険にさらさなければ維持できないような発電施設(=原発)は即廃止すべきです。

 「原発再稼働」や「原発輸出」を推進する政府の方針に軽々しく賛成している有権者は、一度立ち止まって考えを改める必要があると思います。

参考文献:

原発ジプシー 増補改訂版 ―被曝下請け労働者の記録

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以上

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