鳥越俊太郎という不適格者を東京都知事候補として担ぎ上げた関係者に猛省を促す。

 2016年の東京都知事選に出馬し落選した鳥越俊太郎氏は、自称「ニュースの職人」を名乗っていた。ジャーナリストと呼ばれることを嫌っていたようだ。

(人生の贈りもの)わたしの半生 ニュースの職人・鳥越俊太郎:1 75歳

 ジャーナリストは、権力の監視が仕事であり、現場・現物・現地人を直に取材して事実を丹念に追っていくことが要求される。鳥越氏は明らかにその定義から外れているので、ジャーナリストを名乗ることを拒否したのだろう。賢明な判断である。

 1989年、鳥越俊太郎氏は毎日新聞社を辞めるときに「毎日新聞の社長になれないなら、テレビキャスターだ」と豪語した。彼にとって大事なのは、社会的知名度であり金銭的な報酬なのだ。社会の底辺の事実を泥臭くすくい上げて権力と対峙するというジャーナリストの仕事は危険であり、反主流であるがゆえに多くの金銭的報酬を望むことはできない。鳥越氏は、権力と対峙するポーズをとりつつ、テレビキャスターとして名を上げ、年間で億単位の報酬を受け取ることに成功した。

 原則として自分で取材はせず、他人が持ってきた情報を右から左へ流すだけの自分を「ただの虚業家ではないか・・・」と悩んでいた時期もあったようだ。しかし、「ニュースの職人」として、視聴者に分かりやすく伝えるという役割は果たしてきたと思う。彼のテレビ画面上での好感度は高く、私自身も視聴者の一人として大分世話になったことは事実だ。

 鳥越俊太郎氏は1940年生まれであり、2016年の都知事選挙に立候補した時はすでに76歳であった。高齢であっても立候補するのは本人の自由だが、肩書をジャーナリストとしていたことに違和感を覚えた。民進党・日本共産党など複数の野党と市民団体の推薦を受けて選挙活動を行ったが、全候補者中3位で落選した。落選の原因を以下に箇条書きする。

・政治家としての実績も知識もないド素人である。
・立候補する前の準備が皆無であった。
・東京都知事候補でありながら、東京都の抱える課題について無知であった。
・「がん検診100%が目標」などという妄言を吐き、医療・薬品業界、保険業界の利益代弁者であることを露呈した。
・街頭演説の回数が自民党系候補者に比べてかなり少なかった。
・街頭演説では応援演説が花盛りだったが、肝心の本人のしゃべる時間が少なく、しかも政策について論ずることが少なかった。結果として、聴衆をがっかりさせてしまった。
・候補者同士の討論会を避けていた。実績も実力もある他の候補者から逃げ回っていた印象を与えた。
・選挙期間中に週刊誌が鳥越氏の醜聞を報じたが、必要最低限の説明責任を果たさなかったために不信感を植え付けた。
・選挙戦を通じて、何が何でも当選しようという熱意が感じられなかった。

 鳥越氏の自信のなさ、頼りなさ、いい加減さ、責任感のなさ、などを有権者は敏感に感じ取り、多くの票が自民党系候補に流れた。たとえ当選しても、まともな仕事ができそうにない人に一票を投じるのは無理だろう。有権者を責めることはできない。責められるべきは、鳥越氏のような人物を野党統一候補に担いだ関係者である。

 民進党が独断専行で密室で候補者を決め、それを他の野党と市民団体が丸のみするとは、野党共闘も堕ちたものである。参議院選挙の時のような政策協定もなく、完全な野合であった。著名人を担ぎさえすれば、有権者の支持を得られると思っていたのだろうか?

宇都宮氏「今回は政策もなければ何もない」/総括1

宇都宮氏「候補者選びは独裁的なやり方」/総括2

 野党共闘の一角を担った共産党は政界随一の調査・分析能力を持っているが、このような判断ミスをなぜ犯したのだろうか?投票率の低さを考えれば野党共闘しか手段が無いことは理解できるが、鳥越氏のような不適格者を推薦してはいけない。組織力を誇る共産党の票もかなり逃げたが、当然の結果である。

 鳥越俊太郎氏自身は本質的に体制側の代弁者とはいえ、ニュースキャスターとして一定の役割は果たしてきており、一市民として特にひどい人間だとは思わない。しかし、自分は東京都知事候補としてふさわしくない、という判断ができなかったのは残念だし、結果として、晩節を汚すことになった。

 鳥越氏は選挙後にハフポスト日本版の取材を受けている。記事のリンクを以下に貼る。

「ペンの力って今、ダメじゃん。だから選挙で訴えた」鳥越俊太郎氏、惨敗の都知事選を振り返る【独占インタビュー】

写真(鳥越俊太郎氏) 出典:ハフポスト日本版

写真(鳥越俊太郎氏) 出典:ハフポスト日本版

 敗戦の原因と真摯に向き合うこともなく、矛盾とゴマカシに満ちた見苦しい言い訳のオンパレードである。東京都知事としてはもちろん不適格者だが、人間としてもニセモノなのでは?、と疑いたくなるようなインタビュー記事である。ご一読をお勧めする。

 鳥越氏程度の平凡な人間はどこにでもいるし、珍しくもない。最終的に立候補するのは本人の自由である。問題は、彼のような不適格者を自民党系候補者への対抗馬とするべく担ぎ上げた者たちにある。適切な選択肢を東京都民に提示できず、結果として極右反動都知事(小池百合子氏)を誕生させてしまった罪は大きい。今後行われる衆議院選挙では、同じ間違いを繰り返さないように願う次第だ。

以上

コメント

  1. 伊藤徹子 より:

    まったく不適当な記事と感じますね。鳥越さんが潰されたのは安倍政権の文春の記事と新潮の記事のせいが主原因。鳥越さんは当初トップでした。しかし、週刊誌の発売とともに瞬く間に指示は下がって行ったという事。鳥越さんその時点でその事を取り消したり、反論する事に戸惑いがあったのだと思いますよ。だから選挙戦に戸惑いがあったのだろうと。本当にあの記事は相手の実名も明かさず、いい加減な記事。とにかく安倍は鳥越を潰す事に奔走したという事ですよ。後は増田でも小池でも良かった。もし鳥越さんが当選していれば自分たち政権を揺るがしかねない爆弾になっていた可能性があったからです。この件では内閣官房が動いたと言われていますよ。如何に安倍政権はメディアに入り込み違法な封殺をしているかという事です。ですので鳥越さんを批判するのは当たりません。

  2. 田中哲夫 より:

    枝葉末節かも知れませんが、「実績も実力もある他の候補者」と言う評価については、異論が有ります。彼らが行って来た悪政を実績と言うのは語弊が有ります。また、実力の中身は何でしょうか。悪いことをする能力が有ることを実力とは呼べないと思います。唯、御主張については概ね当たって居るのではないかと思っています。唯、鳥越氏が「本質的に体制側の代弁者」だとか、「不適格者」と言うのは言い過ぎですし、当たらないと思いますが、それほどたいした人で無かったことについては私も期待をし過ぎでした。あの程度の人なら他にも多くの候補者足り得る人は多く居ると思います。ちょっと知名度に頼り過ぎた誤りが有ったのではないかと思います。宇都宮さんや古賀さんでも良かったのではないかと思います。また、フィードバックの方が言われている「週刊誌の発売とともに瞬く間に指示は下がって行った」と言うのは必ずしもそうではなかったのではと思います。討論を避けたり、演説内容がイマイチだったので、それ以前から段々下降気味だったと思います。唯、演説内容については他候補も纏まった中身は無く、要領の良さが目に付きましたが、そういう点は今後学ぶ点があるのではと思います。なお、討論を逃げる姿勢は、最後の池上彰さんのインタビューに応じなかったことで、都民の前に決定的に明らかになった。逃げない勇気が必要だった。

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