「政府によるAV業界健全化の推進」→このニュースを聞いて違和感を覚えた理由をご存知ですか?

 アダルトビデオ(以下AVと略す)業界の健全化を目指して、大学教授や弁護士等による第三者委員会が発足し、2017年4月17日に記者会見が行われた。この第三者委員会は「AV業界改革推進有識者委員会」という名称で、AV関連の会社やプロダクションなどに提言や指導を行う予定だ。

 記者会見での主張内容は下記のとおり。

「自己決定権をはじめとする人権を保証するなど、健全化に向けて業界を刷新する必要がある」
「出演強要の話を聞いて心を痛めている。委員会の設置を機に、業界全体の問題を抽出して解決を図っていく」
「意に沿わない演技などに対して正当な理由をもって出演を打ち切ることができるよう契約に織り込むことや、出演者が不当な圧力を受けることなく自由意思で契約してはじめて撮影が可能になることなど、業界が守るべき規則をまとめた」
「委員会の提言や助言を無視した場合、罰則や公表を行う」

 安倍政権の後押しで、最近はAV業界への対応を見直す動きが活発化しており、政府は2017年4月を「被害防止月間」と定めて取り締まりを強化すると表明していた。

 このニュースを聞いて、4つの違和感を覚えたので以下に述べる。

1)「AV業界の健全化」という言葉自体が矛盾である。
 そもそもAVに出演する女性は自尊心の喪失と引き換えに報酬を得ているのではなかろうか?日本国憲法でも謳われている個人の尊重や人権という考え・態度が培われていれば、このような商売を始めようと思わないはずだ。

 こういうとき「表現の自由だ!」という弁解も必ず聞かれる。しかし、表現の自由は伝家の宝刀ではない。表現の自由に甘え過ぎた結果、日本は、世界でも最もひどい児童ポルノ大国になってしまった。詳しくは下記リンク先記事を参照して欲しい。

【児童ポルノ大国日本】道徳心の荒廃が権力の介入を招き、表現の自由を危機にさらす。

 児童ポルノやAVの氾濫は人権意識の希薄さを象徴している。人権意識を高める教育も含め、AV業界が縮小するように持っていく施策が社会の健全化のために必要だ。政府が規制だけを強めても、「健全なAV業界」が実現することはない。

2)背景にあるのは貧富の格差拡大政策
 AV業界が拡大している背後には、不安定雇用・手取り額の減少・生活費の増大など貧困問題が横たわっている。例えば、奨学金で大学に通い多額の借金を抱え、卒業後に非正規雇用になれば、借金を返すどころか日々の生活すら成り立たなくなる可能性がある。このような状況悪化が続けば、比較的高い報酬を求めて安易にAV業界を選ぶ人が増えても不思議ではない。

 そして、生活苦などの貧困問題を悪化させているのは、言うまでもなく「AV業界健全化」を推進している安倍政権である。格差拡大の元凶である安倍政権を退場させることが最良の対策ではなかろうか。

参考リンク:
【絵を見て理解しよう】アベノミクスで暮らしはどうなったか?

【世界の潮流】学費は原則無料でなければならない理由を考えてみました。

3)経済的徴兵制と根っこは同じ
 経済的徴兵制という言葉の定義は下記の通りだ。

「軍人が特に魅力的な職業とは見られない国の場合、志願制度では軍隊の補充の問題が避けられない。一方、国の一部に経済的に貧しい地域、または経済的な発展から取り残された地域がある場合、仕事も金も技術も学歴もないその地域の人々にとって、基本の衣食住や兵役中の高い金銭的報酬に加えて資格の取得や高等教育を受ける際の奨学金など退役後のキャリアパスまで保証される軍人という職業は逆に魅力的な選択肢に映る。
貧困地域では経済的理由で高等教育が受けられず、そのために専門知識や学歴が必須とされるような賃金の高い仕事に就けない結果となり、貧困が再生産されている。このような状況から抜け出すため、真に自発的な意思ではなく兵役に志願せざるを得ない状況があることを知りながら、政府がこの経済格差を是正しないばかりか、むしろこの状況を放置し利用することで新兵をリクルートしている実態がある。経済的弱者が兵役を強いられるこの状況を事実上の徴兵制とみなし、非難する意味合いを込めて「経済的徴兵制」と呼ぶ。」(ウィキペディア)

 防衛省は、借金に喘ぐ学生の弱みに付け込み、経済的徴兵制を推進しようとしている。若者の弱みに付け込んで搾取するという点で、経済的徴兵制もAV出演強要も根っこは同じだ。弱肉強食の野蛮な社会を見直すという視点が今の政治には欠けている。

4)安倍政権によるお手軽な内閣支持率アップ政策
 安倍政権は、さも弱者の味方のようなポーズをとっているが、ダマされてはいけない。憲法を蹂躙し、法的枠組みを破壊し、戦前回帰政策を続けている政府に人権や個人の尊重という概念はない。今の政府にとって弱者は搾取の対象に過ぎない。その証拠に、根本原因である貧富の拡大や国民負担の増大という問題には手を付けていない。むしろ状況を悪化させている。

 安倍政権の進めるAV業界健全化、取り締まり強化は、弱者の味方というポーズをとり、内閣支持率をアップさせるのが目的だろう。下写真のニュースを見て「安倍さんは頑張っているな」と共感するような人は、物事を批判的に見る癖を身に付けた方がよい。

写真(安倍政権によるAV業界健全化のニュース)

まとめ:
 政府は、大学までの学費無償化など、国際的な潮流に沿った政策に本腰を入れるべきだ。雇用の安定化策も必須である。若者が卒業時に多額の借金を抱えていたり、ブラック企業が横行している限り、すべての業界で不健全化が一層進むであろう。

以上

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