日本は人口が一億人を超える規模の国家のため、日本全体で判断すると世界有数の大国といわれることが多いです。しかし、日本人一人当たりで考えてみると、その実力はどうなのでしょうか?次の図が参考になります。
一人当たりの数値で世界各国と比較してみると、そんなに褒められるようなレベルではないことが分かりますね。
公益財団法人の日本生産性本部によると、OECD=経済協力開発機構に加盟する35か国の2016年の労働生産性を分析した結果、日本は20位で、G7=主要7か国では最下位だということが分かりました。労働生産性は1人の従業員が1時間にどのくらいのモノやサービスを生み出したかを示す指標です。実は、日本の労働生産性は1970年以降、G7で最下位が続いています。
1人の従業員が1時間にどのくらいのモノやサービスを生み出したかを示す指標でランキングが低い原因を考えてみました。以下、参考にしてください。
1)仕事での指示待ち姿勢
「天皇」が支配する大企業病にかかった組織で顕著ですが、職位が上がれば上がるほど、上役の意向に対し敏感で、神経質になります。何か新しい商品を出さなければならない場合でも、自ら提案するケースは稀で、ただひたすら、鶴の一声が出るのを待つのです。沈黙は金なのでしょうか?
おとなしく指示を待っているタイプの方が、組織で干されることもなく長持ちします。下手に積極的に提案するタイプは、上役の逆鱗に触れ、淘汰される場合が多いのです。自分の身を守るために沈黙を強いられるような組織の生産性が高くなるはずがありません。
2)上役への提言・直言を避ける
トップがやっと指示を出してくれたとしても、その指示内容や判断が正しいとは限りません。日本型の上意下達組織では、上役のご機嫌を損ねるような情報は、たとえそれが正しくても報告されないケースが多いのです。トップが、不十分な情報をもとに間違った判断をしても、間違いだと指摘できず、言われたとおりにただひたすら業務をこなし、悪い結果が出て上役が自分で気付いてくれるのをずっと待つというパターンが目立ちます。これでは、時間・お金の無駄を減らすことはできません。
上司のご機嫌や意向を忖度する人間ばかりが昇進するシステムでは、業務の効率化など望むべくもありません。
3)担当者の裁量権が少ない
欧米では、末端の担当者レベルでもかなりの裁量権を持ち、自分で判断しドンドン仕事を進められると聞きます。日本では、いちいち会社に持ち帰り、報告書作成、会議、根回しなど無駄な手間と時間で溢れています。日本では、主体的に考えて判断し行動する人間は好まれません。思考停止の奴隷根性が好まれる風潮が蔓延しているようでは、他の先進国と競争するのは無理でしょう。
4)とにかく会社に長時間いることが大切
日本では、とにかく会社に長時間いることが大切です。連日、夜遅くまで残業する人間は忠誠心が高いとみなされ高評価を得られます。だらだらと非効率的なことをやっていてもです。反対に、効率よく働いて結果を出しても、毎日定時に帰ろうとする人間の評価は低くなります。組織の中で浮いてしまい、抜擢されることもなく、閑職に追いやられることも珍しくありません。
無意味な協調性を強要されるような組織の生産性が高いはずがありません。
5)残業代を稼ぐことが目的化
基本給が低く、副業も許されないならば、必然的に残業代で稼ごうという人が多くなるのも仕方ないでしょう。時間の切り売りという感覚になります。限られた時間の中で何とかして仕事を終わらせよう、成果を出そうという意欲がなくなり、そのための工夫もしなくなります。効率が低下するのは避けられません。
6)ブラック職場の蔓延
日本全国がブラック化しています。ブラック企業でない会社を探し出す方が難しいかもしれません。長時間労働が原因の過労死・過労自殺が問題となっています。体調が悪化し、精神的に追いつめられるとどうなるでしょうか?集中力の低下、ヤル気の減退、ミスの頻発、周囲への迷惑など、仕事上の悪影響は計り知れません。実際に命が失われてしまったら、会社にとっても、社会にとっても大きな損失となります。取り返しがつきません。
ブラック企業は生産性の低い会社とみなすべきです。
7)非正規雇用の増加
非正規社員の割合は増え続け、今や4割を超えました。
非正規社員には、昇給もボーナスも退職金もないことがほとんどです。正社員との生涯賃金格差には凄まじいものがあります。
経営者の利益のために格安の使い捨て労働をさせられる人間が、親身になって組織のことを考えてくれるでしょうか?改善提案など、積極的な行動をしてくれるでしょうか?お金のために、言われたことを言われたとおりにこなすだけの人間ばかりになったら、組織は衰退するばかりです。
8)賃金の低下と値下げ競争
庶民から搾取し、大企業の内部留保が増え続けています。搾取される庶民の賃金は下がり続けています。
使えるお金が少なければ、なるべく買わないようにするため消費が冷え込みます。本来なら値上げしたい商品でも、仕方なく値下げせざるを得ない場面が増えます。価格が下がるということは、働いた人の成果が安く売られているわけですから、生産性が落ちていることに他なりません。
1%の人間が富を独占し、99%の人間が貧しさに苦しむような社会を改善しなければなりません。トリクルダウン(富裕層がより豊かになれば富が自然に滴り落ち、庶民もそのおこぼれに預かることができる)などという幻想を信じてはいけません。
以上