【日本人は失敗から学べないのか?】ビキニ環礁核実験と福島原発事故の共通点

水爆ブラボーの火球

 主な読者が日本在住の外国人であり、彼らの知りたがる情報を載せているジャパンタイムズ。そのジャパンタイムズが、2016年5月15日付の社説で、ビキニ環礁の核実験に関して論じています。以下に当該記事のリンクを示します。

「Revisiting Bikini Atoll nuclear tests」(ビキニ環礁での核実験再考)

 以下に、日本語で要点を述べます。

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1954年、アメリカは一連の核実験を太平洋のビキニ環礁で実施した。その時に近海で操業していた元漁師やその親族が、今回日本政府に対して起こした損害賠償訴訟は歴史的な意味を持つ。

日本人漁師の被ばくも含め、核実験が引き起こした結果に対して日本政府とアメリカ政府は適切に対応してきたのか、この訴訟で明らかになるだろう。

日本政府が漁師たちの健康調査を怠り、被ばくの実態を何十年にもわたって隠ぺいしてきたことは明白だ。

今回起こされた訴訟は、1954年の水爆実験に関する初めての国家賠償訴訟だが、その原告たちは高知県出身の元漁師たちとその遺族だ。

高知県ではないが、第五福竜丸(静岡県)の船員たちを襲った悲劇はあまりにも有名であり、日本における反核運動の端緒となった。

第五福竜丸の被害については、1955年にアメリカ政府が200万ドルの見舞金を支払うことで政治的合意に達した。

その政治的合意のせいで、アメリカの責任が不明確になり、被ばく被害の隠ぺいを許し、アメリカへ損害賠償請求する機会を奪われた、というのが高知県漁師たちの主張だ。彼らは日本政府に対して、一人当たり200万円の慰謝料を求めている。

当時、反核・反米の機運を日本国内に醸成させたくなかったので、アメリカ政府は第五福竜丸の件で政治的決着を急いだのだ。日本政府側も、原発技術をアメリカから得るために、事を荒立てたくなかった。

日本政府は水爆実験の実施計画情報を持っていたにも関わらず、事前に通知せず、約1000隻の日本漁船が爆心地近くで無防備に操業することになった。

1986年、高知県出身の日本共産党の議員は、漁師の健康被害記録を開示するよう求めたが、「情報のありかを特定できない」というのが日本政府の回答であった。しかしその後、市民団体などが繰り返し請求を行い、2014年、厚生労働省が情報を開示した。

その開示情報は、内部被ばくの検査をしていないお粗末なものだったが、厚生労働省は健康被害の心配はないと主張した。実際、被ばくとの因果関係を証明するのは難しい状況だ。

政府が、漁師たちの健康調査や被害者への補償を怠ったことが、今回の裁判で明らかにされるだろう。また、第五福竜丸を巡る日米政治交渉の過程、漁師の被ばく記録が長年隠ぺいされてきた理由、さらには、継続的な健康調査がされなかった理由も明らかにしなければならない。
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 以上が、ジャパンタイムズ社説の要旨です。

 翻って、2011年3月に発生した福島原発事故をめぐる状況はどうなっているでしょうか?

福島第一原子力発電所の爆発

福島第一原子力発電所の爆発


写真(放射性セシウムによる土壌汚染) 出典:IPPNW-Report "Health consequences resulting from Fukushima Update 2015"

写真(放射性セシウムによる土壌汚染) 出典:IPPNW-Report “Health consequences resulting from Fukushima Update 2015”

 チェルノブイリ以来の最悪事故を起こしてしまった福島第一原子力発電所。3つの原子炉がメルトダウンを起こし、周辺の広大なエリアが放射性物質に汚染されました。事故はいまだに収束しておらず、最終的な汚染規模がどの程度になるか予想もつきません。今後何世代にも渡って事故の影響が続くのは確実です。多大な被害が出ているにも関わらず、日本政府の行動は愚かさを極めています。具体的には、・・・

・放射能汚染レベルの測定が不十分で、しかも、わざと数値を低く見せている。
・チェルノブイリ基準では避難すべき場所に人を住まわせている。
・避難者への援助を打ち切り、高線量地域へ帰還せざるを得ないようにする。
・健康調査の対象範囲を狭くし、被爆による健康被害を小さく見せている。
・特定の医療機関だけに健康調査・診断を許可し、その結果を住民たちに教えない。
・福島県の農産物を福島県内の学校給食に用いて、「安全性」をアピールしている。
・汚染地域に企業が進出したり、学校が作られるのを禁止しない。
・東京電力を初め原子力村の人間は罰せられず、賠償費用などは国民負担になっている。
・安全性の確認ができないばかりか、放射性廃棄物の処理・管理方法も確立できていないのに、全国の原発を再稼働しようとしている。
・原発の新設や輸出を目論んでいる。
・総理大臣自ら、東京オリンピック招致の場で、「健康被害はない」「アンダーコントロール」と、嘘八百を並べた。

 お気づきになったかもしれませんが、ビキニ環礁での水爆実験と福島原発事故には、多くの共通点があります。

共通点:
1)事実から目を背け、調査を真面目にやらない。
2)被害状況を小さく見せるためのゴマカシを行う。
3)根拠もないのに安全性をアピールする。
4)健康被害に関する隠ぺいを行う。
5)国民の健康などは、二の次三の次。
6)原子力マフィアたちの利権を守ることが最優先である。

最後に、
 誠に残念ですが、過ちから学ぼうという機運が日本ではほとんど見られません。現実を直視し失敗から学べば進歩する可能性がありますが、その逆で反動的な動きばかりが目立ちます。福島原発事故を他山の石として原発全廃を決めたドイツのことを、少しは見習うべきだと思います。

以上

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