2017年12月1日、衆議院の法務委員会で詩織さんの準強姦罪事件問題が取り上げられた。質問に立ったのは、希望の党の柚木道義議員だ。
以下にYouTubeビデオリンクは、2023年3月現在視聴できないので、代わりに、委員会でのやり取りの要点を書き起こしする。
書き起こし始め
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柚木議員:
「最後の砦ともいえる検察審査会がブラックボックス化している。詩織さんの準強姦罪事件の捜査の公正性、審査の公正性に疑念がある。捜査プロセスが適切でなければ、法改正しても意味がない。国家公安委員長を呼んだのに、なぜ来ないのか?被疑者であるTBSの元記者を成田空港で逮捕する寸前に中止させた中村格内閣官房総括審議官(当時の警視庁刑事部長)も欠席している。彼らが、安倍総理や菅官房長官にこの件を報告していたのか、直接訊きたくて呼んだのに、なぜ来てもらえないのか?そんなにやましいことをしているのか?」
委員長:
「・・・・・・・・個別の事案ですので・・・・・・理事会の協議事項なので、それを経てください・・・速記を止めてください・・・(中断)・・・一般人の個別の事案について議論するのは控えて頂きたい」
柚木議員:
「今までも一般人の事案についてさんざん議論をしてきている。冤罪事件も含めて・・。なんで山口さんだけ特別なの
か?安倍総理の友達だからか?おかしいでしょう?納得できません。理事会にも提案している。他の委員会では認められている。なぜ法務委員会だけダメなのか?安倍政権は開かれた司法ではないのか?」
委員長:
「速記を止めてください。・・・・(長い中断)・・・・。この委員会では、あくまで一般論として審議するということなので、個別の人名を出すのは相応しくないと思います。・・・審議を続行してください。」
柚木議員:
「(元TBS記者:山口氏の著作「総理」を指し示しながら)、こういう本が出ているということを言うことが、なぜダメなのか?捜査過程の適正性について疑義があるから、これから説明するんですよ。中村格氏(当時の警視庁刑事部長)自身が、元被疑者の山口氏逮捕を直前でやめさせたと、取材で認めている。これが事実かどうか、なぜ逮捕の執行を直前で停止したのか?この法務委員会の場で確認したかった。詩織さんは検察審査会に不服申し立てをした後、この本「ブラックボックス」を出版した。
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法務委員会もこんなことをやっていたらブラックボックスになる。総理のお友達であれば逮捕を執行停止に出来るのか、そのような前例があるのか、委員会に出席してもらわなければ質問できないではないか。こんなことをやっていたら、性犯罪厳罰法を改正しても実効性が失われる。委員会への出席要請は文書でも通告しているし、警察庁との連絡室とも直接やりとりしている。いい加減にしてもらいたい。
国家公安委員長と中村格氏(当時の警視庁刑事部長)を今日呼べないんだったら、次の会に呼んで欲しい。」
委員長:
「理事会で協議します。」
柚木議員:
「森友・加計・準強姦罪疑惑は隠ぺいの3点セットだ。ブラックボックスという疑念を払拭するためにも検察審査会の行政文書の開示をお願いしたい。開示請求をして期限を過ぎても開示されていない。開示しない理由は何か?」
最高裁刑事局長:
「具体的にお答えするのは差し控える。」
柚木議員:
「山口氏を不起訴にした議決の理由を知りたい。元被疑者の山口氏にとっても、詩織さんにとっても、一般論としても、検察審査会の議決の理由、審議経過は情報公開することが必要だ。」
最高裁刑事局長:
「検察審査会は議決の要旨を公開できるが、どの程度の開示になるかは、個別の事件ごとに検察審査会が判断する。」
柚木議員:
「そうすると、判断に恣意性が入り込む余地がある。書きたくなかったら書かなくてもいいのか?それでは開かれた司法とはいえない。だれでも対象になり得るのだから、議決の理由くらいは当事者に開示すべきだ。
伊藤詩織さんは、検察審査会に追加の陳述書を提出しようとしたが、それは叶わなかったというのは事実なのか?また、検察からの証拠の提出、及び、その取扱いについて訊きたい。ホテルの防犯カメラ動画に、意識を失った詩織さんを担いだ被疑者がチェックインする様子が全部写っている。この動画は証拠として提出されている。この動画は審査会の委員の方々に見て頂いたのか?」
最高裁刑事局長:
「検察審査会は非公開なので、申立人から陳述書が提出されたかどうかは承知していない。また、個々の事件でどのような証拠が提出されているかどうかについては承知していない。」
柚木議員:
「だから、検察審査会はブラックボックスだと言われるのだ。資料開示したって黒塗りじゃ何も分からない。不起訴相当とういう判断が正しいかどうか議論が出来ない。
性犯罪事案だから、検察審査会の男女比は同数であるべきだ。なぜ7:4なのか?男性が7で、しかも平均年齢が50歳。」
最高裁刑事局長:
「男女の比率に着目することなく、くじ引きで決まった。」
柚木議員:
「性犯罪事案なのだから、検察審査会の男女比は同数であるべきだ。申立人の意見陳述権を、是非とも確保してもらいたい。第三者だけでなく当事者すら参加できないのでは、正に、ブラックボックスと言わざるを得ない。被疑者、被害者共に意見陳述ができるように法律改正をしてもらいたい。」
刑事局長:
「当事者が意見陳述をする必要はないと考えている。」
柚木議員:
「被疑者側、被害者側共に意見陳述ができるように法律改正をしてもらいたい。」
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書き起こし終わり
権力側にとって都合の悪い事案はすべて隠ぺいする、という姿勢が徹底されている。感心している場合ではないが、見事である。当然マスコミも、政権側の意向を忖度してマトモな報道はしない。洗いざらい情報が公開されたら、一日で政権が転覆する事件だからだ。見苦しい言い訳をして野党側の質問時間を強引に削減した理由が良く分かる。
ビデオを見れば分かるが、この異様な雰囲気から日本の民主主義が崩壊している様子を感じ取って頂きたい。必要な情報が公開されなければ有権者は正しい判断が出来ず、取り返しのつかない事態を招くのだ。安倍総理による司法の私物化だと断定せざるを得ない事案に無関心であってはならない。
幸い、良心を持った国会議員たちが検証する会を立ち上げ、今後もこの問題を追及し、必要な法案提出が行われる予定である。
この問題は、与野党間で対立する案件ではない。全議員に対して案内がされているにも関わらず、なんと、自民党・公明党からの参加者はゼロであった。自民公明の与党は衆参両院で圧倒的多数を占めているにも関わらず、ナゼ黙殺しようとするのだろうか?
1)女性の人権侵害に対して無関心で、問題意識も良心も持っていない。
2)個人的には関心があるけれど、安倍総理のお友達案件なので、怖くて参加できなかった。
3)安倍総理周辺の関与で司法システムが捻じ曲げられた事実が明らかになったら、政権が転覆しかねず、自分も議席を失う可能性があるため。
4)安倍総理周辺から、「この件には一切関わるな」と指示が行っている。
情況を鑑みると、上記1)~4)のどれか、もしくは全てが理由だろう。自民党のゴバンザメに成り下がったとはいえ、公明党議員までがアベに忖度するとは情けない。「平和の党」は完全に終了した。創価学会の婦人部には、泣いている人が一人もいないのか?もともと自民党自体は戦前の男尊女卑社会を復活させたいと奮闘してきた党だから、問題の解決ではなく問題の隠ぺいに熱心なのは当然といえよう。自民・公明両党を支持してきた有権者も同罪である。
「性暴力のことは公で議論すべきでない」
「被害者にも落ち度があった」
「二人だけで食事して酒を飲んだ女が悪い」
「女は二級市民なんだから泣き寝入りしていればいいのに、声を上げるなんて生意気な奴だ」
多くの国民からは、このような「常識」が聞こえてきそうだ。「日本は中世の国か?」と海外から揶揄されている人権後進国ぶりを改善するため、国民の側からも権力側へ圧力をかけていかなければならないと思う。
関連記事のリンク:
「ブラックボックス」書評:ジャーナリスト伊藤詩織氏の勇気と説得力
以上