【福島原発事故】汚染食料摂取による内部被ばくの危険:IPPNWレポート

写真(福島原発事故による汚染の広がり) 出典:文部科学省

写真(福島原発事故による汚染の広がり) 出典:文部科学省

 IPPNW(=International Physicians for the Prevention of Nuclear War 核戦争防止国際医師会議)という言葉を聞いたことがありますか?

以下、ウィキペディアでの説明です。

「核戦争を医療関係者の立場から防止する活動を行うための国際組織で、1980年に設立された。本部はマサチューセッツ州サマービル。各国に支部があり、日本支部の事務局は広島県医師会内にある。」

「1981年以来、現在は隔年で世界会議と地域会議を開催している。83カ国、約20万の医師が参加している。」

「1985年、核戦争がもたらす破滅的な結末について信頼できる情報と理解を広めた貢献によってノーベル平和賞が受賞され、IPPNWを代表し創設者のバーナード・ラウン教授とエーゲニィー・チャゾフ教授が招待された。」

「チェルノブイリ原子力発電所事故から25年後の2011年を迎え、IPPNWのドイツ支部はチェルノブイリ事故の影響に関する報告書を発表した。2011年3月に発生した福島第一原子力発電所事故では、日本政府の定めた20ミリシーベルト基準に対して子供の被曝許容量としては高すぎるとして撤回するよう抗議の書簡を送っている。」

 このIPPNWは、福島原発事故に関連して報告書をいくつか出していますが、その内の一つを今回は紹介いたします。放射性物質に汚染された食物を体内に取り込むことで発生する内部被ばくの危険性と、基準値について述べたものです。以下にリンクを記します。

英語版リンク↓
「Calculated Fatalities from Radiation:Officially Permissible Limits for Radioactively Contaminated Food in the European Union and Japan」

日本語版リンク↓
「あらかじめ計算された放射線による死:EUと日本の食品放射能汚染制限値」

 上記報告書の結論部分を以下に引用します。

引用始め
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6.1.
 ヨーロッパと日本、その他の地域では、市民の健康保護を第一に考えて、汚染食品の規制をすべきだ。放射線の制限値をどのように設定しても、それを容認することは意識的に死と病気を黙認することと同じだ。この事実を踏まえ、経済上の都合を健康保護よりも優先させてはならない。

6. 2 .
 ヨーロッパにおいては、フクシマ事故後であっても事故発生時用の食品制限値を導入する必要はない。ヨーロッパの制限値は、たとえば平常時に適用されるドイツ放射線防護令を基にした制限値まで大幅に引き下げるべきだ。つまり、乳幼児、こども、青少年は、1キログラム当り最高4ベクレルしかセシウム137で汚染されていない食品を摂取すべきだ。大人に対しては、食品1キログラム当りのセシウム137制限値として、8ベクレルを適用する。

6. 3 .
 ある特定の放射性核種の制限値を容認することによって、死者と病人をどの程度まで受け入れるのか、日本とヨーロッパで公の議論をすべきだ。安全な放射能制限値というものは存在せず、放射線はどのレベルであっても危険だということを公衆にはっきり伝えることが重要だ。

6. 4 .
 平常運転時と事故発生時に関して、別々の放射線制限値が市民のために規定されていることは、医学上も倫理上も何ら根拠がない。それによって、市民にだけ事故時に不当な健康障害をもたらしている。健康障害の原因について原発運転者は責任を問われていない。事故に責任のあるはずの原発運転者は、その責任から一括して解放されている。

6. 5 .
 放射性ヨウ素汚染が非常に強い場合、牛乳、サラダ、葉菜類、食用野生ハーブの摂取を完全に止めるよう市民に勧告する。この勧告をできるだけ長期に渡って適用すべきだ。なぜならば、2011年4月17日とその後も再三に渡って、東京電力が福島第一原発から今年一年を通して放射性物質が放出され続けると説明してきたからだ。原子炉と燃料貯蔵プールで起こったいわゆるメルトダウンが「冷温停止」状態に達するまで、その間に予期しないことが起こらなければだが、約9ヶ月かかると予想される。日本の梅雨の時期は、放射性微粒子がより多く地面に降下していく可能性があるが、特に風向きが太平洋から国土側に変わった場合、たいへん心配だ。

6. 6 .
 東京電力と日本政府のこれまでの情報開示姿勢を見ると、市民が当初から危険について知らされていないと推測せざるを得ない。こうした情報開示状況を改善するよう、日本政府と産業界に要求する。だが、日本の市民グループとNGOは、市民に正確な情報を提供するため独自に放射線測定を行っており、たいへん素晴らしいと考える。原子力関連情報が市民に行き渡らないというのは、日本だけなく世界中で起こっている問題だ。

6. 7
 電離放射線による健康障害という複雑なテーマに関して市民に情報を提供し、市民を助けるという理性的行動を取ることが、科学者に求められている。チェルノブイリ事故後に、科学界で高い地位を占める学者たちが市民に対して情報を隠蔽したようなことが日本でも繰り返されるならば、それは悲劇だ。(「放射線恐怖症」や「100ミリシーベルト以下の放射線量であれば危険がない」などの間違った決まり文句)

6. 8
 われわれはヨーロッパに対しては、リスボン条約に以下の項があることを強調しておきたい。だが、原子力利用部門においては、それが実行されたことは一度もなかった。
「欧州連合の環境政策は、欧州連合のそれぞれの地域の条件を配慮して保護レベルを高くすることを目標とする。環境政策は準備と予防の原則、環境破壊を根源的に撲滅することを優先するいう基本、それを引き起こした者が責任をとるという原則を基本とする」
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引用終り

 報告書の詳細を知りたい人は、リンク先をご覧ください。日本のマスコミから流れてくる情報と異なる部分や、知らなかったことはありましたか?

何かしら参考になれば幸いです。

関連リンク:
IPPNWウェブサイト(福島原発事故)

以上

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