城南信用金庫の吉原理事長がロイター通信の取材に応じて、原発政策に対する本音を語りました。その様子は、2014年4月18日付の下記リンク先で確認できます。
インタビュー:原発は国家ぐるみの粉飾決算=吉原・城南信金理事長
リンク先から、吉原理事長のコメント部分を引用し、それに対する私の感想を→に記します。
吉原理事長:
「金融は、政治にかかわるべきではなないという意見がある。それは本来、権力にかかわることで金融が求めるべき理想がねじ曲げられ、利用されてしまう懸念が生じるために生まれた考えだ」
「しかし、金融に限らず企業の目標は、より良い国や社会を構築することだ。すべての企業は、理想の実現のためにある。経営者は、金儲けだけ考えればいいというのはおかしいのではないか」
→より良い社会を実現するために金融業界はどのように行動すべきか、哲学を持っていれば政治的な発言をするのは自然なことですよね。目先の利益や保身だけを考えている経営者の方が異常なのです。
吉原理事長:
「消費者のニーズに応えることが企業、つまり消費者主権という考えは間違えていないか。例えば当社は、投機のためのゴルフ会員権購入のための融資はお断りする。そういう資金使途には貸せない。健全性とは何かを考え、顧客にも説明していく。それが金融マンの役割だ」
「福島第1原子力発電所の事故で分かったことは、将来の世代に責任を持てないエネルギーということだ。もはや原発は反社会的存在だ。原発を造る金を貸せと言われたら、お断りする」
→お客様は神様です、王様です、という考えは万能ではないし、限界がありますよね。何でもかんでも顧客のご機嫌を取る必要はないのです。経営哲学をベースにした健全性を顧客に説き、顧客を教育するという視点も大切です。
吉原理事長:
「東電の株式と社債は、事故後に売却した。金融機関は公共的な存在だ。東電の株式や社債に投資をするわけにはいかない」
→私も自分の貯金を、反社会的な原発マフィアに投資されたらイヤです。
吉原理事長:
「原発のコストの方が低いという人で、いやしくもビジネスマンや経済に携わる者ならば、会計の原則ぐらい勉強していただきたい。コスト計算には、直接原価と間接原価があり、そこで総合原価計算が行われる。原発は、今あるウランを使うだけならば直接原価は低い」
「では、その結果の間接原価はどうなのか。将来の廃炉費用や、使用済み核燃料の保管料や処理費用、工事費や人件費、地代がカウントされているのか。カウントされていない。われわれは今、時価会計で、将来に発生するキャッシュフローをすべて現在価値化し、負債計上している。原発にはそれが入っていない」
「1回事故が発生したら、天文学的なコストがかかる。貸し倒れ引当金の積み立ての考え方を入れれば、とんでもない引き当てを積まなければならない。これは、不採算というのではないか。国家ぐるみの壮大な粉飾決算だ」
→「コストの安い原発を稼働しないと、日本経済が立ち行かない」という財界の意見が詭弁だというのが良く分かります。だいたい、高レベル放射性廃棄物を10万年先まで保管・管理するための費用なんて算出できませんよね。原発は無責任の象徴でもあります。
吉原理事長:
「まず、原発の将来に発生する未計上のコストをちゃんと計上しなければならない。その上で、原発を再稼働させたら、もっと値上げをしなければならない」
「新しい電力産業が勃興してくれば、新産業としてモノづくりの復活にもつながる。例えば、石炭ガス化コンバインド発電やソーラーパネル、さまざまサービスも増える。工事やモノづくりに携わるわれわれの顧客たちにも恩恵がある。原発の再稼働では、新産業は生まれない」
→小水力、波力、地熱、洋上風力、太陽熱・・・ 日本は自然エネルギー大国です。環境への負荷が少ない新産業を興す力があります。原発に頼らなくても電気は十分にまかなえます。逆に、原発に頼っていると電気代がドンドン上がり、企業や生活者の負担が大きくなりますね。
吉原理事長:
「燃料の輸入によって、貿易収支が悪化し、経常収支が赤字に陥るのは日本経済にとってマイナスだという指摘は、本当に正しいのか。経常収支が赤字でも成長している国はたくさんある。日本は、黒字を溜め込み、結果的に円高になり、デフレから抜け出せなかった。輸出入のインバランスは、為替で調整される」
→なるほど、広い視野で考えることが大事なんですね。
吉原理事長:
「(原発事故後の東電への巨額融資は)第2の住専問題だという気がする。当時も、政府が保証するからとみんなが貸して、最後は損失となった。1980年代のバブル時も金融機関は公共性という考えを放棄し、その後、大きなツケを払わさられることになった。金融機関は、引き返す勇気を持つ必要があると思う」
→引き返す勇気ですか?大手銀行経営者は意識が戦前のままですから、難しいかもしれませんね。
吉原理事長:
「(大手銀行の東電への貸し出し行為は)公共性を勘違いしている。東京電力を生かすことが公共性ではない。安全でコストの安い電力サービスを継続的に安定的に保証することが公共性なのではないか。もっと見識を持たなければならない」
→東電を生かして、原発マフィアの利権を守ること自体が目的化している組織には、公共性という観念はないのでしょうね。
最後に:
このような真っ当な見識を持った人が、金融機関のトップにどうしてなれたんだろう、というのが素直な感想です。吉原理事長の考えは、金融業界の中でも少数派だと思います。大銀行だったら、当の昔に潰されていたでしょう。吉原氏を引き上げた当時の上司にも敬意を表したいと思います。
吉原理事長のような方がもっと増えれば、金融業界は変わると思いますし、原発全廃への後押しとなることは間違いありません。
ご同意いただけたら、ネット上での拡散をお願い致します。
以上