【日本社会の病巣】難民キャンプの少女を侮蔑する側の心理

 日本社会には、戦前から今日に至るまで自発的隷従という病が蔓延しています。

 フランス人のエティエンヌ・ド・ラ・ボエシが書いた「自発的隷従論」の中から引用します。

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「先の人々(生まれながらにして首に軛を付けられている人々)は、自分たちはずっと隷従してきたし、父祖たちもまたその様に生きて来たという。彼らは、自分たちが悪を辛抱するように定められていると考えており、これまでの例によってその様に信じ込まされている。こうして彼らは、自らの手で、長い時間をかけて、自分たちに暴虐を働く者の支配を基礎づけているのである。」

「隷従する者達は、戦う勇気のみならず、他のあらゆる事柄においても活力を喪失し、心は卑屈で無気力になってしまっているので、偉業を成し遂げることなどさらさら出来ない。圧制者共はこのことをよく知っており、自分のしもべたちがこのような習性を身につけているのを目にするや、彼らをますます惰弱にするための助力を惜しまないのである。」
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引用終り

 一言で言えば、権力者への盲従を良しとする心理でしょう。自発的隷従が原因で生まれる様々な悲劇を例として挙げます。

・神風特攻隊
・ブラック企業での過労死
・高線量の福島原発近くに住み続ける。

 これらに共通する権力者からのメッセージは、「問題意識など持たなくていいから、おとなしく犠牲になりなさい」ということです。安倍政権になってから、このメッセージを特に強く感じるようになりました。安倍内閣は日本会議という戦前回帰組織に支配されているので当然でしょう。

 武田康弘氏が下記リンク先の記事で、日本会議に賛同する者の精神構造に関して優れた論考をしています。一読をお勧めします。

「日本会議」の精神構造 第三回 ネクロフィリア(英仏誌も安倍首相らのウヨク団体「日本会議」に注目)

 当該記事の中から一部を、以下に引用いたします。

引用始め
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「互いを対等な存在として認め合うのでなく、権威、権力、金力、学力、暴力などにより他者を自分の思う通りにしようとする」
「厳しい規則や固い組織など動かないものを愛します。モノや思い通りになる人だけしか愛せない」
「臨機応変、当意即妙とは無縁で、すべて自分の計画通りにならないと怒ります。」
「イキイキと生きている一人の人間、一人の女・一人の男から始まる社会・国という「社会契約」(人民主権)の考え方が受け入れられず、自分の思う「日本人」とか「伝統」の枠内にこどもや市民を閉じ込めようとします。」
「管理社会を好みますから、こどもや人々が自立心をもち、「私」からはじまる生き方をすることを恐れます。」
「個人や自由や解放というイメージを嫌い、批判されるのを避けます。オープンな話し合いが苦手で、一方通行です。」
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引用終り

 上記のような精神構造をもった権力者にとって、自発的隷従という病に侵された国民は誠に都合が良いのです。自発的隷従という病にかかっているという自覚すらない多くの有権者が、選挙で安倍政権を誕生させたのです。奴隷状態に慣れ切っている人は、独裁権力者を望みます。

 話は変わりますが、下記写真をご覧になった人は多いと思います。「セーブ・ザ・チルドレンUK」の職員で写真家のジョナサン・ハイアムズ氏が撮影したシリア難民の少女です。

撮影:「セーブ・ザ・チルドレンUK」の職員で写真家のジョナサン・ハイアムズ氏

撮影:「セーブ・ザ・チルドレンUK」の職員で写真家のジョナサン・ハイアムズ氏

 シリア難民の多くは軍需企業の金儲けの犠牲になっています。この少女は人生の初期に重荷を負わされ苦境に立たされながらも、毅然とした表情が印象的です。しかし、日本会議に所属する権力者から見れば、この写真は気に食わないはずです。「問題意識など持たなくていいから、おとなしく犠牲になりなさい」という命令に従う雰囲気が感じられないからです。

 案の定、安倍総理に心酔する日本の漫画家が、この少女を侮蔑する次のような絵をネット上に公開しました。

作:蓮見都志子氏

作:蓮見都志子氏

 この投稿は大問題になり、海外メディアでも報じられています。

「BBC: Is this manga cartoon of a six-year-old Syrian girl racist?」

 自発的隷従に甘んじなければ、海外難民の子供ですら攻撃対象になるというのが、日本社会の現実なのです。福島原発事故による放射能汚染を心配する人たち、ブラック企業を批判する人たち、神風特攻隊員を英霊として崇めない人たちは、権力者やその取り巻きから叩かれます。声を上げないでおとなしく従う人が多数派なのです。

 立派な憲法を持ちながら、人権の何たるかを理解しようとしない社会。難民の少女を侮蔑する醜悪な漫画は、決して偶然から生まれたのではありません。日本社会の病巣から発生してきた無数の現象の一つに過ぎないのです。

以上

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