【世論調査で8割以上の支持率!】死刑制度は本当に必要なのか?仇討にしか興味がないあなたへ。

出典:情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

 ジャパンタイムズが2016年4月6日付で、日本の死刑制度に関する記事を出しました。リンクを以下に貼ります。( )内は私の邦訳です。

「Amnesty slams Japan over death penalty as global executions soar」(世界中の死刑執行数が激増:アムネスティが日本を断罪)

 要旨を以下に記します。

・世界中の死刑執行数は、この25年間で最高を記録した。合計1634人だが、この中に中国での実績は含まれていない。情報が開示されていないからだ。
・日本では、2015年に3人が死刑にされた。
・死刑制度が社会を安全にするというのは幻想だ。
・日本では、死刑囚が精神異常を起こすような状態で長期間(何十年も)拘束されている。
・自白の強要による冤罪だとして再審を求めているのに、死刑にされた者もいる。
・袴田巌氏は45年もの長期間、死刑囚として拘禁され、精神に異常を起こした状態で釈放された。

写真(冤罪で45年以上拘束された袴田巌さん) 出典:ANN

写真(冤罪で45年以上拘束された袴田巌さん) 出典:ANN

・冤罪を大量に生み出す日本の司法制度自体が犯罪である。
・現在の安倍政権の下で、すでに16人が処刑されている。死刑囚の数も増え続けている。
・日本には現在、124人の死刑囚がいるが、そのうち89人が再審請求している。
・日本政府も死刑を廃止する議論を始めるべきだ。

 私もこのブログで過去に、死刑制度に関する記事を書きました。以下にリンクを貼ります。

【冷静に考えてみよう】死刑賛成派が日本で多数を占めるのはなぜか?死刑制度を廃止すべき根本的な理由は何か?

 私は上記リンク先の記事で、たとえ冤罪が無くても死刑制度に反対である理由を述べています。簡単に言うと、
「厄介払いという安易な姿勢で死刑を行っても社会は進歩しないし、犯罪者を通して犯罪が起きた本当の原因と向き合わない限り、同種の事件が繰り返されますよ」
、ということです。

 国の調査によると、2015年1月の時点で日本国民の8割以上が死刑制度に賛成しています。従って、私の意見に賛同する人はほとんどいません。実際、同記事のコメント欄は、次のような反論ばかりです。

・被害者とその遺族の感情を考えたら、加害者を許すことはできない。
・おまえは、自分の大切な人が殺されても同じことが言えるのか?
・加害者は更生不可能だし、刑務所で生かしておいても金の無駄だ。
・絞首刑ではなく、もっと残虐な刑にするべき。
・外国と日本は違う。日本には仇討の文化がある。

 被害者感情を第一に考えた「思いやりにあふれる」コメントと言うべきでしょうか?死刑賛成の人は、自分や自分の親族が加害者になる可能性はゼロであると考えているのでしょうか?加害者の処遇を被害者の感情にゆだねるという考えは、前近代的で野蛮な印象を受けます。加害者になるに至った経緯や社会的な要因、再発防止策などには興味が無いのでしょうか?

 視野狭窄で思考が硬直化していると安易な手段に流されてしまい、進歩することがありません。仇討をして気が晴れればそれでOK、ではいけないのです。

 死刑制度自体には犯罪抑止効果が無いことが、統計的に証明されています。また、日本国憲法第36条では、「公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。」と定められています。最高裁判所は、「絞首刑は人命を奪う刑罰だが残虐ではない。よって違憲ではない」と述べていますが、説得力が全くありません。死刑制度は残虐な刑罰なので明らかに違憲です。立憲主義に基づくならば、死刑制度は廃止すべきでしょう。
 
 社会システムの欠陥によるしわ寄せは社会的弱者へ行きやすく、特に未成年では本人の努力だけで困難を克服するのは無理でしょう。人格に異常が生じ、社会に害を与える存在になった者は、その社会の欠陥・本質を映す鏡であり、社会の他の構成員と無関係ではありません。確かに加害者という厄介者をこの世から抹殺してしまえば、社会制度や我々自身の欠陥と向き合う必要は無くなります。しかし、「臭い物に蓋」という態度にしがみついている限り人間社会が進歩することはありません。原因を究明せず議論もせず対策もせずに放置すると、同じような事件・悲劇が必ず繰り返されます。

 何か事件が起こった場合、本当の原因を直視した上で再発防止策を行う。この地道な繰り返しをせずに、暮らし易い社会を実現することはできません。死刑制度への賛成は、「臭い物に蓋」「厄介払い」という安易な姿勢の表れであり、人間社会の進歩にはつながりません。時間・お金・手間がかかる検証・改善作業を積み重ね、暮らし易い社会の実現のために努力することを避けてはいけません。

 この地道な作業を実行する為には、事件を起こした加害者が生きている必要があります。殺してしまったら話をすることすら出来ません。取り調べや裁判の記録などは情報のごく一部に過ぎないので全く不十分です。

 被害者感情を考えるのは大切ですが、加害者やその背景にある真の原因・社会の腐敗から目を背けてはならないと考えます。

以上

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