憲法違反の安保法制(=戦争法)がゴリ押しで成立され、日本の立憲主義は崩壊しました。政治家には憲法遵守義務があるにも関わらず、安倍政権は暴走し続け、独裁色を強めています。法治国家として最低限守るべき土台や枠組みが壊されたということは、実質、無法国家状態だということです。原発問題も含めて政策の良し悪しを論じる政治的環境が失われてしまいました。
老若男女関係なく危機感に目覚めた国民が、デモや集会などの抗議活動に駆け付けました。集団的自衛権とは?憲法とは?民主主義とは?政治に無関心だった人たちも問題意識を持ち始めたのではないでしょうか?
このまま自公政権が続いたら、憲法改悪などの反動的な動きがますます加速するのではないか、という危機感は本屋の店員さん達も持っておられるようです。
2015年10月、丸善ジュンク堂書店の渋谷店で実施されていた「自由と民主主義のための必読書50」と題するブックフェア(上写真)も、そのような気持ちの表れでしょう。
10月18日、「ジュンク堂渋谷非公式」というツイッターアカウントが、ブックフェアを応援するユーザーに対して、〈この先イベントやフェアを次々ぶちかまして行く予定なので。年明けからは、選挙キャンペーンをやります! 夏の参院選まではうちも闘うと決めましたので!〉〈はい!闘います。うちには闘うメンツが揃っています。書店としてできることをやります!一緒に闘ってください〉とツイートしました。
書店は不特定多数の客を相手にしているとはいえ、表現の自由は保障されていますし、時代の要請に応えた適切なブックフェアだと思います。相手は憲法無視の無法者ですから、闘争宣言も行き過ぎとは思えません。
しかし、反安倍政権を明確に宣言したツイートが、安倍サポーターたちの怒りに火を付けました。自分の頭で考えて行動する自立した市民の存在を許さない日本会議系の人間はこの国に多いのですが、彼らからすれば安倍政権礼賛記事や日本万歳特集が隅に追いやられているようで納得できなない、という背景もあったと思います。
前記のツイートはネット上での反響が大きく、丸善ジュンク堂へ抗議電話が殺到したため、非公式アカウントは削除されました。
その後もネトウヨの抗議が収まらない為、丸善ジュンク堂書店は、「自由と民主主義のための必読書50」と題するブックフェアを中止するという判断をしました。ネトウヨは反知性主義の象徴ですが、権力を笠に着ると強いですね。
丸善ジュンク堂書店は、2015年10月22日に公式見解をホームページに掲載しましたが、その一部を以下に引用します。
引用初め
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この度、弊社従業員による私的なツイッターアカウントより、特定の意見を支持するツイートがありました。これは弊社の公式な意思・見解とは異なる内容です。
どのような経緯でこのようなツイートが発信されるに至ったかを調査し、その結果、コンプライアンス違反が認められた場合は社内の規定に則り適切に対処致します。
また当該フェアにおいて、弊社方針のもとフェア自体は継続してまいりますが、本来のフェアタイトルの趣旨にそぐわない選書内容であったため、現在その内容について精査し選書を見直して再開する予定です。
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引用終り
「反政府的な発言は一部の悪徳従業員のものであり、うちの会社自体の考えとは関係ありません」、と言いたいようです。ブックフェアの選書内容を見直して権力者のご機嫌取りをしたいのでしょうか?仮に、書店従業員が、安倍政権礼賛ブックフェアを行い、安倍政権礼賛ツイートをしても、このようなお咎めは無かったでしょう。
丸善ジュンク堂の経営陣は、これで一件落着、┐(´д`)┌ヤレヤレと持っているかもしれませんが、その後予想される悪影響を想像できていたのでしょうか?底辺で頑張っている者を犠牲にしてでも保身に走ろうとする器の小さい経営者であることが露呈して、第一線の店員のモチベーションは大幅にダウンするでしょう。店員のやる気が下がれば、顧客不満足に直接つながります。最終的に売り上げにどう影響するでしょうか?
丸善ジュンク堂は品ぞろえが豊富で広々としたスペースが特徴です。椅子が所々に配置されており、喫茶も併設した図書館のような素晴らしい店舗であり、私自身も昔はよく通っていました。しかし、経営者にほんの少しの勇気もないことが分かって、幻滅しました。
この一連の騒動は、安倍政権側からはどう見えたでしょうか?直接圧力をかけなくても、軽薄なネトウヨが騒いだくらいで勝手に自主規制してくれるのですから、とても有り難いと思ったでしょう。独裁者にとって日本人は本当に扱いやすいのです。目には見えないですが、自発的隷従という情けない風土が至る所に根付いている国なのです。
安倍政権は、東京オリンピックをダシに使い、共謀罪を推進しています。
この法律は、政府批判をする者を徹底的に取り締まることが目的です。安倍さんにとって気に入らない「一般人」が対象なのです。実際に共謀罪の適用が始まったら、日本中の書店は、あっという間に安倍礼賛本で埋め尽くされることになるでしょう。日本会議が渇望する戦前風景の再現です。
今回取り上げた「丸善ジュンク堂ブックフェア中止」的な行動は、別に驚くような特殊事例ではなく、報道されなくても、日本のあちこちで現在も起こっていることではないでしょうか?日本の民主主義が機能不全であることを象徴していると思います。
自分の頭で考え、自分で判断し、自分の責任で行動するという「個の確立」が求められています。私たちはもっともっと、権力者からうるさがられる有権者にならなければなりません。
以上