2017年4月10日、長島昭久衆議院議員は記者会見を開き、民進党からの離党を表明した。「独立宣言-真の保守をめざして」と題した声明文を読み上げたが、その全文は、安倍政権の広報誌である産経新聞に掲載されている。リンク先を以下に示す。
「『アベ政治を許さない!』と叫ぶことを求められた。熟議も提案もない」と痛烈批判
長島氏の声明を読むと、彼が離党を決断した理由は、民進党が安倍政権の政策すべてに反対する一方で、共産党の考えに近くなっているからだそうだ。長島氏の真意を以下に箇条書きする。
・安保法制・・・賛成したかったのに党議拘束で無理やり反対させられツラかった。
・消費税・・・共産党は減税すべきと主張するが、自分は増税すべきだと思う。
・TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)・・・共産党は反対しているが、私は安倍さんと同じく賛成だ。
・エネルギー政策・・・原発廃止なんてトンデモない。安倍政権同じく再稼働・新設・輸出大賛成だ。
・憲法改正・・・自民党の方針に従って戦前回帰憲法に変えるべき。平和憲法を守ろうとする共産党はけしからん。
・共謀罪・・・賛成!
これだけ安倍政権に惚れ込んでいる人が、共産党と選挙協力するような政党で活動できる訳がない。むしろ、これだけ長期間よく我慢してきたものだと思う。心からお疲れさまと言いたい。
長島議員は声明文で次のように述べている。
「誤解のないように申し上げておくが、個々の共産党議員は、みな優秀で正義感にあふれ、真剣に議会活動に取り組んでおられます。そのことは十分承知しています。政策の方向性は異なれど、その質疑内容には常々敬服してまいりました。」
見え透いた社交辞令である。しかし、社交辞令を言えるだけマシである。安倍政権の愚劣な閣僚たちは少しでも見習うべきだろう。
長島議員は、民進党と共産党との選挙協力なんか無理だ、仮に政権を一緒に担うことになったらすぐに破綻すると言っているが、本当にそうだろうか?真面目に共産党の言い分に耳を傾ければそんな結論が出てくる訳がない。立憲主義を回復し、安保法制を廃止するための連合政府に関しては、すでに障害が取り除かれている。日米安保条約に対しても共産党は柔軟な姿勢に転じている。詳しくは、下記リンク先の記事を参照して頂きたい。
【拡散希望!】「戦争法廃止の国民連合政府」の提案が世界中に発信されている
2015年9月8日に、弁護士の伊藤真氏が、参議院の平和安全法制特別委員会で参考人意見陳述を行った。冒頭部分だけを以下に引用する。
引用始め
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今回の安保法案が今の日本の安全保障にとって必要か適切か、そうした議論はとても重要だと思います。しかし、それ以上に、そもそも憲法上、許されているのか否かの議論が、未だ十分になされていると思いません。どのような安保政策であろうが、外交政策であろうが、憲法の枠の中で実行すること、これが立憲主義の本質的要請であります。憲法があってこその国家であり、権力の行使であります。
憲法を語る者に対して、往々に「軍事の現場を知らない」、「憲法論は観念的だ」とよく批判されます。しかし、不完全な人間が実行する現場、そして現実、これを人間の英知であり、観念の所産である憲法によってコントロールする。まさにそれが人類の英知であり、立憲主義であります。憲法論が観念的で抽象的であるのは当然のことであります。現場の感情や勢いに任せて人間が過ちを犯してしまう。それをいかに冷静に知性と理性で縛りをかけるか、事前にコントロールするか、それがまさに憲法論の本質と考えています。
憲法を無視して今回のような立法を進めることは立憲民主主義国家としては到底ありえないことです。国民の理解が得られないまま採決を強行して法律を成立させることはあってはならないと考えます。本法案は、国民主権、民主主義、そして憲法9条、憲法前文の平和主義、ひいては立憲主義に反するものでありますから、直ちに廃案にすべきであると考えます。
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引用終わり
長島昭久議員は国会でこの意見に耳を傾けた際、何も感じなかったようだ。それどころか、離党の声明文で次のように述べている。
「安保法制を採決する本会議場に一人茫然(ぼうぜん)と座っておりました。前日までの激しい党内論争に敗れ、失意のどん底で党議拘束に従い、安保法案に反対票を投じました。」
憲法の蹂躙に手を貸せなかったことがそんなに悔しいのか?日本会議に属し戦前回帰願望で頭が一杯だと、マトモな思考力が失われてしまうようだ。「真の保守をこの国に確立したい」と長島氏は述べているが、国の法的枠組みを壊す立場の人間が保守という言葉を使ってはいけない。
長島氏によると、真の保守とは、我が国の歴史と伝統を貫く寛容の精神だという。多様な意見を包摂することが大切なんだそうだ。自民党に行きたくて行きたくてしようがない長島議員は、安倍政権の政策にトコトン寛容だが、異なる意見にも真面目に耳を傾けるべきだろう。
長島昭久議員の声明文は、部分的には立派なことを言っているが、全体としては一貫性が無く支離滅裂だ。安倍総理のファンでありながらそれを隠し、左右どちらの意見にも耳を傾けるなどとウソを言っており悪質だ。彼は、「国際社会で通用するような歴史観も人権感覚」(長島氏声明文)も持っていない。彼のような政治家をのさばらせていたら、「秩序ある進歩」(長島氏声明文)など望めないだろう。
民進党は長島昭久議員を除籍処分にした。つまりクビである。党内で東京都連の幹事長という重責を担っていたのに、都議選前にそれを投げ出したのだから当然だろう。長島氏は比例代表で復活当選したため、次期衆院選まで既存政党に移籍できない。今後、どこかの新党に参加するのかもしれないが、体に気をつけて頑張って頂きたいと思う。
以上