実名報道のメリットとデメリットまとめ:得するのは誰なのか?

写真(再審開始の決定を知らせる報道) 出典:NNN

犯罪関連報道で実名を出すと、誰にとって、どのようなメリットがあるのでしょうか?

逆に、損するのは誰でしょうか?

この記事では、犯罪実名報道のメリットとデメリットを関係者別に述べていきます。

犯罪報道を考えるきっかけになれば幸いです。

被害者側の関係者

被害者側の人間が実名報道を見れば、加害者が特定されたように感じられます。

マスコミのバッシングで、とりあえずの応報感情が満たされます。

ただし、あくまで被疑者に過ぎない人を、本当の加害者であるかのように誤解する危険は残りますね。

被疑者側の関係者

勘違いで犯罪者扱いされたら悲劇です。

代用監獄制度により長期間不当な勾留され、拷問のような扱いを受けて、自白を強要されます。

弁護士の同伴すら許されないのは、先進国では日本だけです。

運よく本当の犯罪者が逮捕され釈放されても、実際問題、職場復帰は不可能。

知人友人は誰も近寄りません。

社会生活が営めなくなり、人生が滅茶苦茶になります。

自分の家族も同様に悲劇を味わいます。

子供なら学校でいじめに遭い、退学を余儀なくされるかもしれません。

就職も難しくなります。

婚約者がいても、破談になるかもしれません。

何の落ち度もないのに何という理不尽でしょうか。

現行犯逮捕のケースであっても、間違い・勘違いがないとは言い切れません。

被疑者が本当に犯人だとしても、裁判で公的に犯罪者と事実認定されるまで実名報道をすべきではありません。

取り返しのつかない冤罪を防ぐには、厳格なルールが必要なのです。

実名報道は、被疑者側にとってはデメリットしかありません。

マスコミ

実名報道をすれば、信憑性があるかのように視聴者に印象付けられるため、視聴率が上がったり新聞雑誌の販売部数が増えることでしょう。

その結果、広告収入が増加するなどのメリットを享受できます。

警察の発表やリークを元にしているので、冤罪だったとしても罪を問われることはありません。

「他の報道各社もやってるんだから構わないだろう」という言い訳も可能です。

冤罪の危険などお構いなしに、実名報道はやったもの勝ちなのです。

後先を考えない愚かな所業ですが、マスコミ関係者は集団になると罪悪感を感じずに済みます。

集団心理による無責任ほど恐ろしいことはありません。

マスコミは、実名報道はメリットばかりでデメリットは見当たらないと思っているのでしょうか?

視聴者

実名報道されれば、被疑者に過ぎない人が、あたかも本当の犯罪者であるかのように印象付けられます。

実名と顔出しにより、報道内容を信じ易くなり、また、知的好奇心をくすぐられるかもしれません。

テレビの前でエンターテインメントとして楽しむことも可能となります。

冤罪だったとしても、「あ、そう」で済みます。

所詮他人ですから。

罪悪感を感じることもありません。

誤った情報により、間違った判断をして損失を被るのは少数派でしょう。

警察・検察

実名報道をすれば、被疑者が逃走中であっても、情報提供などの国民の協力を得やすくなるので、捜査の助けになるかもしれません。

また、「こいつが犯人に違いない」という世論が形成されるので、保守的な裁判官へ圧力をかけることが可能です。

日本の刑事司法制度はヨーロッパの中世レベルなので、証拠のねつ造や隠蔽はお家芸です。

被疑者側は取り調べ時に弁護士との同席すら許されないので、圧倒的に不利な立場にあります。

検察側は、その圧倒的に有利な立場を活用して、起訴時の有罪率が100%近いというメリットを享受しています。

しかし被疑者が加害者でなかった場合、本当の加害者が野放しになるので、犯罪が繰り返される恐れがあります。

もしも、冤罪だった場合、取り返しが付きません。

元被疑者は、賠償金を払ってもらっても人生をやり直すことは出来ないのです。

人生をメチャメチにされた元被疑者に対して謝罪だけでは済まされません。

肩書の立派な人でもきちんと責任を取ることは難しいので、姑息な言い訳や事実の隠ぺいに走ることが多いのが現実。

特に、上司の意向を忖度する「優秀な」部下が事件を担当した場合、泥沼にはまる可能性が高くなります。

被疑者段階での実名報道などに頼らず、公正な捜査と確実な司法手続きを踏んだ方が、長い目で見て警察・検察の利益になると思います。

「たとえ10人の真犯人を逃したとしても、1人の無実の人を処罰しては絶対にならない」という刑事事件の大原則を肝に銘じるべきです。

権力者側

実名を使ったセンセーショナルな報道は、大衆の関心をそらす効果があります。

時の権力者への批判を他に向けることができるのです。

スキャンダルによる低支持率に悩む権力者の意向を忖度するマスコミは、被疑者の実名報道を派手に演出します。

冤罪の危険も顧みずに・・・

冤罪が発覚しても、関係者の誰かを処分すれば済む話です。

権力者は安泰なのです。

まとめ

被疑者段階での実名報道により得をするのは、主に権力者側です。

マスコミは被疑者の実名報道で利益を得る一方、権力の批判という本来のな仕事を怠っています。

リスクを伴う面倒な仕事から逃げ、保身に走っているのです。

これじゃマスコミではあっても、ジャーナリズムとは言えませんね。

被疑者に過ぎない人間の実名がさらされてしまう状況は、庶民にとって害悪でしかありません。

報道で実名を使っても、犯罪の原因特定や再発防止に役立ちません。

裁判で刑が確定するまでは、匿名報道でも問題ないはずですし、そうあるべきです。

噂が立った程度で公開処刑をするのは、精神的に後進国である証拠。

人権意識の低い日本の現状に背筋が凍るのは私だけでしょうか?

皆さんも一緒に考えていただけたら幸いです。

以上

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