2015年10月、東京電力福島第1原発が立地する福島県沿岸部の国道6号で、地元の中高生らが参加して一斉清掃活動が行われました。本来ならば放射線管理区域に指定しなければならない高汚染地域ですから、立ち入ってマスクもせずに清掃活動をするなど論外です。内部被ばくの危険を、本ブログの記事でも指摘しました。
記事リンク:
【内部被ばくの危険】福島原発周辺で道路清掃ボランティアをさせてはいけない
原発マフィアが裏で糸を引いているこの清掃キャンペーンは暴挙と呼ぶにふさわしく、当然のことながら多くの批判が寄せられました。原発マフィアの利益を代弁する大手メディアの一つである産経新聞は、寄せられた批判に対する反論記事を掲載しました。2015年11月24日付の記事リンクを以下に記します。
「狂気の沙汰」中高生らの清掃活動に誹謗中傷メール1千件…反原発派の“非常識”
上記の産経新聞記事を読んでみると、次の二つの特徴があることが判ります。
1)都合の悪い事柄を隠蔽している。
国道6号の清掃活動をした地域は、福島原発事故により放出された大量の放射性物質で汚染されており、特に内部被ばくの危険性に対して警鐘を鳴らさなければならないのに全く言及がありません。そればかりか、反原発派は必要以上に放射線被ばくを恐れている、と事実の歪曲をしています。
記事によると、情報弱者である中学生に対して「放射線量への不安はないか」と尋ねたところ、「自分の意思で来ました。気にはしません」と語ったそうです。危険性を隠蔽するために中学生を利用するとは、その悪質さに開いた口がふさがりません。
2)清掃活動に参加した子供たちの善意や希望を前面に押し出し、清掃活動を批判する者を非常識で道徳心に欠けると主張している。
・道路沿いに大量のゴミが捨てられていることに心を痛めた高校生が、自ら清掃活動開催を持ちかけた、そうです。
・参加した高校生のコメントを紹介しています。
「こうして、ここに立てるようになったということは復興が進んでいるということだと思う。参加できてうれしい」「思い出の詰まった故郷の力になりたいと思ったのでよかった。まちがきれいになり、やりがいを感じる」
・参加した会社員のコメントを紹介しています。
「地域のことを考えている若者がたくさんいることが分かった。被災地の希望だ」
・NPO法人「ハッピーロードネット」の西本由美子理事長(62)のコメントを紹介しています。
「賛否があるのは仕方ないと思うが、実際にこの地で生活している人がいる。故郷を思う子供たちの希望をなくすようなことは、してほしくない」
アドルフ・ヒトラーは、宣伝手法について感情に訴えることの重要性を強調しています。
「宣伝効果のほとんどは人々の感情に訴えかけるべきであり、いわゆる知性に対して訴えかける部分は最小にしなければならない」「宣伝を効果的にするには、要点を絞り、大衆の最後の一人がスローガンの意味するところを理解できるまで、そのスローガンを繰り返し続けることが必要である。」
今回、産経新聞が行ったブラックプロパガンダは、感情に訴えることで世論を動かそうとしています。残念ですが、この方法はかなり有効だと言わざるを得ません。内部被ばくの危険性を持ち出した私の記事よりも、はるかに多くの人の気持ちをつかんだでしょう。中高生の「善意」や「希望」に触れつつ、放射能汚染という現実から目を背けていた方が精神的に楽だからです。つまり、「放射能なんて難しいことは気にしないで、子供たちが将来への希望を持てるように前向きなことを考えよう」、ということです。この甘言に対抗するのは非常に労力を要します。問題意識が低ければ、間違いなく流されてしまうでしょう。
安倍政権に重宝されている広報誌・御用メディアだけあって、産経新聞はよく心得ていると思います。
以上