稲田朋美の過去発言を追っていくと、日本人の本当の姿が見えてくる。知って驚く悲しい現実とは?

写真(稲田朋美防衛大臣)

 弁護士であり、自民党所属の衆議院議員、かつ、第15代防衛大臣でもある稲田朋美さん(1959~)は、物議を醸す発言や行動で有名だ。しかし、安倍晋三氏からは気に入られ、政治家になって以降はトントン拍子の「出世」を遂げ、その「活躍」により数々の「実績」を残してきた。ある意味、「実力」がある人なのだ。日本社会自体が、このような人物を受け入れ、認めてきた証拠である。(「俺は違う!認めない!」という人は少数派に属する。もしも多数派ならば、とっくの昔に稲田さんは政界から追放されているはずだ。)

 実際、国政選挙では安定した強さを「誇って」いる。

2005年:第44回衆議院議員総選挙(福井1区・自民党公認)で初当選。51,242票。
2009年:第45回衆議院議員総選挙(福井1区・自民党公認)で再選。72,639票
2012年:第46回衆議院議員総選挙(福井1区・自民党公認)で3選。68,027票
2014年:第47回衆議院議員総選挙(福井1区・自民党公認)で4選。116,855票

 今回は、稲田朋美さんの過去の発言や行動を再確認する。そうすることで、彼女の本質を捉えることができるとともに、日本社会及び有権者の求めているもの、さらには価値観を理解できると思ったからだ。

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百人斬り競争について:
 稲田さんの歴史観は、「産経新聞」や「正論」などの反動メディアで培われてきた。侵略戦争などの過去の失敗から学ぶ、という健全な姿勢を身に付けられなかったのは、その他大勢の日本人と同じであり、珍しいことではない。

 戦後、BC級戦犯として処刑された者の遺族が、『毎日新聞』『朝日新聞』本多勝一氏らを相手取って起こした名誉毀損裁判に参加した。参加した動機は下記の通り。

「まったく嘘のことが、日本の名誉を傷つけるようなことが教科書でも教えられているし、本当のこととして流布されているという現状を私は日本人として放置できないと思ったんです」
「私は政治には全然興味がなかったんですけど、嘘のことで日本の名誉が毀損されているという状況を何とかしたいと思ったんですね」

 ちなみに、原告側の主張は最高裁で棄却されている。この件に関して、自民党本部で講演をしている姿が、当時の安倍晋三幹事長代理の目に留まり、政治家としてスカウトされた。

A級戦犯と戦争責任について:
「A級戦犯を規定する東京裁判(極東国際軍事裁判)は国際法違反であると述べ、東京裁判は占領政策・戦後体制の中心であり、東京裁判史観の克服なしに戦後体制の歪みを是正することはできない」と述べている。また、「A級戦犯がいたから日本が無謀な戦争に突入し、そして敗れたというような単純なものではなく、その責任をA級戦犯だけに帰すことはできない」とも述べている。

靖国神社について:
 「首相の靖国参拝を阻止しようとする忘恩の輩に、道徳・教育等を語る資格はない」「靖国神社というのは不戦の誓いをするところではなくて、『祖国に何かあれば後に続きます』と誓うところでないといけないんです」と述べている。

 靖国神社の教義を解り易く要約すると次のようになる。

「天皇の軍隊が行ったのは自衛のための戦争であり、侵略戦争では断じてない。日本軍の行動を邪魔する者は皆テロリストだ。我々は何も悪いことはしていないので謝罪する必要はない。」

 靖国神社に参拝するということは、上記の基本的考えに賛同することを意味する。最も強く賛同している人のうちの一人が、稲田さんなのだ。

選択的夫婦別氏制度の法制化問題:

「家族の崩壊につながりかねない制度は認められない」、「一夫一婦制の婚姻制度を破壊」、「別姓推進派の真の目的は『家族解体』にある」と主張している。また、「別姓推進派は男女平等や女性の社会進出を掲げることが多いため、夫婦別姓に反対すると、女性蔑視だとか女性を家庭に閉じ込めておこうとする古い考えの持ち主などとレッテルを貼られるため、反対が言いにくい空気があることが厄介だ」、と述べている。

 対案として通称使用の緩和を掲げており、「女性が社会進出するほど旧姓を使うべき場面は増えます。ただ、家の中で両親と子供は同じ名前が望ましい。子供は選べませんしね。私たちは女性が望めば通称を使える社会を目指しています」などと主張している。

LGBTについて:
 性的指向は不可逆的なものであるため、LGBT問題は人権問題として考えるべきであるとし、「彼らが誤解に苦しんでいるのなら、自分らしく生きられる社会をつくらねばなりません」「少子高齢化が進む中で、(自民党は)女性が輝く社会の実現を目指してきているが、LGBTと呼ばれる人々にも同じようにチャンスが与えられるべき」と述べている。

「同性婚。これは欧米各国で激しい議論が行われており、一部の国では同性婚が認められるようになっている。この問題について、日本で意見が収斂するのはまだ先であろう。私はこの問題で日本の社会が二分されるのは望んでいない。あくまでも原点は、生まれながらにおかれた境遇や身体的状況によって差別がなされてはいけないということ。当事者の意見を聞きながら議論が進んでいくことを期待する」

「渋谷区の(パートナシップ制度の)条例に関しては、憲法上の婚姻の条項や家族のあり方とか、少数者に対する差別をなくすということはその通りなのですけれども、それをどこまで法的に保護していくかということなどは、憲法に関るような非常に大きな問題なので条例という形ではなくて大きな議論をすべきと考えています」と述べている。

男女共同参画社会基本法への反対:

 「おいおい気は確かなの?と問いたくなる」「女性の割合を上げるために能力が劣っていても登用するなどというのはクレージー以外の何ものでもない」と述べている。稲田さんは、女性を2級市民扱いしている現在の日本社会を、そのまま温存しておきたいようだ。

核武装:
「日本独自の核保有を、単なる議論や精神論ではなく国家戦略として検討すべき」と述べている。安倍総理や小池百合子東京都知事も同じ考えである。

家庭内暴力(=DV)について:

 「いまやDVといえばすべてが正当化される。DV=被害者=救済とインプットされて、それに少しでも疑いを挟むようなものは、無慈悲で人権感覚に乏しい人非人といわんばかりである。まさに、そこのけそこのけDV様のお通りだ、お犬さまのごとしである」「DVという言葉が不当に独り歩きすれば、家族の崩壊を招きかねない」と述べている。
 つまり、家族という秩序維持を優先するためならば、被害者の人権保護は後回しでも構わない、と言いたいのだ。LGBTの人権は保護すべきだが、DV被害者には無関心のようだ。支離滅裂と言うか、一貫性というものが感じられない。信用できない人間の典型である。

ニート問題:
 ニート問題を解決するために徴農制度を実施すべきだと主張した。
「真のエリートの条件は、いざというときに祖国のために命をささげる覚悟があること。そういう真のエリートを育てる教育をしなければならない。若者に農業に就かせる『徴農』を実施すれば、ニート問題は解決する。」と述べている。

徴兵制について:
「教育体験のような形で、若者全員に一度は自衛隊に触れてもらう制度はどうか」「草食系といわれる今の男子たちも背筋がビシッとするかもしれない」と述べている。
 2016年10月11日の参議院予算委員会で上記発言を質されたとき、「学生に見て頂くのは教育的には非常に良いものだが、意に反して苦役で徴兵制をするといった類いは憲法に違反すると思って、そのようなことは考えていない」と答弁している。

首相を目指すか?:
 2015年6月17日、ロイター通信の主催する講演会後の質疑で「女性初の首相を目指すのか」と問わ、「政治家であるなら、誰でも首相を目指している」と答えた。首相の安倍晋三は2016年2月に企業の女性幹部らが集まるシンポジウムの歓迎会で、稲田を森雅子とともにきわめて有力な総理候補者であると発言した。

自衛隊の政治利用発言について:
 2017年6月27日に、都議選の自民党候補者応援演説の際、「防衛省、自衛隊、防衛大臣、自民党としてお願いしたい」と発言した。明らかに自衛隊の政治利用であり、法律違反である。前代未聞で、誤解の余地がない。覆水盆に返らずだ。猛烈な批判を浴びても稲田さんは大臣の地位に「恋々と」しがみついており、辞任する意向はないという。稲田さんを重用してきた安倍さんも庇うばかりだ。彼も同罪である。
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 以上が、稲田朋美さんの主要な発言内容だ。どのような感想を持たれただろうか?

・反動的(=進歩の逆)で軽薄
・人権の軽視
・支離滅裂で一貫性に欠ける
・権威主義的

 こんなところだろうか?

 「こんな人物を政治家にしてはいけない!」、という声が聞こえてきそうだ。しかし実際、彼女は政治家として大成功している。彼女を支持している安倍さんも大成功している。なぜか?幅広い有権者の支持・共感を得ているからだ。有権者が積極的・消極的に支持してきた結果なのだ。残酷な現実である。

結論:
「一国の政治というものは、国民を映し出す鏡にすぎません。政治が国民のレベルより進みすぎている場合には、必ずや国民のレベルまでひきずり下ろされます。反対に、政治のほうが国民より遅れているなら、政治のレベルは徐々に上がっていくでしょう。国がどんな法律や政治をもっているか、そこに国民の質が如実に反映されているさまは、見ていて面白いほどです。これは水が低きにつくような、ごく自然のなりゆきなのです。りっぱな国民にはりっぱな政治、無知で腐敗した国民には腐りはてた政治しかありえないのです。」
(出典:「スマイルズの『自助論』エッセンス版」P17)

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以上

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