2016年夏の参院選に向けて、野党共闘の動きをけん制する広報ビラを自民党が作成しました。
野党統一候補を「打算と思惑の産物で、民共合作候補」と批判する内容になっています。「野党は共闘しろ!」という国民の要請に応えた動きが現実化しつつあるので、自民党がかなり困っている様子が伝わってきます。
近年、国政選挙での投票率は50%程度であり、自民・公明による選挙協力により組織票の力がいかんなく発揮されていました。しかし、安保法制推進など憲法・人権蹂躙の動きが政治的無関心層・無党派層を刺激してしまった上に、野党統一候補が現実化すれば、自民党はかなり不利になります。安倍総理が焦るのは当然です。自公政権が一番嫌がることを野党側が行っていると証明されました。
しかし、自民党側も座して死を待つ訳にはいかないので、作戦を考えました。会議での思考プロセスは下記の通りでしょう。
共産党が本気になって選挙協力を進めているので、野党統一候補が実現してしまいそうだ。
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野党票がまとまったら、自民党は勝てない。
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自公政権の実績をアピールして有権者の支持を得たいが、アピールできる実績が無い。
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それなら、野党側の批判をして足を引っ張ろう。
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有権者の間でいまだに根強い共産党アレルギーを利用しよう。
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特に根拠はないが、とにかく共産党という名前に対して感覚的な拒否感が強いのは事実だ。
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「あの悪名高き「共産党」と協力を進めている民主党に一票を投じたら、国が不安定化しますよ」、と叫ぶことにしよう。
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共産党支持者に効果は無いだろうが、昔からの民主党支持者のうち少なくない人数が離れていくだろう。また、無党派層が民主党に投票するのを防ぐ効果も期待できるだろう。
繰り返しになりますが、上記のような討議を経て出てきたのが次の批判ビラです。
日本共産党の志位委員長は、ツイッター上で次のように反論しました。
自民の野党共闘攻撃のビラを見た。政策が違う政党の共闘は「野合」だと。野党5党は「安保法制廃止、立憲主義回復」の大義のもと結束している。これは、あれこれの政策とは次元の異なる、国の土台を再建する仕事だ。まともな政策論争を行う土台を回復しようということだ。これ以上の国民的大義はない。
— 志位和夫 (@shiikazuo) 2016年3月12日
私は、志位委員長の考えに賛同します。しかし残念ですが、「有権者が持つ共産党への拒否感を利用する」という安倍自民党の戦術は、かなり効果を発揮すると思います。様々な歴史的経緯や反共産党のブラックプロパガンダにより、「共産党」という名前への拒否感が一般市民の中でかなり根強いことは事実です。政治の話をする時だけに登場する「共産党」という特殊な記号は、手垢にまみれ、悪いイメージとして定着しています。共産党支持者以外の一般市民の中で共産党を受け入れるのは、まだまだ少数派なのです。共産党についての知識が無くても、とにかく感情的に嫌悪感を持っているのです。
共産党という政党名を変えてしまうのが一番いいのですが、志位さんに変える気はないようです。
下記のYouTubeビデオでは、日本共産党の志位委員長が「共産党」という名前にこだわる理由を述べています。(22分50秒以降)
要旨↓
「資本主義経済は矛盾に満ちた不完全なものであり、貧富の格差などを引き起こし、社会を不安定化させています。人類の幸福に必ずしも結びつくものではない。利潤第一主義が根底にある制度は、人類が目標とすべき理想ではない。遅かれ早かれ、社会主義・共産主義と呼ばれるものに発展していくだろうという展望を持っています。だから、共産党という名前は変えないのです。まずは、極端な大企業中心やアメリカ依存を正し、その後に、共産主義社会を目指すのです。」
「資本主義よりも共産主義の方が素晴らしいんだよ」という理屈は、共産党関係者に対しては通用すると思います。赤旗の熱心な読者も理解してくれるでしょう。しかし、それ以外の人に対しては通用しません。一般の人は、「共産」という名前を聞いてもピンときませんし、むしろ、警戒します。
参考リンク:
【政党の名前】有権者に振り向いてもらえなければ存在していないのと同じである。
共産党が名前を変えることは、今のところ、なさそうです。自民党にとっては、有権者が持つ共産党への拒否感のみが頼みの綱となっていますから、御用メディアを総動員して攻撃してくるでしょう。選挙で負けたらおしまいですから、彼らは必死になります。野党統一候補に支持が集まらないように、あらゆる手段を尽くしてくるはずです。憲法を蹂躙しても平気な人たちですから、何をしてくるか予想できない部分があります。
上記ビデオの中で民主党の岡田代表も言っていますが、今度の国政選挙は、国民の良識が試されることになると思います。
以上